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河川津波とは?津波で危ないのは海岸だけではない

  • 2025.11.5

「津波」と聞くと、海岸の被害をイメージする方は多いのではないでしょうか。津波は海岸だけでなく、河川を通じて内陸にまで押し寄せる「河川津波」も発生します。

場合によっては河口から何十キロも遡上し、川沿いの住宅地や田畑、施設などが被害を受けるケースもあります。そのため、身近な河川が津波の通り道となる危険性を正しく理解し、適切な避難行動や防災行動につなげることが大切です。

この記事では、河川津波のリスクや事例、備えるポイントを解説します。

河川津波とは

河川津波とは、海岸で発生した津波が河川を遡上して内陸部へと押し寄せる現象です。

一般に津波は海岸沿いの被害と考えられがちですが、河川を通じて河口から数キロ~数十キロの内陸にまで達することがあります。河川津波が発生すると、堤防の破壊や水門損傷、排水路封鎖を引き起こし、浸水被害を拡大させます。

なお、河川津波という言葉は国の正式な用語として一般的に使われているわけではありませんが、国土交通省ではこの用語を定義の中で使用しています。

河川津波に関する用語は、以下のものがあります。

大きな地震が発生した際には、海岸に押し寄せる津波だけでなく、河川津波に対しても警戒しなければなりません。

河川津波のリスク

河川津波は、河川を遡上し内陸部で被害をもたらします。河川周辺で考えられる被害のリスクについて解説します。

河川構造物への影響

河川津波は水門、堤防、橋梁などの河川構造物に大きな損傷を与えます。

たとえば、東日本大震災の際には堤防の越流や破壊、水門の損傷が多数発生して排水路が閉ざされ、河川管理の機能が喪失して浸水被害が拡大しました。

被害の拡大

河川津波は、被害拡大のリスクがあります。例えば、津波による流木やがれきが排水路や水門を封鎖すると水の流れが妨げられ、浸水範囲の拡大や浸水時間の長期化をもたらします。

河川の水があふれ出すと、道路や橋、下水道などの生活に不可欠なインフラが浸水・破損し、交通や排水機能に影響が生じます。

また、河川水位の上昇は地下水位の上昇も招き、地盤沈下や液状化を起こす要因となることも。その結果、建物や土木構造物の安定性の低下を引き起こす可能性があります。

浸水面積が想定より上回る可能性がある

河川津波による浸水面積は、予測モデルや設計基準に基づく想定を超えて拡大するリスクがあります。

その理由として、以下の4点が挙げられます。

■予測モデルの限界
津波浸水シミュレーションでは、地形や土地利用、建物配置など複雑な実環境を完全に反映できないために誤差が生じることも。

■地形変動
河川内の砂州や砂浜は常に変動しており、浸水域や浸水深が時とともに変化する。

■地震による地盤沈降
地盤沈下により浸水深や範囲が増加し、予測が過小評価されることがある。

■排水路の封鎖
流木やがれきの堆積で排水路が塞がれると浸水が長引き、範囲が拡大する。

浸水予測はあくまで目安であり、状況によっては想定外の浸水が発生するリスクも踏まえ、柔軟な避難計画や防災対策を検討することが大切です。

河川津波の事例

東日本大震災では津波が北上川を遡上し、河口から約49kmまで達して被害を引き起こしました。北上川河口部では、約1,100mに及ぶ堤防流失やそれに伴う家屋流出など、地盤沈下が発生しています。

また、河口から約4kmの川沿いに位置する宮城県大川小学校では、全校児童108人のうち約7割にあたる74人が死亡・行方不明となりました。

河口から17km地点においても高低差3mの堰を乗り越えたとみられた例もあり、海岸付近だけでなく河口からは離れた河川周辺でも警戒が必要です。

その他、1960年のチリ地震や1983 年の日本海中部地震津波でも、河川に津波が遡上し、内陸まで被害が及びました。

日本国内で発生した津波だけでなく、遠く離れた海外で発生した津波によって河川津波が発生する場合もあります。

河川津波は早期の避難が重要

河川津波は海岸から内陸の川沿いに津波が押し寄せるため、沿岸だけでなく内陸部に住む人々も早期の避難が不可欠です。

例えば、東日本大震災における河川津波は時速25~30kmにも達していたとされるなど、津波は人が走る速度よりも速く、一瞬の判断の遅れが命取りになりかねません。地震の揺れを感じたら、津波警報を待たずに速やかに高台や安全な場所へ避難することが重要です。

その他、河川津波による排水路の封鎖や、堤防破損により浸水被害が拡大するおそれもあります。

日頃から避難経路や避難場所を家族で共有し、地震発生時には早めの避難行動を心がけることが重要です。

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〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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