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「意図的だ」カメラ専門家が断言!“高市下げ”で物議のNHK「ダッチアングル」問題はなぜ起きた?世界標準の「リアリティ演出」と報道倫理の境界線

  • 2025.10.30

NHKダッチアングル問題は本当に意図的か?

NHKダッチアングル問題は本当に意図的か?
NHKダッチアングル問題は本当に意図的か?

10月22日の『NHKニュース7』で放送された高市早苗内閣関連の特集映像に、意図的に画面を傾ける「ダッチアングル」が含まれていた問題が波紋を呼んでいます。単なるミスか、それとも政治的な意図か。カメラの専門家である筆者は、この構図は間違いなく「意図的」だったと断言します。その理由は、NHKスタッフの世界トップレベルの技術力にあります。

では、なぜ彼らはあえて画面を傾けたのか?それは、現在の世界の先端ドキュメンタリー映像の潮流、すなわち「リアリティ」と「現場の空気」を伝えるための洗練された映像表現を追求した結果ではないか。本記事では、この理由を、過去の「首斬り学派」構図問題と交えながら、映像表現としての「意図」と「報道倫理」の境界線を考察していきます。

断言!NHKカメラマンが「0.5度の傾き」を見逃すなんてあり得ない理由

水平がしっかりととれた状態。すっきりとしてみえます。
水平がしっかりととれた状態。すっきりとしてみえます。

フォトグラファーでもある筆者が、今回の映像のダッチアングルが「意図的」だと断言する理由は非常にシンプルです。それは、NHKのカメラマンはもちろん、現場担当者、編集担当者のすべてが画面の傾きに気付かないなどということはまずないからです。

筆者のようなカメラマンでも、画面が1度、いや0.5度傾けば修正します。「0.5度なんて誤差では?」と思う方も多いでしょうが、実は水平が0.5度でも傾いていたら、画像や映像を扱うプロなら「気持ち悪い」レベルです。

画面が約1度傾いた状態。背景に注目すると安定感が落ちたのがわかるでしょう。
画面が約1度傾いた状態。背景に注目すると安定感が落ちたのがわかるでしょう。

そして、NHKのカメラマンは世界的にみても、教育レベルが高く、意図せずに画面を傾けるというミスはまず起きません。そして、その傾いた映像を、その後のチェックの工程でも誰も気が付かずに放送したという可能性はほとんどあり得ない。

したがって筆者は、この傾きは構図上の判断として「意図的」だったと結論づけます。

なぜ「ダッチアングル」を選んだ?BBCやNetflixに見る世界の「リアリティ演出」

NHKのカメラマンやスタッフの技術レベルは世界的にみても高く、その専門教育の内容も高度だといわれています。筆者は、この高度な教育と感性が、構図上の判断としてあえて画面を傾ける選択につながったのだと考えています。

現在、世界の先端ドキュメンタリー映像の世界、BBCやNetflixなどでは、映像のリアリティを持たせるため、意図的にカメラを手持ちで揺らしたり、わずかに傾けたりする手法が一般的になっています。

画面を傾けるダッチアングルは、確かに不安定さや緊張感を与える構図として知られますが、近年ではむしろリアリティや現場の空気を感じさせる技法として定着しつつあります。また、映像に変化や呼吸をもたらす効果をねらうこともできます。

NHKのスタッフも当然、世界の作品を日常的に研究しています。いまやドキュメンタリー映像の世界では「わずかに傾いた構図」がリアルでかっこいい演出と共通認識されているといってよいでしょう。その潮流を取り入れようとした結果、今回のような構図を選んだ可能性は十分にあります。

過去の「NHK首斬り学派」構図問題はなぜ起きた?海外メディアとの共通点

実はNHKの構図問題は過去にも議論があり「NHK首斬り学派」を思い出す方も多いのではないでしょうか。この「NHK首斬り学派」は、NHKの報道やドキュメンタリー映像で、文字どおり人物の頭や顎がフレームで切られている極端な近接構図を批判的に呼んだネット上での通称です。

ただし、この極端な近接構図もBBCやCNNなどの海外メディアでは、被写体との距離を近づけ、感情を直接的に伝える手法として非常に一般的です。特にスマートフォン視聴が主流のいま、顔を大きく見せる構図はむしろ自然でリアリティを感じやすい。いまや見慣れた構図になっています。

このように、世界的な報道やドキュメンタリー映像の潮流を積極的に導入するNHKの構図が否定的に捉えられた問題は、今回の件だけでなく、長年繰り返されてきたといっても差し支えありません。

「政治的意図」ではない。表現の自由と報道倫理の境界線

ここでもう一度、純粋に構図の話に立ち返るなら、画面に傾きを持たせた構図=ダッチアングルは、不安定さや緊張感を与える構図でありながら、動感を与え、スピード感を強調する構図でもあることに注目すべきでしょう。

おそらく今回の問題は、筆者のような未熟なカメラマンが行うと単なる水平・垂直のズレというミスにみえる一方、BBCやNHKのような熟練の現場がやると意図的で洗練された映像表現になる。このギャップが視聴者に政治的な意図を感じさせる結果になったのだと思います。

傾いた構図から何を感じるかは、見る側の自由です。とはいえ、筆者は今回の問題について、既成の常識を意図的に破る映像表現とそれに対する社会の摩擦という観点に注目すべきだと考えています。筆者の考えとなりますが、傾けたのは意図的だとしても、それは映像をより豊かに見せようとする試みであり、政治的な意図があったとは思えません。

今回の問題は、発信する側はもちろん、それを受ける側も、表現の自由と報道倫理の境界線について、改めて考えるべき事象といえるでしょう。

(齋藤千歳)

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