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ネトフリ配信で“再注目”の『古畑任三郎』 “名脚本家”の有名な仕掛けも映る【今観るべき名作回】

  • 2026.6.28
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田村正和 (C)SANKEI

6月1日にNetflixで配信がスタートしたことで『古畑任三郎』に再び、注目が集まっている。※以下本文には放送内容が含まれます。 

『古畑任三郎』は1994年に放送された一話完結のミステリードラマで、後に続編となる連続ドラマやSPドラマが多数作られた人気シリーズだ。
物語は犯人が事件を起こす場面から始まり、その後、警部補の古畑任三郎(田村正和)が犯行現場を訪れ、犯人と対話することで、アリバイや事件のトリックを暴き、自白させようとする姿が描かれる。

多くのミステリードラマは、まず事件が起こり、犯行現場に残されたヒントを頼りに、容疑者候補となる複数の人物に聞き込みをおこなうことで真犯人を特定する物語となっている。
対して『古畑任三郎』のように、始めに犯人の正体とトリックを明らかにする作品は、倒叙型ミステリーと呼ばれており、海外ドラマでは『刑事コロンボ』シリーズが有名だ。

倒叙型ミステリーは、始めに犯人と事件のトリックを視聴者に見せるため、ミステリーの最大の武器である犯人捜しというゲーム的な面白さを放棄しているように見える。
それでも面白いのが『古畑任三郎』の凄さだが、本作は冒頭で犯人を提示することで、事件を起こした犯人の心理状態を見せようとしている。そして、そんな犯人を古畑がじわじわと追い詰めていく姿が対話劇として面白く、とにかく細部まで作り込まれた完成度の高い脚本だと言える。

この脚本を手掛けたのが、当時はまだ新進気鋭の若手だった三谷幸喜だ。

三谷幸喜の出世作

『真田丸』や『鎌倉殿の13人』といった大河ドラマが高く評価され、近年はドラマ界の巨匠となった三谷だが、当時はまだ駆け出しで、人気劇団・東京サンシャインボーイズの主宰として活躍する傍ら、テレビ番組の放送作家として活動していた。
『やっぱり猫が好き』や『子供、ほしいね』といった深夜に放送されていたシチュエーションコメディの脚本に参加したことで脚本家として注目されるようになった三谷は、1993年に放送された医療ドラマ『振り返れば奴がいる』で地上波のプライムタイムでの連続ドラマを全話初執筆となった。
本作は当時流行していたテレビドラマのスタイルに三谷が合わせて書いたという印象で、三谷の作家性やコメディセンスがすべて反映された作品とは言えなかった。
しかし、本作の成功で脚本家として認められた後、三谷が手掛けた『古畑任三郎』は、スタイリッシュな洗練されたドラマとなっており、細部まで三谷の作家性が反映されていた。

『古畑任三郎』は、当時のテレビドラマでは異色のスタイルだった。
いわゆる人気歌手の歌う主題歌は存在せず、毎話の中心人物は、犯人役の俳優と、古畑を演じる田村正和、そして部下の今泉慎太郎を演じる西村雅彦(現・西村まさ彦)の3人。
その後、第3シーズンで刑事の西園寺守(石井正則)がレギュラーとして加わるが、他のテレビドラマと比べると出演者が少数で、これが深夜ドラマではなく地上波のプライムタイムで放送されていたことが画期的だった。

今回、Netflixで配信されて大きな話題となっているのは、細部まで作り手の意図が反映されており、無駄な要素がないため、今観ても作品が古びていないからだろう。

その一方で、とても贅沢な作品だと感じるのは、犯人役で出演する俳優がとても豪華だったからだ。
犯人役は、第1話の中森明菜に始まり、堺正章、菅原文太、草刈正雄、山城新伍といったベテラン勢もいれば、唐沢寿明、鈴木保奈美、福山雅治、江口洋介といった当時の若手人気俳優が意外な役柄で出演していたりもして、バラエティ豊かで、普段はテレビドラマにあまり出演しない俳優も出演していた。
犯人役の俳優は出突っ張りとなるため、演じるのは大変だったと思うが、とてもやりがいが感じられる役だったのではないかと思う。
犯人と刑事の対決を描いた舞台劇のようなドラマだが、田村正和が司会を務め、毎回豪華なゲストを迎えるトーク番組を観ているような面白さもあった。 そのため、次は誰が犯人役で出演するのかと毎週ワクワクした。

あえてベストエピソードを選ぶとすれば?

一話完結で、どのエピソードも傑作なので、どこから観ても楽しめる『古畑任三郎』だが、あえてベストエピソードを一本だけ選ぶとしたら、筆者は第1シーズンの第11話「さよなら、DJ」を推薦したい。

本作の舞台はラジオ局で、ディスクジョッキーの中浦たか子(桃井かおり)が、番組内で曲をかけている間に、スタジオから出て駐車場にある車の中で待機していた付き人の沢村エリ子(八木小織)を殴打して命を奪う事件に古畑が挑む物語となっている。
中浦がスタジオから抜け出した短い時間の中で、ラジオ局の駐車場で犯行をおこない、ラジオブースに戻ってくることができるのかを、今泉を全力疾走させることで何度も検証する場面が面白い。
『古畑任三郎』は古畑が犯人と対話するシーンが中心となるため、画面の動きが少ないディスカッションドラマになることが多い。しかしこのエピソードは、ラジオ局の中を犯人の中浦や今泉が走るシーンが加わるため、動きのある映像となっている。

中浦が犯行に及んだのは、エリ子に恋人を略奪されたことが原因だが、桃井かおりの軽妙な口調のせいか、あまり重くならず、男女の愛憎劇が背景にあるのに、カラッとしたさわやかな印象が残るのが、『古畑任三郎』らしいと言える。

他にも「赤い洗面器の男」という三谷作品に頻繁に登場する有名な小噺も登場するため、どの話から観たらいいのかと迷っている方には、この「さよなら、DJ」をおすすめしたい。


出典:フジテレビ FOD『警部補・古畑任三郎(第1シリーズ)』公式よりライター:成馬零一
76 年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に 『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレ ビドラマを更新する 6 人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』 (PLANETS)がある。

 

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