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杉咲花×板垣李光人「生きづらさの中で出会う光」 映画『ミーツ・ザ・ワールド』で交わった、ふたりの本音

  • 2025.10.26

金原ひとみさんの人気小説を映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』が10月24日(金)に公開!

自己肯定感の低いOL・由嘉里(ゆかり)を杉咲花さん、ホストのアサヒを板垣李光人さんが演じ、歌舞伎町を舞台に“生きづらさ”を抱えた人々の出会いと再生を描きます。監督は『ちょっと思い出しただけ』『くれなずめ』などで支持を集める松居大悟さん。蒼井優さん、渋川清彦さんら豪華キャストも参加する注目作です。

今回sweet webには杉咲さん&板垣さんが登場♡金原作品への思い、役作りの裏側、松居監督との現場エピソード、お互いの俳優としての魅力まで……たっぷり語っていただきました!

金原ひとみの世界観に惹かれて 原作への思いと、現場に流れた穏やかな空気感

――金原ひとみさんの小説が映画化されるのは、『蛇にピアス』以来17年ぶりです。金原さんの作品にどんな印象をお持ちですか?

杉咲花(以下、杉咲) 『蛇にピアス』を読んだときに、描かれる人物一人一人の生々しさ、暮らしの手触りというか、解像度の高さがずっと印象に残っていました。まるで実録を読んでいるような気持ちになったのを覚えています。

板垣李光人(以下、板垣) 僕も『蛇にピアス』を読んだことがありますが、『ミーツ・ザ・ワールド』もしかり、金原さんの作品は「ハッピーエンドでおしまい!」というような結末ではなく、「否定も肯定もしないけど、ただ黙ってそばにいてくれるような強さ」を感じたり、勇気のようなものも感じたりすることができると思っています。

――そんな金原ひとみさん原作の作品に臨むにあたって、意気込みはありましたか?

杉咲 個人的に原作に強く惹かれた一人なのですが、あまり意気込んでしまうと自分にとってはプレッシャーになってしまうので、それよりも「いち読者として、この映画が出来上がったときにどんなものが観てみたいか」ということを、ずっと考えていたと思います。

板垣 僕は以前に金原さんとNHKの番組でご一緒したことがあったんです。当時の番組のテーマが「言葉にできないような感情やシチュエーションを、言葉にしてみよう」というものでした。実際にお会いすると、飾らずチャーミングで素敵な方でした。それが2年半ほど前だったのですが、今度は金原さんの作品の中に入れることになり、嬉しかったですね。

――本作の監督は、若い世代からの支持が高い作品を世に送り出し続けている松大悟さんですが、今回の作品でご一緒されて印象的なことはありましたか?

杉咲 松居さんと出会ってからは割と長いのですが、映画でご一緒するのは初めてでした。これまでは情熱的な印象があって、もちろんそういったマインドを感じつつも、現場ではとっても恥ずかしそうにしている姿がすごく印象的でした。そんな姿を見ていると、きっと自分が演じた由嘉里も持っていたであろう「他者と関わることのハードル」みたいなものに触れられたような気持ちになってきて。一番近くにいる監督がそのように佇んでいたことが、なんというか私にとっては“由嘉里へのエール”のように感じる瞬間があって、とても印象的でした。

板垣 僕も松居さんってシャイで恥ずかしがりやの方なんだろうなと思ったエピソードがあるんですが、撮影が終わった後に、ある方から「松居さんが『板垣さんがすごく良かった』って言っていたよ」と教えていただいたんです。でも、現場で一切そういう感じなかったんですよ(笑)!「現場で言ってほしかった~」と思って(笑)。

杉咲 そうだね(笑)。

板垣 でも、そんな松居さんだからこそ、現場で居心地の良さを感じながら演技に臨めたのだと思います。通常、撮影となるとどうしても時間などいろんなことに追われることが多いんです。実際、この現場でも日の出のシーンを撮らなくてはならなかったりして、物理的に追われることはあったんですが、それでも現場にはすごく穏やかな時間が流れていましたね。

自分を好きになれない腐女子の由嘉里、心の奥に寂しさのあるホストのアサヒ。誰もが抱える共通点とは?

――杉咲さんは腐女子OL、板垣さんは既婚ながらNO.1ホストであるアサヒを演じました。実際に腐女子やホストの方へ取材もされたそうですが、それらが演技に活きたことはありましたか?

杉咲 実際にお会いして印象的だったのが、「BL漫画を買うときは必ず、鑑賞用、ディスプレイ用、保管用に3冊買う」という方のお話でした。本に対してのリスペクトがすごくあるからこそ「絶対シワをつけたくない!」とおっしゃっていて。本の開き方一つにしても、「こうやってやるんです」と教えてもらって、参考にさせてもらいました。

板垣 僕も職業としての“ホスト”や業界そのものについては未知だったので、実際にお店に行って、営業の仕方や日々のルーティンについてなど、話を伺いました。「お客さんに返事をするために休みの日でも携帯はずっと手放せない」ということを聞いて、アサヒの起床シーンでは真っ先に携帯を手にするなど、具体的に活かせることがたくさんありました。

――2人が演じられた由嘉里やアサヒをはじめ、作品中には何かしらの生きづらさを抱える人々が登場します。そうした人物を演じた感想をお聞かせください。

杉咲 今は少しずつ客観視できてきたと感じるんですが、演じているときは、すごく苦しかったんです。由嘉里と私は、過ごしてきた人生は異なるものですが、コンプレックスや自分をあまり好きになれない気持ちについては理解ができるところがあって。一方で、そういう部分って「他者にあまり気づかれないように」とか「見せてはいけない」といった気持ちになる側面もあると思うんです。演じていたときの苦しさは、そうした気持ちから来ていた部分もあるのかな、と今は思ったりもしています。

板垣 アサヒはホストとしていろんな顔を持っているからこそ、“本当の自分”を覆う層が分厚くて硬いんだろうな、と思いながら演じていました。セリフでも「不特定多数に愛されたい」と言っていましたが、その一番真ん中にあるのは“寂しさ”だろう、と。でもそれは、ホストという職業だからとか、歌舞伎町という場所で働いているからというわけではなくて、みんなが持っているものだと思うんです。ただ、由嘉里に対してはその“本当の自分”を覆う層は薄いんですよね。杉咲さんがつくる由嘉里を見て、アサヒは由嘉里がまぶしくて、うらやましさもあるんだろう、と感じていました。

――No.1ホストのアサヒが腐女子の由嘉里にまぶしさを感じるのはどんな理由からだと感じましたか?

板垣 由嘉里は1つの好きなことに対して、時には危なっかしいくらいに突っ走ってしまう真っ直ぐさや、純粋なところがあるんです。死にたいという気持ちがあるライに生きていてほしいと願う由嘉里が「ライを死なせないプロジェクト」について力説している姿をはじめ、アサヒにとってはその真っ直ぐさや眼差しから、強さを感じたことが大きかったと思います。

――お互いについて感じる俳優としての魅力をお聞かせください。

杉咲 初めてお会いした本読みの日から、すごいボルテージで屈託なくアサヒを演じる姿に圧倒されていました。原作から「アサヒが飛び出してきた!」って。板垣くんご本人は飄々としていて、撮影の合間に静かにお菓子を食べているようなギャップも面白くて。多くの会話を交わせたわけではありませんでしたが、だけど隣にいて不思議な心地よさがある感覚があって、「由嘉里もこんなふうに感じているのかな」なんて思っていました。

――板垣さん自身とアサヒが通じて見える感覚があったんですね。

杉咲 セリフに対しても、ご自身の思考を通したアイデアを提案されている姿や、その視点の優しさに素敵だなぁと感じて。演じる役に対して、責任を持っていらっしゃることが伝わってきて、そんなところも尊敬しています。

板垣 こちらこそ、杉咲さんにはリスペクトしかないです。現場で監督とお話しされていたり、悩まれている姿だったりを見ていて、すごく愛情深い方なんだなと思いました。作品自体に対してもそうですし、由嘉里という役に対してもそうです。本当に愛であふれている方なんだなと感じました。

苦しい中で生き続ける先に待つ“出会い”

――歌舞伎町で酔いつぶれていた由嘉里を助け、そのままルームシェアすることになった鹿野ライは、消えたいという気持ち(希死念慮)を抱えています。そんなライに、由嘉里もアサヒも惹かれていくのはなぜなのでしょうか?

杉咲 由嘉里が初めてライと出会ったとき、「きれいな人」「あなたみたいな顔になりたかった」と言うんです。それはきっと、同じ人間だとは思えないほどまぶしく感じる何かがあったのではないかと思うし、ある種のバイアスをかけていた瞬間だとも思うんです。ですがその後、ライの家で彼女の生活に触れ、荒れ果てた部屋を目の当たりにしたときに、一気にライという人間に親近感が湧いて、精神的にも接近していったのではないかなって。そこでライの望む「死」に触れたときに、「この人を止めなければいけない」という使命のようなものにかられていく。なにか、由嘉里を突き動かすものがあったのだと思います。

板垣 アサヒから見たライってすごく身軽だと思うんです。既婚者でありながらNo,1ホストであるアサヒの視点は、奥さんだけでなく他のお客さんの相手もしなくてはならず、いろんなものを抱えていて荷物が多くなっていると感じている状況です。一方でライは、キャバ嬢という同じような業種でありながら執着がないように見える。そんなところに、ある種カッコよさも感じているのではないかと思います。

――さんはライを演じることになる南琴奈さんとオーディションで目が合ったとき、セリフが飛んでしまったそうですね。

杉咲 琴奈ちゃんの佇まいを見た瞬間から、なにかただものではない異質さを感じていました。お芝居していても、彼女の艶やかでありながら影を感じる表情や、所作が脚本に書いてあることから自然と逸脱していくさまに、気づいたら翻弄されている自分がいました。琴奈ちゃんが持つリズムに、心地よく巻き込まれていく感覚があったんです。

――板垣さんは南琴奈さんにどんな印象を持ちましたか?

板垣 「彼女しか、ライを演じることはできないな」と思いました。撮影以来お会いする機会がなく、「南さんって本当に存在したんだろうか……?」と思わされるくらい、ライの哲学とご自身とを共鳴させていると感じました。難しい役柄で、一歩間違えると“しっとり”としてしまうと思うんですが、本当にさらっとした質感でライを演じられていました。

――希死念慮を持つ人のそばにいる人の葛藤も描かれていると思いますが、ご自身の中で人への寄り添い方について答えはありますか?

杉咲 答えは出せないですよね。でもこの作品を通じて、「寄り添い方って、こんなにも多様なんだな」と思いました。3年前に脚本を初めて読んだときは、由嘉里の死生観に共振する部分があったのですが、そこから自分にとっても、さまざまな出会いや価値観の変化が訪れるなかで、実際に撮影が始まってみると、「自分だったら由嘉里のように行動できるのだろうか」と苦しくなる瞬間もあったんです。でも、この映画を観てくれた知人が「誰かが死に引き寄せられていく時に、そこにどんな事情があっても、この世界にいてほしいと願う人が、はなちゃんがこの映画で体現したすべて」という感想をくれたんです。それがすごく嬉しかったですね。

板垣 人の痛みへの処方箋は1人1人違うし、用法も違うと思うんです。相手が何を求めているかによっても違ってきます。「寄り添うこと」が正解の人もいれば、「1人で向き合い続けることが正解」という人もいますよね。そこは本当に一人一人違うんだ、と改めて思いました。

――劇場に足を運んでくださる方に、一言メッセージをお願いします。

杉咲 まさに本作のタイトルにあるように、由嘉里はライという人との新しい出会いから、アサヒをはじめさまざまな人や歌舞伎町という街、新しい世界に出会っていきます。苦しい日々のなかでも、生きるということを続けていると、こんなふうに想像もつかないような出会いが待っているんだと感じさせられる。そんなエールのようなものを受け取ってもらえる作品になっていたら嬉しいです。

板垣 いまはSNS全盛期で、実際の本名も顔も知らないような人と比べてしまう、不思議な時代だなと思っています。そこに翻弄されてしまうことは現代に生きている限り仕方ないことかもしれません。そういう苦しさや悩みに対して「どうしたらいいか」という答えはないけれども、物語の結末として強い否定も肯定もないかもしれませんが、この作品の中で描かれるということが、誰かにとっての寄り添うということになったらいいなと思います。

(了)

Profile/杉咲 花(すぎさき・はな)
1997年10月2日生まれ、東京都出身。2016年に出演した『湯を沸かすほどの熱い愛』での演技が高く評価され、第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・新人俳優賞、第41回報知映画賞助演女優賞、第59回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。その後、2023年公開の主演映画『市子』では第47回日本アカデミー賞優秀主演女優賞と第78回毎日映画コンクール〈俳優部門〉女優主演賞を受賞。主な出演作にNHK連続テレビ小説「おちょやん」(20-21)、テレビドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(24)、映画『52ヘルツのクジラたち』(24)、『朽ちないサクラ』(24)、『片思い世界』(25)など。

Profile/板垣李光人(いたがき・りひと)
2002年1月28日生まれ。2012年に俳優デビュー。2024年に公開の映画『八犬伝』、『はたらく細胞』、『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。今年は、ゴールデン帯連続ドラマで初主演を務めたカンテレ・フジテレビ系ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」、映画「ババンババンバンバンパイア」、ドラマ「しあわせな結婚」、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」など話題作への出演が続いている。さらに、映画「ペリリュー-楽園のゲルニカ-」が12月5日公開予定。俳優業の傍ら、アートの分野でも個展を開催したり、初めての絵本「ボクのいろ」を11月6日に発売予定など多方面で活躍。

●映画『ミーツ・ザ・ワールド』

公開日:2025年10月24日(金)
配給:クロックワークス
出演:杉咲花 南琴奈 板垣李光人
くるま(令和ロマン) 加藤千尋 和田光沙 安藤裕子 中山祐一朗 佐藤寛太
渋川清彦 筒井真理子 / 蒼井優
(劇中アニメ「ミート・イズ・マイン」) 村瀬歩 坂田将吾 阿座上洋平 田丸篤志
監督:松居大悟
原作:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』(集英社文庫 刊)
脚本:國吉咲貴 松居大悟 音楽:クリープハイプ
主題歌:クリープハイプ「だからなんだって話」(ユニバーサルシグマ)
公式HP:mtwmovie.com
公式X/Instagram/TikTok:@mtwmovie
2025年/日本/カラー/アカデミー(1.37:1)/5.1ch/126分/G
©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会

photo : Toshiyuki Tanaka
text : Shiho Ishino

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