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「石破さんカワイイー!」SNS時代に加速する 《政治の推し活化》、 その功罪… 感情的 “分断” あおる一因に?

  • 2025.10.20

象徴となったミャクミャクとの2ショット

「日本メガネベストドレッサー賞2025」の表彰式に出席した石破茂首相(2025年10月1日、時事通信フォト)。サングラス姿が生かしてる!
「日本メガネベストドレッサー賞2025」の表彰式に出席した石破茂首相(2025年10月1日、時事通信フォト)。サングラス姿が生かしてる!

2025年10月21日(火)に召集される臨時国会では冒頭に首相指名選挙が行われ、石破茂首相は380日余りの任期を終えて退任する見通しです。退任表明以降、X(旧ツイッター)では政策を超えた石破氏の人柄への評価が一部ユーザーの間で活発化しており、「かわいい」「優しい」「面白い」との声が相次いでいます。それは、さながら《政治の推し活化》の様相。アイドルや芸能人を“推す”ように政治家を応援する現象、その功罪についてあらためて考えます。

X上の石破氏に関する投稿は、かねて政治についてつぶやいていたアカウント以外からも発信されていることが特徴の一つ。その内容は政策ではなく人柄に関するものが特に顕著で、全体として肯定的なものが目立ちます。

「推し活化」加速の象徴的シーンを担ったのが、大阪・関西万博のマスコット「ミャクミャク」と石破氏の交流やツーショット画像です。同月13日の閉幕までたびたび報道された二人の様子は、たびたび「石破さんとミャクミャクの別れがかわいい」「子どものような笑顔が癒やされる」といった反応を獲得。ある女性ユーザーの「(石破)茂(首相)のこの写真、めっちゃ推せる!」という投稿は、その様子を端的に物語っています。

まるでアイドルのオフショットをめでるように、石破氏の無邪気な表情を“推す”ユーザーたち。それだけにとどまらず「石破さん&ミャクミャクのゆるキャラ風ファンアート」がアップされたり、「ミャクミャクとのツーショットをグッズ化してほしい」との声が上がったりと、まるでアイドルイベントに集うファンたちのような熱量が見られました。

人柄に関しては「優しい」との評価も氏を推す層の共通認識のようです。「いつも自戒の念を持ち、他者の立場を理解する人」など、決して声を荒らげることなく言葉を尽くす対応を魅力として称賛する投稿は、中道・リベラル層から多数。また同氏に「面白さ」を見いだす層からは、「(退任を決め)肩の荷が下りた顔が面白い」「引退後はバラエティー番組で推したい」「石破さんのユーモアは国民の癒やし」「芸能人より尊い」といった投稿までもが散見されるようになっています。

広がる関心、民主主義の裾野を広げる一方で

このように、政治家を推しと位置付けてウオッチしたり応援したりすることは、SNS社会において今後さらに加速することはあれ一切なくなることは考えにくいはず。ではあらためて「政治の推し活化」の“功罪”とは何なのかを考えておく必要があるかもしれません。

例えば若年層や女性など、相対的には政治に関心が薄いとされる層が自発的に情報をチェックするようになったことで、国民の政治関心が広がったとのメリットは一定認められるでしょう。政治家を身近に感じることはポジティブな応援文化を醸成し、民主主義の裾野を広げることにもつながります。

ただ一方で、人柄偏重の評価で政策に対する理解が後回しになれば、選挙惨敗や党内融和の失敗といった責任論、何より重要な“かじ取り”への評価までもを見誤る恐れがあります。加えて、SNS時代に最も看過できないのは、異なる意見の人々との感情的な分断の助長です。特定の政治家を全人的かつ盲目的に支持することは、氏への批判に耳を貸す度量を失うことにもなりかねず、結果として対立意見を持つ集団とのミゾを大きくする恐れがあります。

加えて、政治を過剰にエンターテインメント化することは、権力者の責任を矮小(わいしょう)化し権力監視の意識を弱めるリスクも内包しています。為政者は、どれだけ「面白」く「優し」く「かわい」く見えたとしても、われわれ国民の生活をいかようにも左右できる権力者に他ならないことを忘れずにいるべきでしょう。

ただ、今回のような“推し活ムーブメント”が生まれたのは実際、石破氏の人柄そのものを国民が評価したからゆえ。Xでは20日、「石破さん、お疲れさまでした」「一年間国を支えてくださり、感謝します」などの投稿が複数見られました。

(山嵐冬子)

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