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痛みを取り除くことは女性の権利、東京都が10月から無痛分娩への補助を開始|湯山玲子のジェンダーフリー放談

  • 2025.10.10

東京都が10月から始める無痛分娩への補助。「痛みに耐えてこそ母」——そんな呪いのような価値観から、やっと解き放たれるときがきたのかもしれない。
湯山玲子さんは言う。これは“甘え”ではなく、“選ぶ自由”の話だと。


無痛分娩が一般化してない現状

私が中学生の頃、遠藤周作など第三の新人といわれた小説家たちの面白エッセイが流行り、その中で女性の出産に関する非常に印象深いくだりがあった。してその文意は「あんなに痛い出産を経験して平気な女性には、ユーモアはわからない」というもので、要するに男は繊細で高等、女は鈍感で下等という、今ではハラスメントに当たるような男尊女卑に満ち満ちた物言いである。じゃあ、無痛分娩にすれば、女もユーモアがわかって男と対等じゃん! と言いたいところだが、日本においてはエッセイが書かれた70年代から今に至るまで無痛分娩は一般化していない

日本の無痛分娩率は7・3%

欧米は無痛分娩率が高く、50%を超える国が多くある一方で、日本のそれは7・3%だという。
その理由は、麻酔医などの不足や医療施設自体の減少などのハード面が指摘されるが、高度経済成長期やバブル期など景気のよかった時代にそういった環境が改善されなかったのは、当の女性たちがそれを望まなかったから。

「無痛分娩は甘えである」という言葉の暴力の呪い

なぜならば、皆さんご存じの「お腹を痛めて産むことで愛情が深くなる」という根拠のない言い伝えと、「無痛分娩は甘えである」というこれまた、母親の資格を勝手に決めつける言葉の暴力の呪いが、女性をして骨折よりも痛く、指の切断と同等といわれる出産の痛みにあえて耐える方を選ばせてきたからである。出産の痛みに耐えた女性は夫から畏敬の念を持たれる。特に出産に立ち会ったりしたら、想いはマックス。法外な痛み体験があるからこそ妻は家庭内でマウントが取れるという損得勘定も、そこには存在するのではないか。

これをきっかけに国も動いてほしい

ちなみに、日本でのタンポン利用率は欧米の8割に対し2割と少ない。私は完全にタンポン派だったし、その安全と快適さは自ら実証済みなのだが、女性が自然に逆らって快適さや自由さを求めることを良しとしない空気は、無痛分娩の拒否感と同様のものがある。
「あんな痛い目に遭うなら二人目は無理」という職員の言葉を小池知事が聞いたことがきっかけで始まった東京都の補助。至極まっとうでこれをきっかけに国も動いてほしい。

今回のトピックス

東京都が10月から無痛分娩への補助を始める。米国では20世紀初頭の女性運動がきっかけとなり、痛みを取り除くことは女性の権利だとして、無痛分娩を求める動きが広がった。欧米ではお産の半数以上が無痛分娩という国もある一方で、日本は1割ほどにとどまっている。今回の東京都の補助は「あんな痛い目に遭うなら二人目は無理」という職員の言葉を小池知事が聞いたことがきっかけとなった。

今月の「湯♨LIFE」|湯山さんの近況~!

短い夏休み。岡山県の宇野→小豆島→豊島ツアーの帰り、久しぶりに岡山市内で知人とコーヒー。場所はもちろん、私の岡山の実家と、ラヴィアン・カフェ。なんと大正12年建造。国の登録有形文化財の木造3階建て「禁酒会館」の中にある。永久に存在していてほしい。

PROFILE
ゆやまれいこ
著述家、プロデューサー、おしゃべりカルチャーモンスター。クラシック音楽の新しい聴き方を提案する(爆クラ)主宰。ショップチャンネルのファッションブランド<OJOU)のデザイナー・プロデューサーとしても活動中。

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