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「うつは心が弱いことじゃない」アイドル“はるっぴ”から俳優・兒玉遥へ――うつ病を経て気づいた家族の愛と、自分を守る方法

  • 2025.10.4

HKT48時代に「はるっぴ」の愛称でファンに親しまれ、卒業後は俳優として注目を集める兒玉遥。アイドル時代にうつ病を患い休業した経験を持つ彼女が、闘病生活から俳優として活躍する現在、そして思い描く未来を綴った著書『1割の不死蝶 うつ病を卒業した元アイドルの730日』(KADOKAWA)を刊行した。これまで語らなかった真実を綴った著書について、また、現在の心境を直撃した。

応援してくれていたみなさんに本当のことをお伝えしたい

15歳からHKT48の一期生として7年間所属し、20歳で双極性障害で休業。復帰後の2019年6月に卒業し、俳優としての活動を本格始動した兒玉遥さん。

――今回、自分の体験を本にまとめると決めた経緯は?

兒玉遥(以下、兒玉)「アイドル時代にうつ病で休業したときは、その理由を公表せず“体調不良”とお伝えしていたんです。療養期間を経て、女優に転身し軌道に乗り始めてからは、みんなに本当のことがお話しできていないことがずっと気にかかっていました。自分自身でもうつを克服できたという実感が湧いたことで、このタイミングならみなさんに公表してもいいかなという思いに至ったんです。もともとは、SNSのnoteで自分の病気のことを公表したのが始まりでした。それが出版社の方の目に留まって、お声がけをいただいたという感じです」

――noteに書き綴った時点でみなさんにお話ししたいという思いがあったということですね?

兒玉「実際に自分がうつ病になってみて、思っていた以上に治すのが難しいなと思ったし、ここまで回復するのにかなり苦労もありました。私自身、発症するまでは“自分のキャラクター的にうつ病になんてなるわけがない、私の人生とは無縁だ”と思っていたので、(私のように思っている)そういう人こそ、実はなりやすかったり、みんなが思っている以上に身近な病気なんだというメッセージを伝えたいと思っていました。自分自身としては、(今まで語ってこなかった)かっこ悪いところや弱いところをあえて出すことで、もっと生きやすくなるんじゃないかという思いもありました」

――noteで病気のことを公表したことで、闘病生活を送っていたことを知った方から何か反響はありましたか?

兒玉「“元気になってよかったね”という言葉をかけていただくことが多いですね。当時は握手会の券を買って会いにきてくださった方々に、当日になって、出れませんという発表をしたことなどもあったんですね。なので、“あの時の握手券、今も持っているんだけど、はるっぴが今こうして元気に活動していてくれてよかった”という言葉もあったりして。病気に対してではないですけど、ファンの方としては、あの当時のやるせない想いも残しつつ、それでも見守っていてくれる存在がいることが、今の自分の活動の励みになっています」

――著書には、アイドルデビューした15歳から現在までが描かれています。1冊の本にまとめていく作業では、辛かった当時のことを振り返る時間もあったと思います。ご自身がアイドル時代につけていた「反省ノート」を見返すこともあったと思いますが、どんな思いで制作をされていたのでしょうか?

兒玉「当時のことを振り返ることも多かったですが、やはり辛かった時期のことがフラッシュバックしてしまって、感情が溢れ出てしまう場面も度々ありましたね。それまでは、自分の防衛本能なのかわからないですが、辛かったことは思い出さないようにその感情に蓋をして見なかったようにしていた部分もあったので、過去を思い返す作業はかなりハードでした」

――途中でやめたいなんて気持ちにはなりませんでしたか?

兒玉「それはなかったです。やはり(書籍として)残すことに意味があるなと思いましたし、実際に現在、闘病中の方や、うつ病患者を支えている方々にも声が届けられればと思っていました。また、私が公表することで、誰にでも起こりうる病気だし、うつ病になるということは心が弱いということではないというのも、もっとたくさんの人に伝えたいという思いがありました」

うつ病になったことで家族の想いにも気づくことができた

――著書の中には、兒玉さんのお母様もメッセージを寄せていらっしゃったのが印象的でした。兒玉さんの闘病中から温かく見守っていた家族の存在は大きな支えになったと思いますが、今回本を出すことを伝えたときにお母様はどんな反応だったのでしょうか?

兒玉「お母さんからは、仕事に関して何かを言われたことは一度もありません。子供の頃から、やりたいことをやりなさいというスタンスの人なんです。でも、私の体験を出版できることになるなんて、私もお母さんも思っていなかったので、そのことに対しては“おめでとう”と言ってもらいました」

――今回、書籍という形で今までの体験をまとめたことで、家族の思いなど改めて気がついたことはありましたか?

兒玉「アイドルとして活動していた頃は、母がどのように感じているかというのは全く見えていなかったし、考えることもなかったと思います。お母さんにとって(私は)本当に大切な娘で、“元気にそこにいてくれたらいいんだよ”という思いって、日々生きている中ではなかなか気付けることではないので、そういうお母さんの思いに気付ける視点を心に置いておけるようになったことで、気持ちに余裕ができたかなと思います」

――著書の中では、闘病生活も描かれていますが、ご自身の中で回復に向かっている兆しや手応えを感じたのはいつぐらいの時期だったのでしょうか?

兒玉「特に何かきっかけがあったというわけではないのですが、祖父母のいる(宮崎県)都城に運転免許を取りに行ったことが“人間らしい生活が送れる”ことにつながっていったのかなと思います。祖父母と一緒に暮らしながら免許を取りに行っている間は、人間らしい生活ができているなと感じていて。その前までは自分が社会復帰できるのかということも不安だったんです。だから少しずつ自信を取り戻していく作業の中の第一歩につながったかなと。運転免許って実技以外に講習もあって、社会人になってから初めてくらいの勢いですごく勉強をしたんです。それができたことが自信につながっていったのかなと思いますね」

――アイドル時代は過食嘔吐になってしまった経験を持つ兒玉さんですが、闘病中は、お母様と料理を作るなど、“食べること”が日々の小さな喜びに変化していったように感じます。現在は“食”についてどんな思いがありますか?

兒玉「もともと、私はゼロか100かという極端な人間なんです。なので、ダイエット中は食べちゃダメだし、炭水化物は完全排除みたいな考え方をしていたんです。だからこそ自分を追い込んでしまったんだと思います。今は、食べたいものをしっかり食べても、体重の調整ができるようになりました。あの頃ももう少し柔軟に考えられればよかったなと今は思います。今も食べることは大好きですけど、なんで10代の頃ってあんなに食べたかったんですかね(笑)。時期的に食べ盛りっていうのもあったんだと思いますけどね」

自分に期待しすぎていたことが自分自身を追い詰めていく原因に

――現在は臨床心理カウンセラーなどの資格も持つ兒玉さん。病気を発症した頃は極端な考え方をしていたという言葉もありましたが、今、振り返ってみて自分がうつ病になった原因はなんだと思いますか?

兒玉「自分に期待しすぎていたことかなと思います。当時は理想も高かったですし、今思えば、そんなに期待値を最初から高く設定しないほうがよかったんだろうなと思います。求める理想像が高くて、今の自分とのギャップにすごい苦しんでいたなと思います。誰かと比べるのではなく、自分が昨日より成長できたかどうか、というところにフォーカスできたらよかったのかなと思います」

――当時は(プロデューサーである)秋元康さんの“そのままでいいんだよ”という言葉や、お母様の“よく眠れたね”という言葉の解釈を自分で変えてしまって、自分の心に刃を向けてしまったということがあったそうですが、今は周りの人やその人が発する言葉とどのように向き合っていますか?

兒玉「いいことだけ受け取ってそれ以外のことは気にしない。それができるようになりました。以前は素直に全部スポンジのように受け取っていたのだと思います。それがよさでもあったとは思うんですけど、マイナスな部分を跳ね除ける自己肯定感が全くないまま素直さとかピュアさだけで突き進んでいって勝手に傷ついていたんだと思います」

――アイドル時代からずっと続けているのが反省ノート。反省という言葉の元に、自分自身を傷つけてしまう言葉を綴ってしまっていた時期を経て、現在は日記として書くことを続けているそうですが、気持ちの整理をする上で“書くこと”というのは大切なことだと思いますか?

兒玉「今は、5年連用日記を使っています。書いて頭の中を整理する時間が好きだし、自分には必要だなと思っているので今も続けています」

――smart読者たちは、10代、20代の多感な時期を生きているメンズたちなのですが、スマホ世代の彼らにおすすめの日記の取り入れ方を伝授していただきたいです。

兒玉「ルーズリーフでもいいし、大学ノートでもいいんですけどね。毎日つけなくても自分の心がモヤモヤしているなっていう日だけでもいいから、ノートになんでモヤモヤしているのかとか、何が悩みなのかというのを書き出してみると、だいぶ心が楽になったりするんです。

書き出した上で、その解決策はあるのかとか、自分で変えられることなのか変えられないのかなど、悩みを一つずつ分別していくと自分の心の中を可視化できて、思っていたより大きな問題ではないと気付けたり、自分で変えられないのなら悩んでも仕方がないので考えるのをやめようとか、全部クリアになっていくんです。今って、若い世代の方が、自分の心の内側に目を向ける作業ができなくなっているんじゃないかなって思うんです。

ずっとスマホを見てAIに頼ったりしていることが多いですよね。私が大人になって思うのは、自己理解を深めること。情報が多い社会で自分をいかにバリアして生き抜いていくかということが重要なので、自分がどんな人間で何が好きかみたいなことを知っておくことってとても大切。目先の情報だけで闇雲(やみくも)に進むよりも自分を知っている人間のほうが、長い目で見て迷わず進んでいけると思うんです。スマホでメモも取れる時代だから、わざわざノートに書くのって面倒くさいって思うかもしれないですが、私はそういう時間を大切にしている人のほうが、毎日を健康的に生きれるのではないかと思います。なので、やったことがない方にはぜひ試してみてほしいです」

様々な人の人生を生きられる俳優という仕事を長く続けていきたい

――現在は俳優として様々な作品で注目を集める兒玉さん。今、俳優として芸能界に戻ってきてよかったなと思いますか?

兒玉「今でこそ良かったと思っていますが、走り出した当初は“うわぁ、まだやっぱりうまくできないかも”って落ち込んだりするときもありました。今も本番前は当たり前のように緊張します。でもそれでも続けてきたから、今は楽しいと思えている感じですかね。今度こそ続けたいと思いました」

――俳優として復帰なさった時期が、コロナ禍と重なったんですよね?

兒玉「コロナ禍になって、世の中がペースダウンしたことで、私もいきなり急発進ではなく緩やかなスピードで徐々に感覚を取り戻すことができたので、そこはポジティブに捉えています」

――今、演技をすることの魅力はどこに感じていますか?

兒玉「役を通じてそこで働いていたり生活しているような類似体験ができるじゃないですか。いろんな人の人生を役を通じて見たり感じたりすることができるのが役者冥利に尽きるなと思っています。私自身、興味があることだし、それが楽しいし、飽きないです」

――アイドルだった経験やうつ病という経験が今の自分の糧になっていると感じることはありますか?

兒玉「うつ病を経験したからこそ、あの頃よりも辛いことはもう起こらないと思えているので、ちょっとしたことにもありがたみを感じられるようになりました。今日も仕事に行けているというだけで、“あの頃よりも大進歩じゃん”と思えるので、そういう日々の小さな幸せに気がつけるようになったことは大きな出来事かなと思っています」

――smart読者に、この本からどんなことを感じてほしいですか?

兒玉「題材はちょっと重たいのですが、読むときは気楽に読んでいただけたら嬉しいです。裏テーマとしては、お母さんと娘の愛の物語だと思っているので、みなさんも自分を大切に思ってくれる人の想いみたいなものに気付くと視野が広がって心が軽くなるんじゃないかと思います。でも、自由にいろんな楽しみ方で読んでもらえたら嬉しいです」

――著書の中では、周りの人の強い勧めで病院に行ってうつ病と診断されるくだりがあったのですが、兒玉さん自身が感じていた症状って、多少なりとも誰にでも当てはまることはあると思うんです。なので、どういう症状が出たら病院に行ったほうがいいというタイミングがありましたら、アドバイスをいただきたいです。

兒玉「今の私は、ちょっとした変化でも心療内科に行ってください、って思っています。私自身も軽い症状の段階で気軽に心療内科に行けていたら、自分をここまで追い込むことはなかったんじゃないかと思います。こういう心の症状って、家族や友達に相談しづらいことだと思うので、なんか最近眠れないな、とか次の日のことを考えると不安すぎるとか、体が重いとかしんどいと思ったら、心療内科に足を運んでほしい。目に見える病気じゃないからこそ、専門家の意見がなければ自分だけでは対処できないことがあると思います。と言いつつ、都内では心療内科の予約を取るのがなかなか大変という話も聞いたことがあって、みんなそれぞれに生きづらさを感じているのかな、と思います」

――辛かった体験を一冊にまとめたという今回の体験はこれからの人生にどのような影響を及ぼすと思いますか?

兒玉「タイトルにも“蝶”という言葉を入れているんですけど、弱くて醜い自分から脱皮できたという思いがあったから。なので、ここからは自由に羽ばたきたいなと思っています」

――俳優としての目標は?

兒玉「長くこのお仕事を続けていきたいと思っています。もちろん、続けていく中で波はあるとは思いますけどね。今は映画やテレビドラマ、舞台など、様々な媒体でお仕事をさせていただく機会があって、それがとても楽しい。今後も媒体にこだわらず様々な作品に参加したいです。今時のショートドラマとか縦動画など、新しいことにもチャレンジしていきたいです」

――最後にsmart読者にメッセージをお願いします。

兒玉「自分の好きなことに向かって突き進みましょう! 失敗したらその時に考えればいいんです。とりあえずやってみましょう!」

Profile/兒玉 遥(こだま・はるか)
1996年9月19日生まれ、福岡県出身。2011年7月10日、HKT48の第1期生オーディションに合格。 同グループのメンバーとして活動を開始し、 センターポジションも務める。 2016年には第8回AKB48選抜総選挙で、 自身最高となる第9位に輝く。 2019年6月にHKT48を卒業しエイベックスに所属し 女優としての活動を本格化。 舞台やドラマ・映画に加え、バラエティやYouTubeなど ジャンルを問わず、様々な分野で活躍中!

『1割の不死蝶 うつを卒業した元アイドルの 730日』

兒玉遥(著)¥1,760/KADOKAWA

HKT48時代に「はるっぴ」の愛称でファンに親しまれた兒玉遥。うつ病を患い休業した経験を持つ。「元気な姿に戻れる確率は1割」。医者にそう言われた彼女は、いかにして乗り越えたのか? 2度の休業を経てたどり着いた境地とは?

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