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【60代エンタメ】ページをめくるたびに、心に響く言葉と出合える本 『つるとはな ミニ?』誕生秘話【好奇心の扉・前編】

  • 2025.10.3

人生の先輩の話を聞く雑誌、『つるとはな』をご存知ですか? 昨年、7年ぶりに第6号となる『ミニ?』が出版されて約1年が経ちました。現代短歌の第一人者である馬場あき子さんや、料理研究家のホルトハウス房子さんの暮らしぶりなど誌面には、素敵世代にとっても先輩となる方々の魅力的な記事が並んでいます。 編集長・岡戸絹枝さんは2014年の創刊時には59歳。それから10余年、岡戸さんが60代をかけて手がけた本作りの話をじっくりと伺います。今回は前編をお届けします。    

6 号目となる『つるとはな ミニ?』の装丁は、アートディレクターの有山達也さんによって、バッグの中にするっと入るA5判サイズに。がんにより5つの内臓を失ったが「むしろ体が軽い」と語る建築家・安藤忠雄さんへのインタビューや、北海道・六花亭の包装紙のイラストを描いた画家の話など、多彩な“人生の先輩” たちに出会える一冊。つるとはな ¥2,178

ありとあらゆる手立てから取材対象を探す

『つるとはな』の誌名の由来は、岡戸さんとライターさんの祖母の名前、「つる」さんと「はな」さんからだそうです。 「出版社の社員編集者として、いろいろな人に取材してきましたが、興味が湧いて『この人の話は本当によかった』と思える人は、年配の方が多かったんです。会社を辞めてからしばらくして、そういう人たちだけの話ありとあらゆる手立てから取材対象を探すを集めた媒体はどうかなと思い、一緒に会社を立ち上げた元新潮社の編集者、松家仁之さんに相談したら『面白い』と言ってくれて、創刊の企画が始まりました。 その当時、私は59歳で、『70歳以上の人でなければ会わない』そんな気持ちでしたね」誌面に登場するのは「人生の先輩」へのインタビュー、亡くなった作家とその友人の知られざる書簡や家族が語る思い出による人物ルポルタージュなど。「『人生の先輩に聞く』というフレーズは、誌名に添えたサブタイトル。だから、先輩の人選がすべてと言ってもいいような本なんです。 毎号、ありとあらゆる手立てを使って取材対象を探します。友達の友達の友達を紹介してもらったり、メディアからも日常生活からも、目に入ってくる耳に聞こえてくるあらゆる情報にアンテナを張ります。 取り上げたい、お話を伺いたいと思う方の共通点は、有名無名・女性男性・国内外を問わず、『自律と自立』。自分を律し立つ、そんな生き方をしている人ですね。そして、自分たちが記事にすることで、世の中に初めて知られるようなノンフィクションにできるかどうかが、大切なポイン
トでした」

取材対象は男女・有名無名を問いません。 まだ皆が知らないことを紹介したいんです

「私の教科書のようにさえ感じる」と岡戸さんが語るのは『開高健全ノンフィクション』全5巻(文藝春秋)。世界中の紛争地域で拾い集めた貴重なエピソードが語られた、「足で考え、耳で書く」など、開高健さんの徹底した現場主義は、岡戸さん自身が仕事をしていくうえでの道標であった、とも。


もし有名な人であれば、知られていないような面を引きだす、というのが岡戸さんの編集方針。新聞の小さな記事がきっかけとなり、『この人について実際に会ってもっと話を聞きたい」とアプローチしたこともあるそうです。 「創刊当初は、どの方にも『人生の終い方』について伺っていました。でも、自分の人生に満足して感謝して暮らしているような方は、皆さんほとんど「なるようにしかならない、その日が来たら受け入れるだけ」と言われるんです。取材を重ねるうちにそういう答えの方が多いことに気がつき、次第に『この質問、必要かな?』と思うようになりました」 創刊から5号目まで、1年にほぼ1冊のペースで刊行するうちに、岡戸さんの心を特に動かしたのは80代、90代の方たちとの出会いだったといいます。 「戦争、戦争時代の前後を知ってる人たちの話は価値がある、人間が違うと思いました。語ってくださる話から浮き彫りになる人生の説得力が違うんですよ。恵まれた家庭のお嬢さんで戦時中でもそんなに苦労したとは思えない方でも、その時代を生きてこられたことで、始末する、覚悟するという潔い生き方を、90代になったいまも保ち続けていらっしゃる。厳しい時代を体験した人間の重みを感じます」

打ち合わせ・取材に欠かせないノートには、罫線にそってびっしりと、その内容が書き込まれている。筆記具はステッドラーのシャープペン、芯は書き味が心地よい0.7mm のB を愛用。

お話を聞いた方

岡戸 絹枝(おかど きぬえ)さん

『つるとはな』編集長。1955 年埼玉県生まれ。立教大学文学部卒業。1981 年マガジンハウス入社。『週刊平凡』『Hanako』『 Olive 』などの編集に携わり、1998 年から『Olive』編集長。2002 年には『ku:nel』を創刊し、編集長。2010年マガジンハウス退社。2014年『つるとはな』を創刊。

撮影/久家靖秀 構成・文/杉村道子 ※素敵なあの人2025年11月号「『ページをめくるたびに、心に響く言葉と出合う つるとはな ミニ?』ができるまで」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売を終了している場合があります。
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この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

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