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朝ドラ女優、4年前の“初主演”「ギャップ凄すぎ」アクションで魅せた“衝撃の原点”唯一無二の超個性的な映画

  • 2025.11.27

今期のNHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』でヒロインの松野トキを演じている髙石あかり。近年、ドラマに映画、アニメ映画の吹替と引っ張りだこになっており、次代のホープと言える逸材だ。『ばけばけ』では、小泉八雲をモデルにしたレフダカ・ヘブンを演じる相手役のトミー・バストウと軽妙なやりとりを披露する快活なヒロインを演じている髙石だが、彼女の映画初主演作品では、全く異なる役柄を演じ、センセーションを巻き起こしていた。

その作品『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで彼女が演じたのは、なんと女子高生にして、手慣れた動作で淡々と暗殺を遂行していく“殺し屋”なのだ。

生活感がありすぎる女子高生の殺し屋

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髙石あかり (C)SANKEI

映画『ベイビーわるきゅーれ』は、阪元裕吾監督によるアクション映画だ。社会に上手く合わせられない女子高生の殺し屋コンビがうだつの上がらない生活をしつつ、任務として殺しを遂行していく。脱力感のあるセリフのやりとりと絶妙に生活感のある日常描写で、どこにでもいる女子高生に見えるが、その正体は凄腕の殺し屋という強烈なギャップが魅力の作品だ。2021年に第一作目が公開されるとカルト的な人気を博し、シリーズ3作目までが制作され、テレビドラマ化も果たした。

女子高生の深川まひろ(伊澤彩織)は、内向的な性格で社会に上手くなじめずにいる。アルバイトの面接にもなかなか受からないで落ち込んでいるが、実はとんでもない格闘センスを持った殺し屋としての顔を持つ。まひろとパートナーを組む杉本ちさと(髙石あかり)は、コミュニケーション能力はそれなりに高いが、絶望的に生活能力が低く、いい加減な性格をしており、社会に出てやっていけるのかと周囲に思われている。

2人とも、殺しの仕事はそつなくこなせるが、社会になじむことができてないので、組織は彼女たちに、卒業後はきちんと表の仕事もやってもらいながら殺し屋稼業を続けるように指示。ちさとの方はなんとかなっているものの、人とまともにしゃべれないまひろはアルバイトの面接に全く受からない。そんな2人の間には険悪なムードが漂い始めるが、バイト先のメイドカフェでヤクザを殺してしまったちさとは、因縁の相手と決着をつけるため、仲直りしたまひろと2人でヤクザの一派をつぶしに乗り込んでいく。

本作の魅力は、なんといっても主演2人の存在感だ。まるでその辺にいる女子高生のようなノリで会話していたかと思えば、鋭いめつきで男たちを手際よく始末していく。殺し終わったらまた普通の女の子のような他愛ない会話を始める。この強烈なギャップが本作最大の見どころだ。

壮絶なアクションシーンも見ごたえあるが、それ以上に2人のだらしない生活ぶりの描写が面白い。洗い物のポケットにものを入れて洗濯機を回してしまった経験は、だれにでもあるだろう。この2人もその例に漏れないのだが、ポケットの中に銃のマガジンが入っているのが、殺し屋ならでは。そんなものを入れて洗濯機とマガジンをダメにしてしまうなど、生活感溢れる描写で笑わせてくれるのだ。実際に、映画を視聴した人からも、「ギャップ凄すぎ」「今までなかった設定でおもしろい」といった声も上がっている。

無駄のない銃さばきを見せる髙石あかり

髙石あかりが演じるのは、銃の名手であるちさと。相手に銃を突きつけられても慌てることなく、銃を奪い取って瞬時に殺せる腕を持っている。大抵の相手はワンショットで頭を打ち抜けてしまうほどの銃の腕前だ。しかし、後先考えずに行動してしまうことも多いため、周囲に迷惑をかけることが多い。

本作の髙石の演技で特筆すべきは、その銃さばきだ。無駄のない、最も少ない動きで相手を確実に仕留めていく。髙石の特徴的な大きな目が一瞬にして鋭くなって、その切り替えの見事さに驚く。大振りな行動をせずに最小の動きで相手をしとめる、プロの殺し屋らしい動きが徹底されている。

しかし、普段はずぼらな性格で、まひろの手を煩わせている。髙石の振り幅の広い芝居がこの映画の魅力を支えており、ただ者ではない雰囲気を初主演にしてまとっていた。

相棒・伊澤彩織のキレキレアクションも必見

髙石と相棒を組む伊澤彩織のアクションも必見だ。伊澤は元々スタントマンであり、『キングダム』、『るろうに剣心』などの国内のアクション大作のほか、ハリウッド映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』にも参加している実力者だ。本作の監督である、阪元裕吾監督の映画『ある用務員』で俳優として髙石とともにコンビを組んだことで、本作にも抜擢された。近年では細田守監督のアニメーション映画『果てしなきスカーレット』のアクションシーンにスタントとして参加している。

そんなキャリアを持っている彼女だからこそ、そのアクションは他の役者とは一線を画している。まひろは銃も使うが格闘戦が得意なので、伊澤は肉弾での戦闘を数多くこなしているが、自分よりも大きい男たちを生身で倒していく姿は爽快だ。髙石あかりと伊澤彩織。『ベイビーわるきゅーれ』はこの2人の化学反応によって、他のどの作品とも似ていない超個性的な作品に仕上がった。髙石あかりを語る上で絶対に外せない一本だ。


ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi