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「花沢類がいる」「とんでもない」20年前から更新された“カリスマ性と色気”に相次ぐ大反響【Netflixドラマ】

  • 2025.10.24

Netflix『匿名の恋人たち』が配信されるやいなや、SNS上では「とんでもない」「色気大爆発」「花沢類がいる」と悲鳴にも近い熱狂が広がっている。42歳となった小栗旬が、潔癖症で誰にも触れられない御曹司・藤原壮亮を演じ、ロマンティックコメディの主演として帰還したことで、視聴者はふたたび“沼の入り口”へと引き戻された。本作はピュアな恋愛ドラマでありながら、“触れられない男”と“目を見られない女”という極端な生きづらさを抱えたふたりが、運命的に惹かれ合いながら、自分自身を取り戻していくヒューマンドラマでもある。その中心に立つ小栗旬の演技が、本作の説得力と完成度を決定づけている。

大人の恋愛をアップデートする“触れられない男”という設定

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『匿名の恋人たち』Netflixにて独占配信中

小栗旬が演じる藤原壮亮は、日本有数の製菓企業の御曹司でありながら、人に触れること・触れられることに強い恐怖を抱えている。わずかに手が触れただけで衣服を替えずにはいられず、恋愛はもちろん日常生活にも支障をきたす。この設定から、従来の“完璧な御曹司”像とは異なり、壮亮はトラウマを抱える“弱い主人公”として描かれていることがわかる。ただのロマコメに終わらせない物語的強度を与えると同時に、視聴者の心を強く掴む構造だ。

なぜなら、誰もが心のどこかに“他人に触れられたくない瞬間”や“人に弱みを見せたくない自分”を持っているからであり、壮亮はその感情の最前線に立つキャラクターだからである。壮亮というキャラクターは、小栗旬のキャリアの積み重ねを感じさせる存在でもある。まず思い出されるのは『花より男子』(2005年・2007年)の花沢類だろう。群衆のなかにいても孤独を感じ、他者との距離を自分で定めようとする繊細な佇まい。壮亮の“触れられない”という特性は、この花沢類の静かな存在感と響き合っているように見える。

一方で、ロマコメとしてのテンポや台詞の間には『リッチマン、プアウーマン』(2012年)の日向徹の片鱗が垣間見える。他人を寄せつけないカリスマ性、だが心の奥底では救いを求める不器用さ。それらが壮亮という人物に重層的な奥行きを与えている。

興味深いのは、過去のヒット作に似ていると感じさせながらも、壮亮が“総決算”ではなく、“更新”されたキャラクターとして提示されている点である。10年前にも演じたような、似通った役をもう一度演じているのではない。42歳になった小栗旬が、過去の魅力を継承しつつ、弱さや脆さをもさらけ出す成熟さを体現しているのである。

日韓合同制作が生み出す映像美とテンポの良さ

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『匿名の恋人たち』Netflixにて独占配信中

壮亮は誰の手にも触れられないが、ハン・ヒョジュ演じる天才ショコラティエ・ハナだけには触れることができる。壮亮とハナが握手をするシーンでは、壮亮が自ら手を差し出し、長く手を握ったあと「あったかいなあ」と呟く。この何気ないシーンに、視聴者は息を呑む。潔癖症という設定は、単なる障害のモチーフではなく、ふたりがお互いに“唯一無二の存在”であることを証明する物語装置なのである。

小栗は、その瞬間の微細な感情の揺れを逃さない。視線の震え、わずかな呼吸の変化、表情筋の緊張と解放。それらは演技でありながら、視聴者にとっては“壮亮という人間そのものを見ている感覚”を引き起こす。ロマコメにおける“胸キュン”が、決して一過性のものではなく、人生を変える出会いとして胸に刻まれるのは、小栗旬の演技が“キャラクターの人生をその場で生きている”からである。

本作は日本と韓国のクリエイターが共同で制作しており、その映像美と音楽の質の高さも特筆に値する。チョコレートという視覚的に美しいモチーフが全編を彩り、カメラワークは“触れるか触れないか”という緊張を最大限に引き出す。

さらに、コメディシーンのテンポの良さと会話劇のリズムは、近年の配信ドラマのなかでも群を抜いている。壮亮とハナが互いの恐怖症を克服するために練習するシーンや、雨のなかで傘のやりとりをするコミカルなシーンなど、視聴者の笑いと共感を同時に誘発する場面が絶妙に配置されている。

42歳が証明する、成熟した恋愛ドラマの現在地

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『匿名の恋人たち』Netflixにて独占配信中

ドラマの中心である藤原壮亮は、弱さを抱えたまま前へ進もうとする大人の象徴である。小栗旬が演じる壮亮には、若いころの“手の届かない王子様”のような輝きと、年齢を重ねたからこそ出せる“人間の温度”が共存している。

視聴者が再沼入りしてしまうのは、彼がこの作品を通して“恋愛のときめきをもう一度信じてもいい”と、そっと背中を押してくれるからかもしれない。

『匿名の恋人たち』は、単なるロマンスの復活劇ではなく、小栗旬という俳優が、自らのキャリアと時代の気分を重ね合わせながら、恋愛ドラマをアップデートしてみせた記念碑的作品なのである。


『匿名の恋人たち』Netflixにて独占配信中
[出演]小栗旬、ハン・ヒョジュ、中村ゆり、赤西仁、成田凌、伊藤歩、伊勢志摩、東景一朗、福田航也、秋田汐梨、秋谷郁甫

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_