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新時代の幕開け。デムナが探究する、グッチの“グッチらしさ”【2026年春夏 ミラノコレクション】

  • 2025.9.24

待ちに待った、デムナによる新生グッチGUCCI)がお披露目された。9月23日(現地時間)、メゾンはミラノでプレゼンテーションを行い、スパイク・ジョーンズとハリナ・ラインによる短編フィルムを上映。だが、常識を逸する、破壊的な創作姿勢で知られるデムナは、その36時間前にルックブックという形でコレクションを予告なしに初公開した。

「La Famiglia(家族)」と名づけられたコレクションは、デムナの言語で語られるグッチへのいわば入門コレクションだ。ロサンゼルスを拠点とする写真家のキャサリン・オピーが捉えた37のポートレートからなるルックブックには、新アーティスティック・ディレクターのデムナが思う、グッチの“グッチらしさ”を象徴する人物たちが登場する。スパンコールがあしらわれたミニドレスを纏った「Miss Aperitivo」から、GGのパターンで全身を統一した「La VIC」、シャツのボタンをベルトまで大胆に外し、ブランドのトム・フォード期をどこか彷彿とさせるスタイリングを披露する「Narcisista」まで、ポートレートに写るキャラクターは全員、グッチという由緒あるメゾンの伝統的なコードを、デムナの視点から再解釈している。

多彩なキャラクターが紡ぐ、グッチの新たな美学

ルックブックにまず登場するのはGGパターンがあしらわれた新型のトランクで、オピーが撮影した写真には「L'Archetipo」というキャプションが添えられている。ラゲージはグッチの原点だ。ロンドンのサヴォイ・ホテルでポーターとして働いていたブランド創設者のグッチオ・グッチは、上流社会のゲストたちと接する中で、いつの日か自分のラゲージを作りたいという夢を抱くようになった。そして1921年にフィレンツェに帰郷。後にグッチとなる小さなラゲージ・ショップをオープンした。

デムナによるグッチの新章は、ふたつ目の写真から本格的に始まる。写っているルックの名は「L'Incazzata(“the furious one”/烈々たる者)」。1960年代風の真紅色のミッドレングスコート、グローブ、「ホースビット」のヒール、プリントのスカーフ、グッチの定番アイテムである「バンブー」バッグからなるルックは、デムナが描こうとしているキャラクターの情熱的な気性を表しているが、それらを身につけているマリア・カルラ・ボスコーノからは、隠し切れない気品が漂う。

その後もデムナはグッチのコードを、さまざまなキャラクターと掛け合わせて展開していく。最も現代的なのは、リザード革の風合いを出したブラウンレザーのオーバーサイズのボンバージャケットとお揃いのシャツ、ストライプ入りのニットを身につけ、「ホースビット」のスライドサンダル風パンプスを履き、大ぶりのサングラスをかけた「L'Influencer」という名のルックだ。「Nerd」と命名されたメンズウェアルックは、ニットシャツの襟もとを飾るリボンがデムナの前任者であるアレッサンドロ・ミケーレが確立したスタイルを想起させ、メタリックのガウンを纏った「La Mecenate(“merchant”/商人を意味し、メゾンのミラノ本社があるメチェナーテ通りにちなんでいる)」と、「フローラ」プリントのレッグ・オブ・マトン・スリーブのガウンに身を包んだ「La Contessa」は、37のルックの中でも1位2位を争う、洗練されたイタリアン・エレガンスを放つ。

プレスノートによれば、今回のコレクションは「2026年2月のファーストショーへとつながる、デムナによるグッチのビジョンが築かれていく礎」だ。「グッチには、ヘリテージとファッション性というふたつの魂があります。ですが、商品にクリエイティビティを取り入れても、それがグッチのブランドとしての位置付けを物語るものでなければ、意味がありません」と、今年3月、デムナの就任が発表された記者会見で、メゾンの新CEOであるフランチェスカ・ベレッティーニは語った。今季のコレクションは、紛れもなくグッチらしいもので、ルックを捉えたオピーの視線も、デムナの破壊的で挑発的な視線に合わせられている。主体と客体、主観と客観、人とモノが衝突する彼のビジョンは、これからどのように展開されていくのか。今後、10店舗で限定販売される本コレクション。販売が開始され、ピースが人々の手にわたったときに、今後の具体的な展望が明らかになるだろう。

※グッチ 2026年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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