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旧耐震・新耐震とは?倒壊リスクや能登半島地震の事例

  • 2025.9.24

1981(昭和56)年5月以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅は、大地震が発生した際に倒壊する危険が高いことが、過去の地震被害調査から分かっています。

また、1981年6月以降の新耐震基準で建てられた家であっても、建築年によっては耐震化を検討した方がよい場合があります。

この記事では、地震発生時の安否を分ける建物の旧耐震・新耐震について、わかりやすく解説します。

大地震と耐震基準

日本は地球の表面を覆っているプレート(岩石の層)の境界上に位置しており、地震が発生しやすく、繰り返し大地震に見舞われてきました。

しかし、明治時代に近代建築が導入されてからまもなく、地震の多い日本に適した建築物の構造が研究され始め、大地震のたびに耐震基準の見直しを行い、現在は震度6強~7クラスの地震にも耐えうる建築物が建てられています。

1923年 関東大震災

日本の建築物に耐震規定が設けられたのは、10万を超える家が倒壊した関東大震災の翌1924年、建築基準法の前身となる「市街地建築物法」に盛り込まれたのが最初です。

古い木造住宅や、西洋建築を模したレンガ造りの建物の多くが倒壊する中で、耐震設計を取り入れていた一部の建物では被害が少なかったことが、耐震規定が導入されるきっかけとなりました。

1948年 福井地震

建築基準法が制定されたのは、戦後の1950年です。震度階級に震度7が追加されるきっかけとなった1948年の福井地震の被害調査結果によって耐震基準が設けられ、木造住宅には床面積に応じた壁量などが定められました。

その後、耐震基準は1968年の十勝沖地震など大地震が起こるたびに強化されていきます。

1978年 宮城県沖地震

マグニチュード7.4(震度5)の地震に見舞われた1978年の宮城県沖地震では、現在の仙台市域で全半壊4,385戸、一部倒壊8万6,010戸と住宅に多数の被害が出て、耐震基準の抜本的な見直しが迫られました。

1981年5月には建築基準法の大改正が行われ、いわゆる新耐震基準が導入されます。

1995年 阪神・淡路大震災

1995年の阪神・淡路大震災は、就寝中の人が多い早朝に大都市を襲った直下型地震でした。亡くなった6,434人のほとんどが、倒壊した自宅において命を落としています。

同震災の被害調査結果から、1981年以前に建てられた家に全半壊の被害が多いことがわかり、1981年6月以降に建てられた建築物を「新耐震」、それ以前の建築物を「旧耐震」として、旧耐震に該当する古い建築物の耐震補強がすすめられるようになったのです。

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旧耐震と新耐震の違い

旧耐震と新耐震では、倒壊しないことを目標とする地震の規模が異なります。

旧耐震(~1981年5月)

旧耐震基準は、建物の耐用年数中に数度は遭遇すると想定される中規模地震(震度5強程度)に見舞われたとしても、建物が倒壊しないことを目標とする基準です。

新耐震(1981年6月~2000年改正まで)

新耐震基準は、中規模地震では柱や梁などの構造にほとんど被害が生じないことを目標とした上で、さらに建物の耐用年数中に一度遭遇するかもしれない大規模地震(震度6強以上)でも倒壊しないことを目標としています。

具体的には、木造住宅における壁量の見直し、基礎となる軸組の種類などが改定されました。

しかし、震度6強~7クラスの地震が起こった場合には、当時の新耐震基準で倒壊を免れたとしても、家が傾くなどして住み続けられなくなる恐れがあります。

そこで2000年に、阪神・淡路大震災の被害調査結果を踏まえ、より耐震性を強化した新たな耐震基準が導入されました。

新・新耐震(2000年基準)

2000年基準で追加されたポイントは、壁配置バランスの四分割法による計算・土台と柱の接合部に、適切な金物を使用するなどの基礎仕様の明確化・地盤調査の義務化などです。

耐震基準とは、大地震が起こったときの無事を保証する基準ではありません。しかし、震度6強~7クラスの地震が発生したときに被害が少ない建築物は、新耐震基準のなかでも2000年以降に建てられていることが、近年の地震被害調査で分かっています。

倒壊のリスクが高い旧耐震の家に限らず、2000年より前に建てられた新耐震の家も、2000年基準に準じた耐震補強を行うことで、大地震発生後も住み続けられる可能性が高まるでしょう。

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旧耐震住宅が抱えるリスク

近年の大地震による倒壊の被害は依然として多く、そのほとんどが旧耐震の木造住宅です。

2016年 熊本地震:旧耐震の倒壊率28.2%

震度6強または7の地震が2回計測された2016年の熊本地震では、建物の被害が大きかった益城町中心部で、日本建築学会により被害状況の調査が実施されました。

調査の結果、旧耐震の木造住宅の倒壊率が28.2%(214棟)と高く、新耐震(1981年6月~2000年5月)では8.7%(76棟)、2000年6月以降の建築物では2.2%(7棟)と、新たな基準により倒壊が抑えられています。

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2024年 能登半島地震:旧耐震の倒壊率19%

2024年の能登半島地震では、旧耐震の木造住宅の倒壊率が19.4%(662棟)でした。1981年~2000年の5.4%(48棟)、2000年以降の0.7%(4棟)と比較しても、やはり旧耐震の被害が突出して多いことがわかります。

旧耐震住宅には、地震火災のリスクもあります。能登半島地震では、輪島の朝市で大規模な火災が発生しました。建物が倒壊したときに電気の配線が傷つき、火災の原因になったと考えられています。

今後予想されている首都圏直下型地震が発生したときには、東京の下町などに広がる古い木造住宅密集地域で、大規模な火災が発生すると懸念されています。

住宅の耐震化には費用を要するものの、地震から命を守るために重要な対策といえます。旧耐震住宅には耐震化の助成金をはじめ、各自治体などの公共機関による支援が実施されている場合もあります。耐震化を検討されている方は、お住まいの自治体の情報を確認してみてください。

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家の耐震を確認する方法

自分の家が新耐震か旧耐震かを判断する目安は、建築年月日です。建築年月日は次のような書類で確認できます。

確認通知書(確認済証)

厳密には建物が完成した日ではなく、着工前に建築基準法に適合しているか確認申請を行ないます。

新耐震と旧耐震の境目となる建築基準法の改正は、1981年です。確認通知書(確認済証)が発行された日付が1981年6月1日以降であれば、新耐震の建物です。

固定資産税通知書

建物の建築年は、固定資産税通知書の明細でも確認できます。

登記簿謄本(登記事項証明書)

登記簿謄本(登記事項証明書)で確認する方法もあります。登記簿謄本は土地建物の所有者以外でも取得することができますが、市役所などでは手続きできず、法務局に申請する必要があります。

重要事項説明書

家を購入する際の重要事項説明書には、新築工事に着工した時期と、新旧どちらの耐震基準に基づく建物かが記載されています。

新耐震の建物でも、リフォームで壁を取り払ったり、窓を増やしたりした場合には、耐震性が低下しているおそれがあります。不安がある場合は、耐震診断を受けるとよいでしょう。

なお、2025年4月に建築物省エネ法と建築基準法が改正され、全ての建物で省エネ基準の適合が義務付けられました。断熱材などで建物の重量が増えることを考慮して、木造住宅の壁率がさらに見直されています。

あわせて、小規模建築物の審査を省略するいわゆる「四号特例」が縮小され、大規模なリフォームをする際も、建築確認・検査が必要となる場合があります。

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すぐに実践できる地震の対策

旧耐震住宅の耐震診断や耐震補強、建て替えなどには時間がかかります。すぐにできる地震対策もあわせて行っていきましょう。

家具の固定

地震で倒れてきた家具の下敷きにならないよう、L字金具や突っ張り棒などを利用して、転倒・落下の危険がある家具を固定しましょう。

押し入れやクローゼットなどの収納を有効に活用し、寝室には背の高い家具を置かないようにする、寝ている位置に家具が倒れてこないように配置を検討する、といった対策をとることが大切です。

感震ブレーカーの設置

地震後の火災は、電気が原因となるケースが増えています。地震の揺れを感知して電気の供給を遮断する感震ブレーカーの設置を検討しましょう。

旧耐震の木造住宅には、設置費用を補助している自治体もあります。

ローリングストック

大地震に備えて、水と食料は1週間分を備蓄することが推奨されています。備蓄の際に、すべてを災害用の非常食で揃えると、保管場所や入れ替えが負担となるかもしれません。

普段から利用している缶詰やレトルトを多めに買い置きして、使いながら備えるローリングストックがおすすめです。

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まとめ

家の耐震補強や耐震化のための建て替えは、簡単にできることではないかもしれません。しかし、要件を満たすことで助成金などの支援を受けることができる場合があります。

とくに1981年より前に建てられた旧耐震の家にお住まいの方は、地震から身を守るために、耐震化を検討してみましょう。

<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター・防災士
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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