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【あなたの腸活、間違ってるかも?】「太りやすい」「疲れやすい」をクリアにする最新腸活

  • 2025.9.20
教えてくれたのは……
國澤純先生

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長、ヘルス・メディカル微生物研究センター センター長。腸と免疫研究の第一人者として、東京大学医科学研究所客員教授などを兼任しながら、世界中を飛び回り腸内細菌の調査・研究を続けている。著書に『9000人を調べて分かった 腸のすごい世界 強い体と菌をめぐる知的冒険』(日経BP)ほか多数。

専門家が語る「腸の最新トピック」

ほうれい線やシワの出現に「腸の働き」が関係している

國澤先生

腸には体の中の免疫細胞の半分が集まっています。免疫というと感染症やアレルギーなどと関係が深いイメージですが、実は美容とも大きな関わりがあるのです。例えば、皮膚がダメージを受けた場合。皮膚の免疫細胞がいらなくなった細胞を除去して正常な細胞のスペースをつくり、皮膚の生まれ変わりを促します。免疫細胞は腸で教育を受けた後、血液やリンパ液にのって体の中をめぐっていますが、腸で免疫細胞がきちんと教育を受けていれば、肌にもいい影響を与えるという仕組みです。
免疫力は高めれば高めるだけ良いと思うかもしれませんが、実はそうではありません。皮膚の免疫細胞が強くなりすぎると、掃除する必要のない正常な細胞まで攻撃されてしまって正常な肌の状態を維持するための大切な成分がつくられなくなり、シワやほうれい線が深くなる可能性があります。このように、免疫細胞のバランスが大切であり、腸でそのバランスがコントロールされているのです。だからこそ、美容のためにも腸活は欠かせません。


「ストレスと栄養不足」で現代人の免疫バランスは不安定な傾向に

國澤先生

体を健康に保つためには、免疫細胞が働きすぎても弱すぎても問題で、免疫バランスを整えるがことが大事です。その免疫バランスを整えることも腸の重要な働きのひとつです。ただし、現代人の腸の免疫細胞は働きすぎか弱まりすぎ、どちらか両極端になりやすいです。
不規則な食事が続き、食物繊維や青魚などに含まれるオメガ3脂肪酸など免疫のブレーキ役になる食材が不足した結果、免疫細胞が暴走し、正常な細胞にダメージを与えます。一方で、ストレスで免疫機能が弱まれば、風邪などをひきやすくなるでしょう。このように、ストレスと栄養不足に悩む多くの現代人の腸の免疫バランスは不安定な傾向にあります。


加齢とともに腸内のビフィズス菌は減っていく

國澤先生

腸の表面では、細胞同士が手をつないでバリアをつくり、外から異物が入ってこないように体を守っています。ところが加齢とともに腸の働きが弱くなると、このバリアがゆるんでしまいます。そうなると、通常は酸素がほとんど存在しない状態の大腸に酸素が漏れてしまいます。大腸で活躍しているビフィズス菌は実は酸素が苦手なので、加齢にともなって腸の働きが弱まるとビフィズス菌の数が減ってしまう人が少なくありません。
しかし、普段から腸にいい食事を続けている方は、たとえ高齢であっても、腸のバリアを維持でき、その結果、ビフィズス菌を減らすことがありません。加齢による腸内環境の悪化も、正しい腸活で食い止めることができるのです。


腸内細菌検査は、一度は受けてみる価値あり!

國澤先生

自分の腸内細菌の構成がわかれば、何を食べればいいのかが見えてきます。腸内細菌は特定の善玉菌だけが多くてもダメで、多種類の菌がいることで腸内環境をいい状態に保てます。ただ、自分の腸内細菌の状態は調べて検査をしてみないとわかりません。そのための方法として有効なのが腸内細菌検査です。ネット通販などで『腸内細菌検査』と検索していただくと、現在は2万円前後で1000種類くらいの腸内細菌を調べられると思います。多少高価ではありますが、自分の腸内細菌を知ることは、将来の健康の維持にもつながりますので、一度調べてみてもいいかもしれません。
また、現在、ビフィズス菌や“ヤセ菌”と呼ばれるブラウティア菌、フィーカリバクテリウムなどの代表的な菌にしぼった、より安価で受けられる検査キットの開発が進んでおり、1~2年のうちに実現化できるよう開発を進めています。新しい腸活の戦略として、より身近に使える検査キットを提供し、活用していただけるようになるといいと思います。


腸内細菌が性格に影響するという説も!

國澤先生

腸は免疫だけでなく、性格にも影響を及ぼすといわれています。臆病なマウスに、活発に動くマウスの便を移植したところ、臆病だったマウスが活発に活動するようになったというマウスレベルの実験データがあります。腸脳相関という言葉が話題になっているように、腸内環境はメンタルにも影響を及ぼしていることがわかってきています。実際に、腸活をしたことでイライラしなくなった、落ち着いたと実感されている方も少なくありません。腸内細菌を変えることで性格が変わる可能性もあるでしょう。


実はあまり役立たない!?「やりがち腸活」

「ヨーグルトだけを摂れば腸活は大丈夫」はちょっと違う!

國澤先生

腸活といえば善玉菌を増やすためにヨーグルトを食べておけばいいと思っている方もいます。先ほども説明しましたが、腸活で重要なのは、特定の種類の腸内細菌だけを増やすのではなく、できるだけたくさんの種類の腸内細菌がいること、つまり多様性が大事なのです。ですから、一番避けてほしいのは、特定のヨーグルトばかりといった『ばっかり食べ』。腸内細菌は協調性を大事にしているので、1つの菌だけを増やすことに集中すると、ほかの菌の働きが弱くなって、結果的に腸内環境が悪くなってしまいます。


「発酵食品で腸活してる」は不十分!

國澤先生

いい腸内環境のためには、ビフィズス菌、乳酸菌、納豆菌などが含まれるヨーグルトや、キムチ、納豆などいろいろな発酵食品を食べることが大切です。でも、これだけでは不十分。同時に、菌のエサになる食物繊維の摂取も欠かせません。食物繊維を摂ると腸内細菌が働いて短鎖脂肪酸をつくります。この短鎖脂肪酸は免疫の暴走を食い止めたり、食欲を抑制したり、腸のエネルギー不足を解消してくれるもの。最近では、発酵性食物繊維(腸内の善玉菌のエサとなり、お腹の中で発酵することで短鎖脂肪酸などの有用な物質を産生する食物繊維)も話題です。タマネギ、キウイフルーツ、海藻など、水溶性食物繊維と呼ばれているものに多く、一部の不溶性食物繊維にも含まれています。「発酵性食物繊維」とパッケージに書かれている食品も出てきているので、発酵食品と一緒に、食物繊維や発酵性食物繊維を積極的に摂るようにしましょう。


【正しい腸活のすすめ】目指すは“腸内細菌の多様性アップ”

腸活の目的は乳酸菌やビフィズス菌だけを増やすことではなく、多種多様な腸内細菌を育てること。バラエティに富んだ菌を育てれば、免疫機能を強化する、美肌になる、太りにくいなど、さまざまな菌がそれぞれの得意分野で働いてくれます。目指すは、ダイバーシティを意識した腸活です!

「太りやすい」「疲れやすい」「肌荒れが気になる」なら4つの善玉菌を育てること!

國澤先生

「太りやすい」「疲れやすい」「肌荒れが気になる」という悩みは、おもに4つの善玉菌を育てて、腸内環境を整えることで改善します。有名なのが乳酸菌とビフィズス菌です。乳酸菌はおもに小腸で働き、免疫機能を調整する役割を担っています。一方、ビフィズス菌はおもに大腸で働き、悪玉菌を排除して腸のエネルギー不足を解消し、疲れにくい体をサポートする善玉菌。また、日本人の9割が持っているといわれ、“ヤセ菌”と呼ばれるブラウティア菌や、フィーカリバクテリム菌も善玉菌です。エサとなる食物繊維を摂り、これらの菌を中心に多種類の善玉菌を育てていくことで、体調を整えていくことができます。


食物繊維と発酵食品、ビタミンB1を毎日摂る

國澤先生

善玉菌を増やすために、まず摂りたいのが発酵食品。代表的な発酵食品といえばヨーグルト(ビフィズス菌、乳酸菌)や納豆(納豆菌)です。
もう1つが食物繊維。腸内細菌によって食物繊維が分解されると、短鎖脂肪酸が産生されます。短鎖脂肪酸は脂肪燃焼のスイッチにもなる物質です。また、腸の粘膜バリアを強化する働きを持つ酪酸菌(善玉菌)であるフィーカリバクテリウム菌が存在するためにはビタミンB1が重要です。豚肉や大豆など、ビタミンB1を含んだ食材を積極的に摂るよう意識しましょう。

それらを摂るうえで大事なことがもう1つ。食物繊維も発酵食品も同じ種類ばかりを食べると、同じ菌ばかりが増えてしまいます。多様性のある腸内環境をつくるためには、多種類の食物繊維や発酵食品を毎日食べることが大切です。


\たとえばこんな食事がおすすめ!/

たとえばこんな食事がおすすめ!
解凍したごはん、具沢山の豚汁、キムチ、納豆
國澤先生

ごはんを冷やすと、白米に含まれるデンプンの構造が「難消化性デンプン」に変わります。難消化性デンプンはレジスタントスターチとも呼ばれ、腸内細菌のエサになるなど、腸内環境の向上に役立ちます。一度冷凍した後、レンジで再加熱してもレジスタントスターチはそのまま。腸活のごはんは、一度冷やしてから食べるのがおすすめです。そして、ビタミンB1が含まれる豚肉に、食物繊維豊富な野菜をたっぷり加えた豚汁は最強の腸活食。善玉菌を増やすためにキムチ、納豆などの発酵食品も忘れずに。


ヨーグルトや納豆は1週間ごとに違うものを買う

國澤先生

何度もお伝えしているように、腸内細菌は多様性が重要。ただ、同じ種類のヨーグルトや納豆ばかり食べると、同じ菌ばかりが増えやすい環境となってしまうかもしれません。ヨーグルトや納豆は同じ種類を1〜2週間くらい食べるとお通じがよくなるなど、体に何かしらの変化がみられることが多いようです。そこで、1〜2週間を目安にヨーグルトや納豆の種類を変えてみましょう。私がおすすめしているのは、特定の商品ばかりを選ぶのではなく、特売品のヨーグルトや納豆を買うことです。特売品は大体1週間ほどで違う商品に入れ替わります。それらを買っていれば、意識しなくても違う種類のヨーグルトや納豆を摂取することができるでしょう。


腸にいい生活を続ければ、腸内細菌のバランスはいい方向に変えられる!

腸にいい生活を続ければ、腸内細菌のバランスはいい方向に変えられる!
画像提供/国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ヘルス・メディカル微生物研究センター

上のグラフは國澤先生の2017年と2024年の腸内細菌検査による腸内細菌バランスのグラフです。7年間、具沢山のお味噌汁やヨーグルト、納豆などを食べるなど無理せず腸活を続けたことで、こんなにカラフル=多様性のある腸内細菌に変わったそう。

國澤先生

腸内細菌はさまざまな菌が分担して仕事をしているので、どんなにいい菌でも特定の菌が大部分を占めてしまうのは体にとって望ましくありません。2017年の私の腸内細菌は、3つの特定の菌だけがほぼ2/3を占めている、あまり望ましくない状態。この7年間、腸内細菌の種類を増やすために、多種類の食物繊維、発酵食品を摂るよう無理せずに心がけてきました。結果、腸内細菌のバリエーションが広がり、増えすぎていた菌の量が減り、増やしたかったビフィズス菌も増加しました。腸内細菌は数日で変わりますが、それが定着するのは、やはり毎日の食事を積み重ねなので時間はかかると思います。でも、毎日、いろんなものを食べることを心がけていれば、必ず腸内細菌の多様性は広がり、腸内環境が整ってくるはずです。


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写真協力/Shutterstock 取材・文/山本美和

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