1. トップ
  2. レシピ
  3. 災害時の「命の水」に「協力井戸」の恵み…“早い・安い・広い”注目ポイントとは

災害時の「命の水」に「協力井戸」の恵み…“早い・安い・広い”注目ポイントとは

  • 2025.9.6

大規模災害が起きたとき、避難生活を生き抜くために欠かせないのが「水」です。断水で水道が使えないときに重要な役割を担う「協力井戸」をご存知でしょうか。

井戸は水道とは違い、地下深くを流れる水脈に管を通して地下水を汲み上げる構造です。

水道が当たり前の時代、手押しポンプの井戸はあまり見かけなくなりましたが、災害で断水したときに、水道に代わる水源として注目されています。

災害時の水環境を研究する大阪公立大学の遠藤崇浩教授が提言する井戸の利点は、「早い、安い、広い」!

涼しげな水が、命を救う水に。
奥深い「井戸」の世界を深掘りします。

【特集】“じぶんごと”防災

豆腐店の命「水」も「協力井戸」から

Sitakke

札幌市白石区の豆腐店。
社長の伊丹一貴さんが、豆腐づくりで原料の大豆とともにこだわっていることがあります。

「地下水が軟らかい水なので、豆腐としてもおいしく仕上がる」

そう、「水」です。
支笏湖を水源とする、深さ100メートルの水脈に井戸を引き、ポンプで汲み上げた地下水を使っています。

「ここから水が出るということで井戸を掘って豆腐屋を始めた。お米を炊いたり、コーヒーを飲んだりするのに水を汲んでいく方はいますね」

Sitakke

豆腐作りに欠かせない井戸には、もうひとつ大切な役割があります。
札幌市の災害応急用「協力井戸」です。

災害時の「水の恵み」

Sitakke

「協力井戸」は、大地震などの災害で水道が断水したときに、民間が使っている井戸を住民に開放してもらうボランティア制度です。

2024年の能登半島地震の被災地では、水道の復旧に時間がかかり、トイレや風呂、洗濯に使う「生活用水」の不足が問題になりました。

一方で、住宅や企業で使われていた井戸は損傷が少なく、水が出たため、多くの持ち主が井戸を開放し、避難する住民らの生活用水の確保に役立ちました。

いざというときこそ、地元の人に水の恵みを。
伊丹社長は、20年前から「協力井戸」に登録しています。

「普段から汲めるものなので、災害があったときとか困っている人が、こちらで給水してもらえたらいいかなと」

知名度は…札幌ではわずか7%!

Sitakke

札幌市内にある井戸は、約700か所。
そのうち「協力井戸」は、約7割の473か所が登録されていますが、その存在は、市民にほとんど知られていません。

札幌市民に聞いてみましたが、年代問わず「まったく見たことがない」「はじめてききました」という声がほとんどでした。

Sitakke

災害時の水環境を研究する大阪公立大学の遠藤崇浩(たかひろ)教授が、過去に大規模な地震を経験した、札幌市・仙台市・熊本市の市民それぞれ500人に聞き取り調査した結果「協力井戸を知っている」と答えた市民の割合は、札幌でわずか7%に留まりました。

遠藤教授は「札幌市の場合、飲み水のほとんどが川の水を利用している。地下水に身近に触れる機会があるかどうかが要因になったのではないか」と話します。

生活用水は命を守ることにつながる

Sitakke

遠藤教授は大規模地震が切迫している北海道こそ、命を守る大切な水源として「井戸」を再認識する必要性を指摘します。

「生活用水が手に入らないと生活の質が非常に落ちますし、そこから健康被害とか二次被害が発生する可能性が高い。すぐ隣に出る井戸水があれば、そこで水を補充できることも井戸の利点のひとつ」

能登半島地震の被災地でも活用

Sitakke
石川県羽咋市 首相官邸HPより

「協力井戸」という言葉を知っている人がどれだけいるのか。
いざという時にどこにあるのか知っている人は多くないのが現状です。

水道が当たり前の時代で、井戸や地下水が再び注目されるようになったきっかけが能登半島地震でした。

2024年の能登半島地震では、断水が長引きました。トイレを流す水がなくなり、トイレに行くことをためらって体調を崩す住民も出て、災害関連死のリスクが指摘されました。
そこで活躍したのが「井戸」だったんです。

石川県内には、井戸を持っている民家や企業が多く、多くの持ち主が善意、ボランティアで、誰でも自由に水を汲めるように開放して、被災地の衛生の向上に役立ちました。

HBCテレビ「今日ドキッ!」のスタジオではコメンテーターのアンヌ遙香さんが、近所を散歩するときに協力井戸のプレートをみかけていたそう。
いざというときのために、ご近所づきあいの大切さを感じたといいます。

過去の災害でも、ご近所づきあいや地域の結びつきが強いところの方が、生存率が高いとデータで出ているのだといいます。

Sitakke

札幌市の「協力井戸」の制度は、阪神・淡路大震災の2年後、1997年度に始まり、当初は1000を超える井戸が登録されていたのですが、認知度の低さもあって、現在473か所まで減りました。

豆腐店や銭湯、病院、工場が多いのですが、井戸の場所は市のホームページでリストが公開されています。

秋元市長も市民への認知度の向上や、登録する井戸の数を増やしたい意向を示しています。

ブラックアウトなどで電源がなくなったときなどのために、あえて電気ではなく、手押しのポンプの井戸を造っている町もあるようです。

そして、あくまでも「ボランティア」のため、貸してくれる場所の方が被災した際には使えないこともあります。
必ず使えるわけではないということも頭に入れておきましょう。

今一度、避難経路とともに、協力井戸の場所など防災を話し合う機会を作っていきましょう。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年8月20日)の情報に基づきます。

元記事で読む
の記事をもっとみる