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40代から始めるアルツハイマー病予防ーー専門医が教える最新知見【ヴォーグなお悩み外来】

  • 2025.9.6

アルツハイマーは40代からジワジワと進行

Senior woman having headache. Close up.

「アルツハイマー病では、物忘れが始まる年齢の中央値は75歳。しかし、その約30年前、45歳ごろから男女ともに脳に最初の変化が現れ始めます。簡単に言えば、神経細胞の中に“ゴミ”が溜まっていくのです」と話すのは、認知症の治療に携わるお茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二先生。

アルツハイマー病の要因は、脳内で作られるタンパク質の一種であるアミロイドβが増えすぎること。この“ゴミ”は過剰に蓄積すると毒素を放出し、脳の神経細胞を損傷させて機能障害を引き起こす。この“ゴミ”の蓄積は、すでに40代から始まっているというのだ。

日本人の10人に1人が持つ注目の遺伝子とは?

Brain and genomic DNA

アルツハイマー病は遺伝が関わると言われている。なかでも、ApoE4(アポイー・フォー)という遺伝子をもつ人は、発症率が高いことが分かっている。ApoE4を初めて聞いたという人も、他人事だと思わない方が良さそうだ。なぜなら、日本人の10.1%、つまり約10人に1人がこの遺伝子を持っているのだ。結構多くはないだろうか?

「75歳くらいの患者を検査したら、ApoE4の遺伝子を持っていたとします。その患者の付き添いに来た40代の子どもも調べてみると、同じ遺伝子を持っていて、すでに脳ではアルツハイマー病の進行が始まっていることが多いですね。将来、自分は認知症になるだろうかとぼんやりと不安な場合は、親など、血のつながっている年長者をみるのが適切です」。さらに、ApoE4の遺伝子は、40代よりも前のもっと若いうちから脳に影響を及ぼすというから驚きだ。

「10代20代のうちから、アルツハイマー病とは違った病気として“表現”されます。例えば、自閉症や発達障害、また自殺率が高いことも明らかになっています」。自分がApoE4の遺伝子を持っているかどうかは、遺伝子検査で確認できる。

「たとえApoE4の遺伝子があっても、環境リスクを取り除けばアルツハイマー病の発症を防ぐことができます。実際、当院でもApoE4の遺伝子を持ちながら、80歳を過ぎても元気な方がいらっしゃいます。また、ApoE4は決して悪者ではありません。むしろ、能力が高い人に多く見られる遺伝子で、社会的に成功している方も多いのです」

お茶の水健康長寿クリニックでは、ApoE4の遺伝子を持つ患者に対し、残存する神経幹細胞を再生させるためにサイトカインによる神経再生治療を実施。萎縮した海馬の再生が観察され、認知機能の改善につながっている。

「当院では、90歳で治療している方もいます。医療はどんどん進化していますし、アルツハイマー病は治る病気になりつつあると、私は考えます」

おしゃれを楽しむことが認知症の予防に

Fashionable elderly woman in front of shopping mirror

環境リスクを取り除けば、たとえアルツハイマー病になりやすい遺伝子を持っていても、病が発症しにくいと先生は言っていた。ミドルエイジのうちから、どんなことに注意しておけばいいだろう?

「脳の老化を予防するには、脳に刺激を与えるのがいちばんです。中年期においては、聴覚障害が大きなリスク要因のひとつ。耳が聞こえにくくなると、外部からの情報が格段に減り、脳への刺激が不十分になるからです。補聴器などを使って脳への情報を減らさないことが大切です」

栄養のある食事と適度な運動、上質な睡眠という健康の基本要素はもちろん必須。加えて、外見を気にかけることも脳の活性化に効果があるそう。

「おしゃれに気を配る人は、介護を受けるリスクが低く、認知症になりにくいことが分かっています。外見を意識する気持ちが、脳を活性化するのに効果的なのでしょう。髪の分け目を逆にする程度のちょっとした変化でも良いです。

初診の時に余裕がなくておしゃれをしていない患者も、治療をすると、身だしなみを気にするするようになります。女性はお化粧をするようになる人が増えます。おしゃれやメイクを楽しみ脳に刺激が加わることで、さらなる老化を予防し、もっと身だしなみを整える余裕ができる……いうよい循環が生まれます。意外かもしれませんが、認知症と美容は関係しているのです」

話を聞いたのは……

白澤卓二先生

お茶の水健康長寿クリニック院長、博士(医学)

1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。2017年よりお茶の水健康長寿クリニック院長。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。日本で初めて「アンチエイジング」という言葉を使う。

Text:Kyoko Takahashi Editors:Kyoko Muramatsu, Yuna Shibata

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