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その不調、鍼で解決するかも? ストレス社会に効く、鍼治療という選択

  • 2025.9.4

数あるウェルネス療法の中でも、鍼治療は長い歴史を持ち、今も受け継がれている伝統的な手法だ。中国の伝統医学に由来し、細い針を体の特定のポイントに刺すことで、心身の不調を和らげるとされている。その背景にあるのは「気」と呼ばれるエネルギーの流れを整える考え方で、この気は「経絡」と呼ばれる体内の通り道を巡っているとされる。

鍼治療の歴史は少なくとも3000年以上。今では世界で最も広く行われている代替医療のひとつであり、科学的研究の対象となることも多い。特に痛みの緩和において効果が認められている療法なのだ。

「鍼治療は、血流やホルモンの調整から心や感情の安定まで、体が本来持つバランスを取り戻す力を高めてくれます。また、美容目的の顔の若返りや傷跡の回復、不妊治療のサポートにも用いられています」と話すのは、NY西部で東洋医学と統合医療を融合したケアを提供するジェネシオ鍼灸院の創設者であり、植物を中心としたリチュアルを提案するブランド、グッド サイク(GOOD PSYCHE) のハーブコンサルタントでもあるシャノン・チャンラー氏。「パンデミック以降、心の不調を抱える患者が増えており、鍼治療は不安やうつ症状に苦しむ人々に大きな助けとなっています」

では、鍼治療は実際どのように作用するのか。そして自分に合っているのか。ここからは、その効果とメリットについて紹介しよう。

バランスを取り戻すということ

「バランスの乱れを正さない限り、問題を根本から解決することはできません。症状を一時的に覆い隠しているだけなのです」と語るのは、鍼灸師であり東洋医学の専門家、さらに漢方薬の知識も持つジュヒ・シン氏。「鍼治療はエネルギーが全身を均等に巡るように働きかけ、滞りを取り除き、長年にわたって体の中に潜んでいたアンバランスを整えていきます」

一般的な施術の流れは次の通り。まず有資格の鍼灸師が体の状態を見極め、治療に適したポイントを選定。膝や足、手、腹部、顔、頭部などが対象となることもある。その後、滅菌された細い鍼をゆっくりと刺入。通常は痛みを感じることはほとんどないが、感受性には個人差がある。

「一般的な施術では5~20本の鍼を使用し、鍼が適切な深さに達すると軽い痛みを感じることがある」とメイヨークリニックは説明。わずかな“かゆみ”やチクチクした感覚を覚えることもあり、鍼灸師が鍼を軽く動かしたり回転させたりしてエネルギーの流れを促す場合もある。多くの場合、鍼は10~15分ほどそのまま置かれ、横になってリラックスする時間となる。鍼を抜く際にはほとんど痛みを感じない。

鍼治療は、体の状態の確認から鍼の抜去までを含めて、通常は合計で約1時間程度。施術中には、食事や漢方薬に関するアドバイスが行われることもある。

鍼治療で期待できる効果

鍼治療は万能薬ではないものの、ストレスによる不快感を和らげる有効な手段となる。国際学術誌『Journal of Acupuncture and Meridian Studies(鍼灸・経絡研究誌)』の研究によると、20分以上の鍼施術により、学生の不安を軽減し、精神の明晰さを高める効果があることが証明されている。

鍼治療は、さまざまな健康上の悩みにも用いられる。米国国立衛生研究所(NIH)によると、11件の臨床試験をまとめたレビューでは、鍼ががん治療に伴う症状の緩和に役立つ可能性が示唆されている。その他、鍼治療が活用される主な症状には以下のようなものがある。

  • 頭痛(緊張型頭痛や片頭痛を含む)
  • 腰痛
  • 筋肉痛
  • 首の痛み
  • 生理痛
  • 呼吸器の不調(アレルギー性鼻炎など)
  • 消化機能の改善
  • 不眠
  • ストレス緩和
  • うつ症状や不安
  • 顔の美容・若返り
  • 不妊治療のサポート
  • 更年期症状やホルモンバランスの乱れ
  • 歯の痛み

なぜ鍼治療は効くのか

鍼は、体が本来持つ痛みを和らげるホルモンを活性化させるのだ。「鍼治療は、あらゆる炎症に有効です」とシン氏。「エンドルフィンとは、体が自然に自己回復を促すために作り出す化学物質のことですが、体の特定の部位に鍼を刺すことで、このエンドルフィンが分泌されます」

これにより、鍼治療は幅広い人々にとって有用な療法となる。「鍼治療がこれほど多用途な理由のひとつは、子どもから高齢者まで、あらゆる年齢層の患者に効果があることです」とチャンラー氏。「心身のバランスを整え、症状を和らげたい人にとって非常に安全な選択肢であり、動物にも効果があります。犬や馬の神経・筋肉の回復にも、鍼治療が日常的に活用されています」

どれくらいで効く? 鍼治療の実感スピード

症状や治療する内容によって、効果が現れるまでの時間は異なる。「急性の痛み、たとえば腰を痛めた場合は、比較的早く効果を感じることがあります」とシン氏。「しかし、片頭痛やクローン病のように徐々に進行する症状では、効果が現れるまでに時間がかかることもあります」

慢性的な症状、たとえばホルモンによるほてりの場合、チャンラー氏によると、4〜6回の施術で十分だという。しかし彼は、心身全体の健康を考えたアプローチの重要性を強調する。「生活習慣や食事の内容は、施術の効果に大きく影響します。健康状態が十分でない人ほど改善に時間がかかるため、患者には日常生活の改善も並行して行うことが大切だと理解してもらう必要があります」

鍼治療と指圧の違い

近年では、鍼の代わりに特定のポイントに圧力をかける指圧の技術も発展している。指圧の効果は鍼治療と似ており、血流の改善やエンドルフィンの分泌による痛みやストレスの軽減が期待できる。多くの人は、クリニックでの鍼治療と組み合わせて指圧を行い、効果をさらに高めている。

指圧は自宅でも手や簡単な道具を使って行える点が大きなメリット。ニューヨークの WTHN クリニックでは、指圧用のマッサージリングから、ココナッツと亜麻の繊維で作られた指圧マットまで取り揃えられており、運動後や首・関節の痛みを和らげるために1日30分以上使用できる。「指圧が慢性的なストレスや不安を完全に解消するわけではありませんが、継続して行うことで日常のストレスに対してより落ち着きや回復力を感じられる人が多いです」と WTHNチームは述べている。不調を抱える毎日に、鍼が新しいバランスをもたらしてくれるかも。次の一歩として、鍼治療を試してみては?

Text: Lorena Meouchi Adaptation: Risa Yamaguchi

From Vogue México

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