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2020年に放送され今なお色褪せない“傑作ドラマ” 『しあわせな結婚』ロスを埋めるのに最適な1本

  • 2025.9.25
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『しあわせな結婚』第1話(C)テレビ朝日

好評のうちに幕を閉じた『しあわせな結婚』。ロスの解消に、ドラマスペシャル『スイッチ』の視聴をしてみるのはいかがだろうか。『しあわせな結婚』の幸太郎とは異なるカッコよさのある阿部サダヲと、ネルラとは異なるお茶目さを持つ松たか子が楽しめるだろう。

※以下本文には放送内容が含まれます。

坂元裕二が描く松たか子

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『しあわせな結婚』第1話(C)テレビ朝日

『スイッチ』は、2020年に坂元裕二が手がけた2時間のスペシャルドラマだ。腐れ縁で、元恋人同士である阿部サダヲ演じる検事の駒月直と松たか子演じる弁護士の蔦谷円が、ある事件に携わることになり、ともに事件を捜査していく物語だ。前半は、サスペンスらしい展開のなかに坂元ならではの軽妙な会話劇が描かれるが、終盤にある事実が発覚すると、途端に直と円が築いた長年の絆にスポットが当たる。サスペンス劇のなかに、一筋縄ではいかない男女の切なく奇妙な関係性が描かれている物語だ。

今となっては、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』や映画『ファーストキス 1ST KISS』など、坂元作品を代表する女優である松。『スイッチ』は、『カルテット』以来となる坂元作品への出演だった。『スイッチ』で演じた円は、他の坂元作品での松の役柄と同じく、どこかお茶目だ。特に直を相手に憎まれ口を叩くときの口調に、愛らしさが滲む。

一方で他作品と異なり、過去の経験から心の中にほの暗い欲望を持つ人物でもある。前半の自然体な表情とは打ってかわり、その欲望が発露したときの松の表情には相手への憎しみが浮かび、恐ろしさを感じてしまう。『しあわせな結婚』のネルラのミステリアスさを味わったあとに見ると、松の感情表現の引き出しの多さに驚かされるはずだ。

幸太郎の原型となったカッコいい阿部サダヲ

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『しあわせな結婚』第1話(C)テレビ朝日

『しあわせな結婚』で阿部サダヲが演じた原田幸太郎の人物像は、『スイッチ』の直を原型としていることが、『しあわせな結婚』のポッドキャストで明らかになっている。確かに、直の包容力を、幸太郎の中にも感じることができる。

一方で、幸太郎はネルラに翻弄され、ぶつかり合いながらネルラを愛することを決めた人物だったが、直はそうでない。直は学生時代からの関わりの中で円を庇い、守ることが自分の使命だともいうように生きている人間だ。終盤、それらの設定が明らかになったあとの直の表情はとても穏やかで、優しく円に寄り添ってきたことが伝わってくる。前半は、軽口の応酬が続いていただけにギャップが大きく、阿部の表情の物語の印象をガラッと変える要素になっている。

翻弄されながらではなく、自分の使命を受け止めながら、円に振り回されることを選ぶ直の姿はとてもカッコいい。

『しあわせな結婚』と『スイッチ』を続けて見ることは、異なる男女の関係性、松と阿部の芝居の幅を楽しむための最上の組み合わせと言えるだろう。まだ見たことがないという方は、ぜひ配信で堪能してほしい。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202

テレビ朝日系 『しあわせな結婚』毎週木曜よる9時
TVerで見逃し配信中
https://tver.jp/series/srje7d6tzp