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夏ドラマで“唯一無二の存在”と再証明した『松たか子』 常に代表作を更新し続ける“彼女にしかない魅力”

  • 2025.9.24
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【テレビ朝日新ドラマ合同発表会見】記念写真におさまる松たか子 (C)SANKEI

今夏、視聴者の多くの注目を集めたドラマ『しあわせな結婚』。

脚本を大石静、主演はが阿部サダヲということで、オンエア前から大きな話題を呼んでいた。

さらに作品の魅力をプラスしたのが松たか子である。

新たな作品に出るたびにその存在感をいかんなく発揮している松たか子の魅力について改めて迫る。

ドラマ「しあわせな結婚」とは?

主人公は阿部演じる原田幸太郎。原田は世間から注目を集める事件で無罪を勝ち取ってきた敏腕弁護士だ。弁護士としての仕事のかたわら、テレビ番組にも出演。お茶の間からの大きな支持も受けていた。

そんな彼はこれまで独身を貫いてきたが、病院で知り合った鈴木ネルラ(松たか子)と運命的な出会いを果たす。ネルラに心を奪われた幸太郎はそのまま電撃結婚。ネルラと彼女の家族が住むマンションで新婚生活をスタートさせる。

ひとりが好きな幸太郎にとって、妻の家族がすぐ近くに住んでおり、定期的に一緒に食事を摂るなどの距離感の近さに戸惑う。むしろ、少し辟易している部分も。しかし、徐々に鈴木家に馴染み、その家族の輪に加わっていく。

しかし、ネルラは15年前に起こったある事件に関わっており、彼女を容疑者だと考えている刑事がいた。幸太郎はネルラが抱える過去と向き合うことに。結婚生活は予想しなかった方向へと進んでいく。

不思議さとキュートさと

松たか子が誰かを演じるたびに、「この役は松のためにある役だ」と思わずにはいられない。近年、出演した作品で言うと、映画『ファーストキス 1ST KISS』しかり、ドラマ『スロウトレイン』しかり。少しさかのぼるとドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、ドラマ『カルテット』もある。常に代表作を更新し続けていると言っても良いかもしれない。

『しあわせな結婚』でのネルラも松にしか演じられない、と思わされてしまう。

何かひとつ間違った選択をすれば嫌われてしまうかもしれない、という繊細な心を感じさせると同時に、「この人、何か変だぞ?」という違和感。1話から印象的だったのはクロワッサンの食べ方だ。クロワッサンと言えば、普通に食べてもこぼれた欠片で周りを散らかしてしまう。しかし、ネルラはためらうことなく、クロワッサンの真ん中にかぶりついた。そんな食べ方する人がいるのか、と驚いた人も多いのではないだろうか。これが演出によるものなのか、松自身のアイディアなのかは分からないけれど、このワンシーンで「ネルラ」という人物の一部分を作り上げたのは間違いない。

だからと言って一言で変人と片付けてしまうのとも少し違う。絶妙なアンバランス感でネルラという人物像を作り出しているのだ。

そこに加わるのがキュートさだ。個性的な寝相は素のネルラを表現するのはぴったり。幸太郎もそんなネルラをいとおしく思う描写がたびたびあった。

人間の多面性を如何ようにも表現する

当たり前だが、人間というのは多面性がある生き物だ。ただ、どこか一部分だけが突出してしまい、「〇〇な人」というイメージが作り上げていく。俳優だと、何かの役柄のイメージが強く「〇〇な人」というイメージがつくが、松の場合はどうだろうか。不思議な人でもあるし、ミステリアスでもある。キュートでもあるし、カッコよくもある。それは松が演じてきた役がミルフィーユのように積み重なってできたものである。

でも、カメレオン俳優と言うのは少し違う気がするのはなぜか。どちらかというと、その世界観に溶け込む、というより、世界観を作り上げている側だからではないか。『しあわせな結婚』においても、溶け込むというよりは、違和感を担い、阿部と共にドラマの世界観を担っている。どちらが欠けてもあの空気感は作りあげられない。

そういう意味でも、やはり松たか子は唯一無二の俳優と言えるだろう。


※記事は執筆時点の情報です