1. トップ
  2. 20年前、日本中が胸を震わせた“力強い絆のバラード” 40万枚超えを売り上げた“沖縄サウンドの祈り”

20年前、日本中が胸を震わせた“力強い絆のバラード” 40万枚超えを売り上げた“沖縄サウンドの祈り”

  • 2025.8.30

「20年前の夏、あなたはどんな音楽に心を寄せていただろう?」

2005年の日本。街を歩けば、若者たちの手には携帯音楽プレーヤーが握られ、イヤホンからは最新のヒットソングがあふれ出していた。クラブやカラオケではダンスチューンが響き、ランキングには華やかなナンバーが並んでいた。

そんな中で、テレビから流れてきた一曲が、人々の胸の奥にそっと触れた。

ORANGE RANGE『キズナ』(作詞・作曲:ORANGE RANGE)ーー2005年8月24日発売

愛と別れを包み込んだ“ドラマティックな響き”

『キズナ』は、TBS系ドラマ『いま、会いにゆきます』の主題歌として書き下ろされた。大ヒットした映画版でも主題歌として『花』を提供していた彼らが、続くドラマでも再び音楽を託されたことは、偶然というよりも必然だった。

物語に流れるこの曲は、ただの主題歌以上に、視聴者の感情を物語と共鳴させる役割を果たしていた。柔らかなメロディが生と死の境界をそっと包み込み、「大切な人とつながっていたい」という願いを音に変えて届けたのだ。

undefined
2004年、auの「着うたフル」サービスのPRイベントでスペシャルライブを行ったORANGE RANGE (C)SANKEI

沖縄の空気をまとった“祈りのバラード”

『キズナ』には沖縄の息づかいが宿っているところも特徴的だ。歌声に重ねられた三線の音色が聴く人を一瞬で南の島の風景へと誘う。また差し込まれる「イーヤーサーサー」の掛け声は、熱気と生命力を呼び覚ます。

その土着的な響きが、エレキギターやドラムと混ざり合い、都会のバラードにはない独特の温度を作り出す。

単なる切ない歌ではなく、そこには“命への祈り”や“人と人を結ぶ強さ”が込められていた。まさに、レペゼン沖縄なバンドならではの表現だ。

静かな痛みを抱えたバンドの節目”

この楽曲には、当時のバンドにとって避けられない節目も重なっていた。ドラムのKATCHAN脱退後、初めて世に送り出されたシングルだったのだ。

メンバーにとってもファンにとっても複雑な空気が漂う中、それでも『キズナ』は静かな歌い出しからサビへと力強く広がり、変わらず“ORANGE RANGEらしさ”を響かせた。揺らぎの季節に生まれた一曲だからこそ、多くの人の記憶に深く刻まれることになった。

人々の心に刻まれた“40万枚の証”

発売から瞬く間に広まり、40万枚以上を売り上げるヒットを記録。テレビや街角のBGMとして繰り返し耳にすることになった。「絆」というタイトルが象徴するように、聴く者の心をつなぎ合わせる力を持っていたのだ。

映画『花』で涙を誘った人々が、ドラマ版『いま、会いにゆきます』と共に再びこの曲に触れ、物語の感動を倍増させた。作品と楽曲の連鎖が、当時の空気をより鮮やかに記憶させる役割を果たしたといえる。

2005年の夏に残した“余白の温もり”

当時のORANGE RANGEといえば、エネルギッシュで華やかなサウンドが真っ先に思い浮かぶ。そうしたイメージとは異なる静けさをまとい、彼らが持つもう一つの表情を示した作品だった。騒がしさではなく、人と人を結ぶ温もりを前面に押し出したこの曲は、派手なナンバーと並んでファンの心に残り、バンドの幅広さを印象づけたのだ。

あれから20年。今聴いてもその響きは瑞々しく、誰もが“あの夏”の情景を思い出す。離れてしまった人を想う気持ち、言葉にならない想いを抱えた日々。そのすべてを優しく肯定するように、『キズナ』は今も心の奥で生き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。