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30年前、『名探偵コナン』初代EDを放った“金髪のヒーロー” ロックバンドが示した“ポップセンス”

  • 2026.3.4

1996年。デジタルとアナログが交差する激動の時代、多くの子供たち、そして大人が一つの新しい物語に胸を躍らせた。それが青山剛昌原作の日本テレビ系アニメ『名探偵コナン』だ。その記念すべき物語の終わりに、そっと寄り添うように流れてきたのがこの曲である。

ZIGGY『STEP BY STEP』(作詞・作曲:森重樹一)――1996年3月4日発売

ロックンロールの体温を帯びた、新しい時代の風

ZIGGYといえば、1980年代後半のバンドブームを牽引した象徴的な存在である。金髪をなびかせ、グラマラスで攻撃的なロックンロールを鳴らす彼らは、当時の若者にとって絶対的な「ヒーロー」であった。

代表曲『GLORIA』(1988年)に象徴されるような、派手でダイナミックなライブパフォーマンスは、音楽シーンに鮮烈な記憶を刻んでいる。しかし、1990年代中盤に入り、彼らが見せた姿はさらなる深化を遂げていた。そこには、激動の時代を駆け抜けてきたからこそたどり着いた、肩の力を抜いた軽やかさが漂っている。11枚目のシングルとして世に放たれたこの曲は、彼らが単なるロックバンドという枠を超え、卓越したポップセンスを持つ表現者であることを証明した一曲と言える。

この時期、ボーカルの森重樹一が生み出す楽曲には、どこか達観したような優しさが宿り始めていた。かつての鋭利な叫びは、聴く者の隣で語りかけるような柔らかな響きへと変化し、それが多くのリスナーの心に深く浸透していったのである。それは単なるスタイルの変化ではなく、音楽家としての「成熟」がもたらした必然の着地点であったのかもしれない。

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2004年、東京・渋谷公会堂で行われた結成20周年記念ライブ「ZIGGY NIGHT」より(C)SANKEI

謎解きの余韻を包み込む、優しき旋律

この楽曲を語る上で欠かせないのが、アニメ『名探偵コナン』との出会いである。今や世界的な人気を誇る国民的作品だが、この曲は初代エンディングテーマとなった。

放送開始当初の熱気を支えたのは、間違いなくその音楽的なセンスの良さであった。ミステリアスな事件の真相を解き明かし、少しの切なさを残して終わる物語の本編。その後に流れるこの曲は、視聴者の張り詰めた緊張感を優しく解きほぐす役割を果たしていた。

イントロの軽快なギターカッティングが聞こえてきた瞬間、心は事件の喧騒から解放され、穏やかな日常の安らぎへと戻っていく。それは物語のエンディングという枠を超え、一日の終わりを静かに締めくくるためのセレモニーのような響きを持っていた。

物語の余韻を消すことなく、むしろその奥底にある「希望」を照らし出すような構成。何かが終わることは、次の何かが始まることでもある。そんなメッセージが、言葉を超えて音そのものから伝わってくるようであった。この楽曲が持つ、押し付けがましくない「寄り添う力」こそが、初代エンディングテーマとして多くの人の記憶に深く刻み込まれた最大の理由であろう。

記憶の中で響き続ける、歩みの音

1990年代中盤、音楽シーンはプロデューサー主導のダンスミュージックや、大規模なキャンペーンを前提とした楽曲が溢れていた。そんな中で、バンドマンとしての矜持を持ちながら、これほどまでに親しみやすいポップソングを成立させた彼らのバランス感覚は驚異的である。

あれから30年という月日が流れた。録画していた映像を何度も見返したあの頃の子供たちは、もう大人になった。どれほど技術が進歩し、情報のスピードが上がっても、私たちが求める「一休み」の価値は変わらない。ふとした瞬間にこの旋律が脳裏をよぎる時、私たちは自分たちが歩んできた道のりを振り返り、少しだけ誇らしく思えるのではないだろうか。

あの頃感じた、少し冷たくて心地よい春の風の感触とともに。この曲を聴くとき、私たちはいつでも「一歩を踏み出す勇気」を取り戻すことができるのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。