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20年前、EXILEが放った“第一章”完結への序曲 2人の歌声が最後に交差した“永遠の肯定”

  • 2026.3.6

2006年3月。日本の音楽シーンは、一つの大きな時代のうねりの中にあった。デジタル音楽プレイヤーの普及が加速し、音楽の聴き方が劇的に変化していく中で、アーティストには「記号」としての人気だけでなく、より深い「表現者」としての実力が問われ始めていた時期でもある。その中心にいたのが、ダンス&ボーカルグループとしての新境地を切り拓き続けていたEXILEだった。

彼らにとってこの春は、結成以来の歴史を積み上げてきた「第一章」という季節が、ゆっくりと、しかし確実にその終わりを告げようとしていた特別な時間であった。

EXILE『YES!』(作詞:ATSUSHI・作曲:山口寛雄)ーー2006年3月1日発売

交じり合う2つの魂が描いた、春の残像

この楽曲がリリースされた当時、EXILEはすでに国民的な人気を獲得していたが、その音楽性は常に進化を続けていた。本作においてまず耳を引くのは、ATSUSHIとSHUNという、全く異なる質感を持つ2人のボーカリストによる極上のアンサンブルだ。

ATSUSHIのシルキーで繊細な高音と、SHUNの力強くもどこか哀愁を湛えた歌声。この2つの個性が、サビのメロディで一つに重なり合う瞬間、聴き手は「この2人でなければ鳴らし得ない響き」がそこにあることを確信する。

20枚目のシングルという節目にふさわしく、楽曲全体に漂うのは、これまでの歩みを全肯定するような力強い解放感である。タイトルの『YES!』が示す通り、そこには迷いがない。共に歩んできた仲間への信頼や、これから進むべき道への誓いまでもが内包されているように感じられる。

当時、グループを取り巻いていた「変化の予感」を知る者にとって、この眩いばかりのポジティブなエネルギーは、かえって胸を締め付けるような切なさを伴って響いた。

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2003年、「キダム」東京追加公演の公開リハーサルに来場したEXILE(C)SANKEI

削ぎ落とされた音色に宿る、成熟の響き

サウンド面に目を向けると、山口寛雄による作曲とREOによる編曲の妙が光る。2000年代半ばのJ-R&Bシーンを象徴するような、洗練されたビート感とアコースティックな温かみが同居したサウンドは、今聴き返しても全く色褪せることがない。過剰な装飾を削ぎ落とし、ボーカルの魅力を最大限に引き出すことに徹した音作りは、「歌」そのものの力を信じる彼らのストレートな姿勢を反映している。

特に、楽曲の随所に散りばめられた流麗なストリングスの音色は、春の訪れを告げる風のように軽やかでありながら、どこか儀式のような厳かさも持ち合わせている。編曲のREOは、2人の歌声が持つダイナミズムを損なうことなく、広大なキャンバスを描き出した。この音像があったからこそ、聴き手はただ楽曲を楽しむだけでなく、その奥にある「物語」にまで深く没入することができたのだ。

別れの予感を包み込んだ、眩いばかりの光

本作は、4thアルバム『ASIA』の先行シングルとして世に出された。そして、そのアルバムを最後にSHUNがグループを脱退し、ソロアーティストとしての道を歩み始めることが決まっていた。つまり、この『YES!』は、第一章を支えた「ATSUSHIとSHUN」という最強のデュオによる、実質的に最後のシングルとなったのである。その事実を念頭に置いて聴くと、歌詞の一言一言、フェイクの一音一音に込められた熱量が、よりいっそう特別なものとして迫ってくる。

去りゆく友の背中を押すような、そして残された者が自らの足で立ち続けることを約束するような。そんな「美しい別れ」の形が、この数分間の旋律の中に凝縮されている。

あれから20年という月日が流れた。グループはその後、メンバーの増員やスタイルの変遷を経て、さらなる巨大なエンターテインメント集団へと進化を遂げていく。しかし、どれだけ時代が変わろうとも、あの2006年の春に放たれた『YES!』の輝きが色褪せることはない。それは、一つの時代が完成を迎えた瞬間の記録であり、私たちがかつて共有した、瑞々しい熱狂の記憶そのものだからだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。