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30年前、日本中が胸をときめかせた“透明感女優のデビュー曲” ドラマと共鳴した“瑞々しい旋律”

  • 2025.8.30

「30年前の夏、どんな風景を思い出す?」

真っ青な空に入道雲、蝉の声とアスファルトの照り返し。街にはTシャツとサンダル姿の若者があふれ、新しい時代への期待と不安が入り混じっていた。そんな1995年の夏、テレビから流れてきた一曲が、多くの人の心を静かに掴んだ。

瀬戸朝香『夏色の「永遠」』(作詞・作曲:西脇唯)ーー1995年7月21日発売。

瀬戸が主演していたドラマ『終らない夏』(日本テレビ系)のエンディングテーマとして届けられたこの楽曲は、女優として名を広げていた彼女の新たな表情を映し出す“デビューシングル”だった。

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瀬戸朝香-1996年撮影 (C)SANKEI

女優からアーティストへ――瀬戸朝香の第一歩

当時、瀬戸朝香はドラマやCMでその存在感を放ち、透明感あふれる女優として注目を集めていた。そんな彼女が音楽シーンに挑戦することは、少し意外性を伴いつつも、大きな話題となった。

デビュー曲となった『夏色の「永遠」』は、彼女が主演を務めたドラマ『終らない夏』のエンディングテーマに起用。映像と音楽が響き合い、視聴者の記憶に“夏の情景”として刻まれる仕掛けとなった。

楽曲が放つ“透明感”の正体

『夏色の「永遠」』の魅力は、何よりもその澄み切ったメロディラインと、瀬戸朝香の瑞々しい歌声にある。作詞・作曲を手がけたのは、西脇唯。シンガーソングライターとしても活躍し、繊細でどこか切ない旋律を紡ぎ出すことで知られていた。

この曲では、決して声を張り上げることなく、柔らかに紡がれるフレーズが、聴く人の胸にすっと染み込んでいく。まるで夏の夕暮れ、潮風に揺れる風鈴の音のように、静かでありながら確かな存在感を放っているのだ。

西脇唯との出会いが導いたもの

西脇唯は、自身のシンガー活動と並行して、多くのアーティストに楽曲を提供していた。繊細なメロディと情緒豊かな表現を特徴とする音楽性は、90年代のシーンの中でも独自の存在感を放っていた。

その音楽性が、瀬戸朝香の女優としての透明感と見事に重なり、デビューシングルとして特別な響きを持たせたと言えるだろう。

歌唱力を誇示するのではなく、女優としての存在感を音楽に溶かし込むーーそれは、彼女にしかできなかった表現だった。

あの夏が残した余韻

『夏色の「永遠」』は、累計で18万枚以上を売り上げるスマッシュヒットとなった。華やかな大ヒット曲が次々と生まれていた時代においても、この楽曲は“あの夏の空気と重なり合う一曲”として、リスナーの心に確かな足跡を残した。

夏の夕暮れにふと耳にした瞬間、胸の奥をそっと揺らすような透明な旋律。

瀬戸朝香にとってもファンにとっても、それは単なるデビュー作ではなく、いつまでも色褪せない“始まりの歌”として響き続けている。

そして30年が経った今も、『夏色の「永遠」』は当時を生きた人々の記憶の中で、静かに輝き続ける。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。