日常に、花という小さな贅沢を【夢見るパリ】

 

春から初夏にかけて花々が咲き誇り、パリの街並みや公園をお散歩するのが楽しい季節です。
ワンピース一枚で出かけられるくらい心地よい気温になって、花々を見れば心がふわりとほどけそう。

 

近所の花市場もたくさんの花の種類に目を引きます。自分が好きな花を選ぶのは楽しい時間。

パリに住んでからの毎週の私の習慣はお花を買うこと、です。
日本ではお花＝プレゼントという意識が強いかもしれませんが、フランスでお花を買うことは日々の暮らしを美しく整えるための簡単な方法です。

週２回のマルシェにはお花屋さんも並び、野菜や果物、チーズを買うついでにお花も一束選ぶのはパリでも地方でもごく自然なこと。
お花は一輪でもブーケでも、お花を入れるのはコップや空瓶やポットでいいのです。

 

19世紀のイタリア製の薬壺に入れてお店のディスプレイに。
GIRASOLE（ジラソーレ）はイタリア語でひまわり。

 

お店にお花を飾るだけで雰囲気がパッと明るく良くなります。
お花が人の心や空間にポジティブな影響を与えていることは確か。

 

私はお仕事をした際にお客さまからブーケをいただくことが度々あります。
カリグラフィーの作品をお渡しした後に「美しい仕事をありがとう」と言ってわざわざ薔薇を一輪買ってお店まで戻ってきてくださった方もいて、そんなお客さまは特に記憶に残っています。
お花そのものよりお客さまがどれだけ喜んでいるか、想いが伝わってくる嬉しいサプライズです。

 

ブーケを贈るのも大好きです。
友人宅に招待された時、個展のお祝い、誕生日パーティなど、友人に似合いそうなお花を選んでブーケにしてもらいます。
受け取った友人は表情がより生き生きして綺麗になるのを知っています。

 

バラだけのアレンジもシンプルだけど素敵です。
手作りのカードにカリグラフィーのメッセージを添えて。

 

こちらは夫が一つ一つ花を選んでアレンジメントしてくれたブーケ。いつもフラワーアレンジメントの才能がある夫に感心します。
デッサンとポエムのお手紙付きの時はより嬉しい！

 

カンパニュラと呼ばれる名前の通り鐘のような形の可憐な花、今の時期薔薇との組み合わせがかわいい。

 

自分の為のブーケ。
オディロン・ルドンの絵画を持っていってこんなブーケをお願いしました。
「バタフライ ラナンキュラス」という名の白い蝶々のようなお花を入れてくださり、花の周りを蝶々が舞っているようで夢の中のようなブーケ。

 

お庭に毎年咲くという芍薬をいただき感動！
人の頭より大きい２５センチほどあるこんな芍薬は初めて見ました。
この世のものとは思えない大きさ！

 

夫の誕生日にマスキュランな色合いでお願いしたブーケ。
「ペロケ」という名のオウムのようなチューリップ、珍しい百合を合わせてもらいました。

私はフローリストの友人が多く、お花屋さんでのエピソードやブーケ配達時のエピソードを聞くのが大好きです。小説のようなドラマがあります。

 

季節を映すお花屋さんのショーウィンドウからはいつもインスピレーションと元気をもらっています。
そして忙しい日々の中で忘れがちな「今」の美しさに気づかせてくれます。

 

 

text：竹内 仁海

パリ在住13年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。

Instagram：@melodiesgraphiques