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インドIT業界のトップ企業を率いる、同国で最も裕福な女性が“教育”に投資する理由【気鋭のイノベーター】

  • 2025.6.24
2023年、ダボス会議に参加したHCLテクノロジーズ代表のロシュニ・ナダール・マルホトラ。Photo_ Bloomberg / Getty Images
Day Two of The World Economic Forum (WEF) 20232023年、ダボス会議に参加したHCLテクノロジーズ代表のロシュニ・ナダール・マルホトラ。Photo: Bloomberg / Getty Images

「私が理事を務める『シヴ・ナダール財団』は 、私の父を中心にファミリーで運営する慈善財団として、傘下初の教育機関『SSN工学大学』を1996年にチェンナイに設立するなど、主に教育面の拡充に尽力しています。そのベースにあるのは、“今の自分を成功へと導いたのは、ひとえに教育のおかげ”という父の信念です。そのため、高等教育のための単科大学や総合大学、そして都市部の幼稚園から高校から地方の全寮制学校にいたるまで、優秀でありながら経済的に教育を受けられない子どもたちを全面的に支援してきました」

かつて「Alliancemagazine.org」にこう語ったロシュニ・ナダール・マルホトラは、1982年に同グループの創設者で父のシブ・ナダールの娘として、インド・ニューデリーで生まれ育った実業家だ。また、インド初の女性CEOとして上場IT企業「HCLテクノロジーズ」を率いる起業家でもある彼女は、『フォーブス』誌の「世界で最もパワフルな女性100人」にランクインし、2024年10月時点で推定400億USD(約5.8兆円)の純資産を有するインドで最も裕福な女性の一人でもある。

一方で、2017年にはインド版『VOGUE』の「 マンオブザイヤー」にも選出されたこともある彼女は、それぞれの分野に変革をもたらしたロールモデルとして、ジャンルを超えて注目を集める慈善家としても知られる。

事業をファミリーで運営する理由

ニューデリーで開催されたプレスカンファレンスに参加。父シヴ・ナダール(右)とともに。2010年撮影。Photo_ Pradeep Gaur/Mint via Getty Images
Indian Economy, Business And Financeニューデリーで開催されたプレスカンファレンスに参加。父シヴ・ナダール(右)とともに。2010年撮影。Photo: Pradeep Gaur/Mint via Getty Images

「私は、IT企業『HCLテクノロジーズ』のエグゼクティブディレクター兼CEOと慈善事業『シヴ・ナダール財団』の理事という2つの役割を担っています。財団の運営は企業活動に支えれられているため、財団と企業は非常に密接な関係にあります。また、企業は財団を単なる慈善活動や慈善事業としてではなく、長期的な“社会的投資”として捉えています。そこで、私たちが多額の資金を賢明に管理しつつ、多角的事業に深くコミットすることを可能にしているのがファミリーでの運営です。このように、企業と財団の活動は表裏一体なのです」

と、マルホトラは父の哲学をベースに、財団がファミリー運営されている理由をこう明かした。一方で、その企業力を裏付けるのが、イギリス・ロンドンに拠点を置く国際金融グループ「バークレイズ」が2024年に公開したレポート「Private Clients Hurun India Most Valuable Family Businesses」での彼女の事業の評価額 だ。これによると、43万600億ルピー(約 7.3兆 円)と2位以下をはるかに凌ぐ数字を叩き出しており、彼女が名実ともに世界のファミリービジネスのジャンルにおけるリーダーであることを裏付けている。

「教育は成長を促す基礎です。そして、その基礎は文盲の撲滅や雇用の創出に限定されるものではなく、より良い社会を創造する構成員となるあらゆる分野のリーダーを生み出すために重要な役割を果たすものです。その“変革教育”こそが国家に力を与える強力な手段となりうるのです」

財団のウェブサイトにてこう綴る父の背中を追いながら、教育から野生動物保護まであらゆる活動に自身の富を還元し続けてきたマルホトラ。そんな彼女は、規模の大小にかかわらず、企業と慈善事業運営を両立させる中で得た大きな収穫が、自分と目標を同じくする情熱的なリーダーを見つけたことだったという。

成功の鍵を握る“チームワーク”

2025年のダボス会議にて。Photo_ Hollie Adams / Bloomberg via Getty Images
Opening Day Of World Economic Forum (WEF) 20252025年のダボス会議にて。Photo: Hollie Adams / Bloomberg via Getty Images

「私が情熱を傾けているからと言って、私自身にそれを成功へと導くスキルがあるとは限りません。ですから私は、自分に近い大義を持つリーダーを他に見つける必要があることを学びました。今の私は、彼らが率いる熟練したチームがあるからこそ、事業の最前線に立って集中し続けることができるのです。私の役割は、彼らにリソースと戦略的指示と資金を提供するだけ。それは慈善活動も同様で、プロジェクトにシードキャピタル(初期金融投資)を提供するだけです。つまり、企業も慈善活動も、私一人の力では絶対成立しないのです」

かつてメディアにこう語った彼女は、その国内外での多角的な取り組みが評価され、2024年7月にフランス政府より「レジオンドヌール勲章シュヴァリエ」が授与された。その際、「この受賞はインドとフランスの戦略的関係を強調するもの」として、デジタル改革を通じてフランスを支援できることを光栄に思うと語った。

プライベートでは、2009年に結婚した夫との間にもうけた2児の母親でもあるマルホトラ。そんな彼女は、母親になったことが自身のキャリアにさらなる恩恵をもたらしたと語る。

「子どもたちは、私の中の偏見を認識させ、鋭く分析させてくれる存在です。子育ての中で学んだのが、いかなる場合でもリーダーは恩着せがましい考え方をすべきではないということ。そしてタスクを柔軟にこなし、後に続く世代や女性たちにその背中を見せるべきだということです。一方で、(リーダーになるために)女性たちも頑張りすぎたり、自分に厳しくなるのをやめなければなりません。社会も女性たちも、双方がオープンで成熟することこそが、より多くの女性リーダーが活躍し続ける秘策となり得るのです」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

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