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国会議員秘書からの転身。「遅く咲くのは枯れぬ花」【それぞれの更年期】

  • 2025.6.25

外では元気を装い帰宅したらぐったり

「あなた、今の生活を変えないともっと大きな病気になるよ」と医師から言われた。国会議員の秘書として勤務し、私生活では子どもの通う学校のPTA役員として多忙を極めていた。国会議事堂の地下通路を歩いているときに目まいがし、原因不明の高熱、そして腎盂炎に。
 
森下ゆり子さん、45歳のころだった。
 
「忙しいだけでなく、ホルモンバランスの変わり目でもあったのでしょうね。40代って無理ができるんですよね。だから外ではいたって元気を装って、帰宅したらぐったり。家の片付けもままならず、お料理も思うようにできませんでした。でも、(仕事の付き合いでの)二日酔いでも息子のお弁当だけはなんとか作りました。休めるのは寝るときだけ」
 
本来、部屋が片付いているのが好きなゆり子さんだったので、「夫から、なんで最近散らかってるの?って言われて、片付けができない自分が嫌になって落ち込みました」
 
小・中・高校と皆勤賞だったくらい子どもの頃から健康だった。周りからは明るく朗らかと見られていた。いつも太陽の下にいる人、というイメージ。
だから、元気でない自分、落ち込んでいる自分に戸惑った。
 
「生活を変えるには仕事を辞めるほかないとわかっていたのですが、簡単にはできませんよね。それが、『ああ、仕事を辞めたいなあ』って願っていたら、幸か不幸か担当していた議員の先生が落選されて……」
 
責任感の強いゆり子さんは秘書の仕事を辞することができた。

一生できる仕事植物療法との出合い

退職して時間ができたので、以前から興味のあった植物療法を学び始める。
 
「PTA役員は続けていました。PTAって無償の仕事なので、自分が元気で輝いていないと誰もついてきてくださらないでしょ。だから本当に健康になるために植物療法を実践し始めていたんです」
 
次第に、自分だけでなく周りの人の心身の健康を整えることを一生の仕事にできればと思うようになり、本格的に植物療法を学ぶことを決める。ルボアフィトテラピースクールに3年通い、植物療法士のディプロマを取得する。
2017年、53歳でルボアフィトテラピースクールの講師を務めるように。そこで、思春期、妊娠、出産、更年期の悩みを抱える幅広い年代の女性たちと出会ってきた。
 
「植物療法を必要としている人は、どこか不調のある方もいますよね。私も、ずっと元気なままだったら、皆さんの気持ちがわからなかったと思います」
 
大変だったが、実際に心身の不調を経験したことで、植物療法士として、不調に悩む人たちの気持ちに寄り添えるようになった。
 
「私の場合、更年期の症状を緩和してくれたのは、精神的にはバラの香り、そして安眠を促してくれるメリッサのハーブティーと活力をくれる高麗人参のエキスでした」
 
現在も、アロマやハーブを日常生活で自分や家族の心身のケアに使い、常に助けてもらっているという。

「このセントジョンズワートのチンキは、ティースプーン1杯をコップ1杯の水に入れて飲みます。私は、悲しいときや深く落ち込んだときなど、精神的にストレスがかかったときに飲みますね。気持ちを晴らしてくれます」

年を重ねるのは怖くない

「もう十分に大人なのに、あんな大人になりたいって憧れてしまう、そんな素敵な年上の女性たちに出会えたので、年を重ねるのが怖くなくなりましたね」
 
2012年から、「いくつになっても知的でエレガントな女性」、伊藤緋紗子さんが主催する「フランス文化を学ぶ会」に通っている。それまでは、やはり「更年期になったら女性らしさを失うのではないか」という不安感もあったという。
 
「でも、年を取ったら女はおしまい、ってことはないんですよね。フランスでは年を重ねて醸し出される女性の奥深さに美しさを見出します。日本ではまだまだ、若い女性崇拝ですが、日本にもそれぞれに美しく、大人の女の自信を持って生きてらっしゃる年上の女性がたくさんいらっしゃるんですよね」
 
伊藤緋紗子さんからは、緋紗子さんより年上の素晴らしい女性とのエピソードを聞くこともしばしばだという。
 
「自分なんてひよっこだなあと思いますよ」
 
この連載のサブタイトルの「The change of life」を見ながら、「まさに、『The change of life』。
着物コレクターの池田重子さんの著書に『遅く咲くのは枯れぬ花』があるのですが、女性は50歳ごろの変化で花開いていくようですね」

更年期は点では終わらない

植物療法の講師を始めてからは、講義中に学びのためのハーブティーを受講生の方に出していた。
その度にゆり子さんもたっぷり飲んでいた。しかし、コロナ禍に入ったことでオンライン講義になり、ハーブティーの摂取量が減ると、更年期の不調が戻ってきたという。
 
「コロナ期間中は外出もしづらかったので、ボクシングジムにも行かなくなったせいもあるでしょうね。人の体は使わないといけないと痛感しました」
 
不調ではないが、閉経が近づいたころには、もう一人子どもが欲しくなった。
 
「二人目を生んでおけばよかったってすごく後悔したんです。一人と夫婦で決めて、問題なく受け入れてきたし、年齢的に出産なんてしたら肉体的には負担なのに。でもしばらくしたら、そんな後悔もなくなりました。閉経前はとくにホルモンバランスの変化で精神的に揺れるんでしょうね」
 
もちろん閉経後に更年期がすっぱりと終わるわけではない。さらに年を重ねていくと、思いもよらなかった出来事と出合い、心境にもさらなる変化が訪れる。数年前、同居する母のレビー小体型認知症と姉の乳がんがほぼ同時に発覚した。
 
そして昨年は、これから付き合いを深めていくのを楽しみにしていた人の急逝。
 
「とてもお洒落な母だったのに、これまでとは違ってしまって、寂しくなったりもします。同じ年齢の方が亡くなったのもすごくショックでした。でもすべて受け入れていくしかないし、そこから多くを学ばせてもらいました。私が母や姉や出会った方々にできることもたくさんありますから。おかげさまで姉は回復しています」
 
今は目下、断捨離中だという。
「何を捨てるか捨てないか、断捨離って体力も気力もいるんですよね。だから今のうちにやっておこうと思って。ものを減らしてバラを飾れる空間にしておきたいです」
 
身辺を整えながらも、新たに中国茶も学びたいという好奇心溢れるゆり子さん。The change of lifeでますます輝いていく大人の女性だ。

中国茶のほかにも、ゆり子さんがおすすめしてくれたのがチェストベリーのお茶。女性ホルモンのバランスを整え、更年期のあらゆる不調を緩和してくれる。
「授業で生徒さんにも試飲してもらっていましたが、そのときは私も調子がよかったですね。ハーブの効能はもちろんですが、お茶を楽しむ時間そのものがとても大切です」。
お茶やバラの香りは、自分だけでなく周りの人にも癒やしをくれる、ゆり子さんにとって欠かせないもの。

〜私を支えるもの〜

文筆家の伊藤緋紗子さんプロデュースのダマスクローズの精油が配合された『ネ・ラ・ローズ』を日ごろから愛用している。
「私の更年期を支えてくれたのは、このローズオイルや年上の女性との出会いです」。バラを欠かすことのないゆり子さん。テラスではバラを栽培し、室内にはバラの絵や写真を飾っている。

50代になったときに、できるだけ年齢にそぐわないことをしたいと思い、キックボクシングジムに通うようになった。
「週1回、トレーナーをつけてパーソナルトレーニングをしていますが、更年期の心身の健康に運動は欠かせませんね」

「抹茶、煎茶、英国紅茶、中国茶などが好きなので、お茶を飲む時間にとても癒やされます」。
ほかにも、お香を焚いたり、絵や陶磁器などを飾ったり、好きなものを暮らしの中に取り入れることを大切にしている。

撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里
 
※大人のおしゃれ手帖2025年6月号から抜粋
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