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まともな人なら「新幹線の激遅フリーWi-Fi」は使わない…車両内でアクセスしてはいけない「三大サイト」

  • 2025.6.16

フリーWi-Fiを利用する際には注意が必要だ。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「無料で誰でも利用できるWi-Fiサービスはセキュリティに問題があるため、氏名や住所、クレジットカード情報などを入力するサイトにアクセスしないほうがいい」という――。

新幹線
※写真はイメージです
イライラさせられるだけで使い物にならない

新幹線での長距離移動中、スマホの“ギガ節約”をするためにはWi-Fiの活用が不可欠だ。そのため、JR各社は「Shinkansen Free Wi-Fi」「JR-EAST FREE Wi-Fi」といった無料Wi-Fiサービスを提供している。メールアドレスやSNSアカウントで認証すれば、誰でも利用することができる。

しかし、通信速度があまりに遅く、使い物にならないことは多くの方が感じている通りだ。1回の接続がわずか30分と短い上、そもそも重すぎて見たいページも満足に読み込めない。「新幹線 Wi-Fi」で検索すると、「遅い」「繋がらない」「ゴミ」などが出てくるレベルだ。

JR東日本が提供するJR-EAST FREE Wi-Fi
JR東日本が提供するJR-EAST FREE Wi-Fi

これは、携帯電話と同じ電波を利用していて通信量に限りがあり、接続端末数や電波状況によって大きく左右されるためだ。トンネル・山間部で切れてしまうことも多く、その間の利用は潔く諦めるしかない。

ビジネスパーソン向けサービスもあるが…

東海道・山陽新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」7号車では、Webミーティングや携帯電話での通話などもできるビジネスパーソン向け「S Work車両」サービスを導入している。

7号車とグリーン車の8号車で利用できる「S Wi-Fi for Biz」というフリーWi-Fiもあり、“Shinkansen_Free_Wi-Fiの約2倍の通信容量”をうたっている。しかし2倍となっても使い物にならないのは同じだ。

利用する上での注意事項を見ると、利用する人数によって通信が遅くなる、または接続しづらくなる可能性があること、通信容量が限られていることが明記されている。そのため、OSのアップデートやアプリのダウンロードなどは制限される可能性があるという。

東海道新幹線は、年間約1億6000万人が利用する日本屈指の交通インフラだ。せめてビジネスパーソン向けをうたう車両では、もう少しまともに使えるフリーWi-Fiを用意するべきではないだろうか。

フリーWi-Fiが姿を消していった理由

そもそも、日本国内を見渡すと、フリーWi-Fiは次々に終了している。2021年には都営バスの「Toei Bus Free Wi-Fi」が終了。2022年にセブン&アイグループの「7SPOT」、ファミリーマートの「Famima_Wi-Fi」、東京メトロの「Metro_Free_Wi-Fi」(車両内)、東武鉄道の「TOBU FREE Wi-Fi」などが終了し、2024年にも小田急電鉄の小田急ロマンスカーの「odakyu Free Wi-Fi」が終了している。

フリーWi-Fiが続々と整備されていたのは、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、訪日外国人観光客向けに進められていた側面がある。ところが東京オリンピックはコロナ禍の影響で約1年延期したうえ、無観客開催となった。

各社にとって、想定していた需要が消えたこと、コロナ禍で事業へのダメージが大きかったことで、フリーWi-Fiにコストを掛け続ける余裕がなくなり、終了につながったのだろう。

同時に、都市圏で急速に進んだ5Gの普及により、フリーWi-Fiの必要性が下がったことも後押ししたと考えられる。

フリーWi-Fiのマーク
※画像はイメージです
「フリーWi-Fi後進国」の汚名返上なるか

しかし、現在はご存じの通り、インバウンド需要は復活している。観光庁の訪日外国人旅行者を対象にとったアンケート(2023年11月~2024年2月調査)によると、旅行中に困ったことは、「ごみ箱の少なさ」(30.1%)、「施設等スタッフとのコミュニケーション」(22.5%)などが多かったが、「無料公衆無線LAN(フリーWi-Fi)環境」という回答も9.6%と約1割いる結果に。

過去にも同様の調査をしており、フリーWi-Fi環境に対する不満は2018年度では18.7%と約2割もいたが、2019年度は11.0%まで減少し、そこからさらに微減した形だ。

日本はもともと、フリーWi-Fiの設置が海外の先進国と比べて少ないと言われている。導入コストや維持費がかかるため、自治体や団体などによっては設置できていないところも少なくない。

SIMカードやプリペイドSIM、eSIMなど複数の選択肢があるものの、外国人観光客にとってフリーWi-Fiは今でも利用率が高い大切な手段なのだ。その他、「5Gがつながる場所が少ない」という不満もあるようだ。

コロナ禍が明けて外国人観光客は急増しているものの、先ほど挙げたように一部の公共交通やコンビニではフリーWi-Fiが使えなくなっている。代替するはずの5Gも、国内全域に十分に行き渡ったとは言いづらい状況だ。需要が高まっている今こそ、国を挙げてフリーWi-Fiをもっと充実させたり、5Gエリアの拡大に力を入れたりするべきではないのだろうか。

偽Wi-Fiアクセスポイントで個人情報を窃取

インフラとしてニーズがあるフリーWi-Fiだが、利用にはさまざまなリスクがあり、実際に事件になっている。

オーストラリアでは2024年、空港や国内線の機内に偽のフリーWi-Fiアクセスポイントを設置して他人の個人情報を盗んだとして、42歳の男が逮捕された。

男は空港や機内で提供されているフリーWi-Fiアクセスポイントとよく似たSSIDの偽のWi-Fiアクセスポイントを設置。利用者はダミーページに誘導され、メールアドレスやSNSのID、パスワードなどを入力させられてしまった。情報は男のデバイスに保存され、個人情報にアクセスするために使用されたと見られている。

事件を受けて、オーストラリア連邦警察は、フリーWi-Fiに安易にアクセスすることを控えるよう警告を発している。

日本国内でも今年4月、フリーWi-Fiではないが、偽基地局(IMSIキャッチャー)周辺の電波を妨害し、ユーザーの端末を圏外にして、偽基地局が発信するGSM(2G)通信をつかませる手口が東京都内や大阪市などで見られ、話題となった。このときは、詐欺SMSを強制的に送信される被害が確認されている。

新幹線の無料Wi-Fiはそもそも危ない

スマホの通信容量を節約するためにもうまく活用したいフリーWi-Fiだが、偽のアクセスポイントのほかにも注意点がある。

新幹線内では、パソコンを開いてメールのやりとりをするビジネスマンや、スマホでネットショッピングやSNSを楽しむ若者の姿を見かける。しかし、フリーWi-Fiを利用している場合、こうした何気ないネット利用に落とし穴があるのだ。

まず、Wi-Fiには通信を暗号化しているものとしていないものがあり、暗号化していないWi-Fiは第三者が通信内容を盗み見ることが可能となっている。利用する際には、ネットワーク名の横に鍵マークがある、暗号化されたWi-Fiを利用するようにしよう。

鍵マークが付いたWi-Fiの利用を推奨
鍵マークが付いたWi-Fiの利用を推奨

JRが提供する無料Wi-Fiは暗号化されていないため、JR東日本は利用ガイドで「セキュリティを必要とする通信をされる場合には、セキュリティの高いVPN(バーチャルプライベートネットワーク)や有料公衆無線LANサービスをご利用になる事をお勧めいたします。」としている。

メールやSNSのチェックは避けるべき

また、フリーWi-Fi利用中は、セキュリティが強化されている「https」から始まるサイトの閲覧のみにすること。そうでないサイトにスマホやPCでアクセスすると、サイト上部に「保護されていない通信」「接続は安全ではありません」といった警告が表示されるから見分けやすいはずだ。

https化されていないサイトの警告表示
https化されていないサイトの警告表示

クレジットカード情報、ID・パスワード等の個人情報の入力は避けよう。具体的にはインターネットバンキングやネット証券などの重要なサイトへのアクセス、ウェブサイトへのログインも避けたほうがいいだろう。

【図表1】フリーWi-Fiでアクセスしてはいけないサイト
編集部作成

このようなリスクを見ていくと、フリーWi-Fiはもうオワコンと思ってしまいそうだが、そうではない。災害時にWi-Fiを開放する公衆無線LANサービス「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」は、日本国内で相次ぐ災害時の活用に期待が集まっている。大規模野外イベントにおける通信インフラとして、「スターリンク」を活用したフリーWi-Fiも続々導入されており、期待がかかる。

だれもがスマホを持ち歩く今、フリーWi-Fiの需要は決してなくならず、社会的インフラとしての期待が高まっている。利用者は信頼できるアクセスポイントを選び、危険なサイトにはアクセスしない、といったリテラシーを持つことで、安全にフリーWi-Fiを活用していただければ幸いだ。

高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α文庫)ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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