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吉沢亮×横浜流星「お互い“弱さ”みたいなものを見せ合えた気がします」

  • 2025.6.15

天性の歌舞伎の才を磨き、人間国宝へと上り詰める主人公・喜久雄の生き様を描いた映画『国宝』。喜久雄役の吉沢亮さんと歌舞伎界の御曹司・俊介を演じた横浜流星さん。美しきおふたりに、今作と役者人生への想いを伺いました。

――今回、おふたりは歌舞伎俳優役を体現。美しさ、凄みに圧倒されました。本作に入る前はどのくらい歌舞伎や日本舞踊に親しんでいらしたのですか?

吉沢亮(以下、吉沢):歌舞伎は何回か観たことがあるくらいで日本舞踊は全く未経験でした。

横浜流星(以下、横浜):自分もです。日本人なのに、遠いものと感じていました。

吉沢:普段やっているお芝居とは種類が違うといいますか、僕らは「人間」を演じますけど、歌舞伎役者の皆さんは「芸」を見せている。映画の中でこれを自分はできるのだろうかという恐怖心がありました。

横浜:空手をやっていたので、舞踊の「型」はある程度つかめたんです。ただ、女形として柔らかさを表したり、役の人物として踊るのは難しくて、本当に試行錯誤しました。

吉沢:やればやるほど稽古が間に合わないことに気づいて青くなったり。

横浜:本当に!

吉沢:今回僕は1年半の稽古期間をいただきましたけど、歌舞伎役者の皆さんは子供の頃から鍛錬を重ねておられるので、1年半でどうにかなるレベルではないんですよね。それを十分承知の上で、それでも必死に食らいつく。その精神力や意地みたいなものがこの映画には必要だったかなと思います。

横浜:歌舞伎をよく知らなかったからこそ、もっと知りたい! と追い求めたし夢中になれたのかもしれないです。

――吉沢さんは喜久雄を、横浜さんは俊介を演じるうえで、どんなことを大切にされていたのでしょう?

吉沢:喜久雄の中にあるのはひたすら純粋な歌舞伎への愛情だと思いました。歌舞伎にのめり込むほど、周囲を不幸にしてしまったり、道を阻まれたりしますが、彼はただ歌舞伎を極めたいという想いで、それ以外のことが目に入らない。悪気はないんです。その純粋さみたいなものは大事にしました。

横浜:俊介は表向きはニコニコしていますが、心の内ではいろいろな感情が渦巻いて揺れている。その感情の出し引きみたいなものを大切にしたいと思いました。性格的には僕と正反対なので、横浜流星に戻った時に違和感を覚えることも意識していました。僕は重心を低く保ちたい人間ですが、彼は重心が高い。手応えをあまり感じないほうが俊介でいられるのかなと。

――喜久雄と俊介のように、おふたりの間でも「相手がいたから」というような想いはありましたか?

吉沢:僕はめちゃくちゃありました。一つの役に1年半も準備をかけるという経験が初めてだったんです。

横浜:なかなかないことだよね。

吉沢:ものすごく贅沢な時間でしたけど、それだけ長いと心が折れそうになることもあって。ふと「なんのためにこんなに稽古してるんだっけ?」なんて思ってしまったり(笑)。

横浜:(笑)

吉沢:腐ってしまいそうな瞬間もあったのですが、流星の「髪の毛一本までも歌舞伎役者になってやる!」という気迫がビシビシ伝わってきて、負けてはいられない、とすごく刺激をもらいました。流星がいなかったらここまでやれなかったと思う。

横浜:僕にとっても吉沢くんの存在は大きかったです。お互い「弱さ」みたいなものを見せ合えた気がしますし、吉沢くんのほうがやらなければいけない演目が多くて、大変さを近くで見ていたので、僕としては少しでも寄り添えたらという気持ちもありました。

吉沢:同じ演目を同じ先生に同じように習っていても、不思議と演じる人によって魅せ方が変わるんですよね。

横浜:吉沢くんがすごく色気があるように踊られていたから、僕は可愛らしく華やかに、大胆に踊ろうと思いました。俊介の踊りのヒントをくれたという意味でも、吉沢くんには感謝しています。

――李監督は粘り強い演出が有名です。歌舞伎の場面もあらゆる角度から撮っていて、相当大変だったのではないでしょうか?

吉沢:そうですね。完成作を観ると、エンタメとしての面白さが詰まっていていいなと思いましたけど、撮影では何度も撮るので。

横浜:(何度も)やっていたね(笑)。

吉沢:「二人道成寺」も途中、中腰で動き回らなくてはいけなかったり、一回踊ると上がった息が全然収まらないくらい体力的にはキツいんです。

横浜:あれはやばかった。

吉沢:この一瞬、いいものが撮れてさえいればあとはどうなってもいいくらいの気概でやっていました。でも、別の演目ではある時監督から「上手にできるのはわかったから、もうちょっと喜久雄の気持ちでやって」と言われて。それも本番直前に急に言われるんです。

横浜:それは……。

吉沢:ここまで美しいものを研究して積み上げてきたのに、全然違う角度から芝居してってどういうこと? と混乱しながらも、僕も役者なのでその気になって、感情を噴き出し、涙やら汗やらを流れるままやり切ったらOKが出たんです。当時はよく理解できなかったけど、作品を観て、これが歌舞伎役者の方ではなく、我々がこの役をやる意味だったのかなと感じました。

横浜:李監督とは『流浪の月』でご一緒したのですが、その時は監督の求めているものがわからないまま終わったように感じていたんです。今回は一緒に悩んでくださり、俊介を作ることができた気がします。

吉沢:3か月の撮影期間は体力的にも精神的にも苦しかったですが、監督が信頼してくださって、自分が全力を出しても届かない、その一歩先を模索してくださいました。愛ある現場でした。

横浜:ここまで妥協せず、魂を込めて向き合ってくださる方もなかなかいないので、苦しさもありつつ、幸せのほうが大きかったです。

――「歌舞伎役者とは」「役者とは」が問われるような物語でした。彼らのような生き方をどう思われました?

吉沢:僕も15歳でこの世界に入り、ここしか知らないので、他のことはできないですけど、喜久雄のようにいろいろなものを犠牲にして芸に身を捧げるのは苦しいだろうし、自分にはできなそうだなと思いました。

横浜:でも、喜久雄ほどではないにしても、僕らも仕事のために何かしら切り捨ててきたものはあるんじゃない? 自分は格闘家の道を捨ててきていますし、喜久雄に対しては憧れもあります。彼のように美しい景色を見るためには、ただただ芝居に向き合い努力するのみだなと励みにもなりました。

――この号は「恋と運命」特集なのですが、役との出会いに運命は感じますか?

吉沢:運命か……難しいな。どう?

横浜:作品や役にご縁は感じますけど、運命はよくわからないです。どの選択も自分で決めていますし……。

吉沢:『国宝』に関していえば、李監督の『怒り』のオーディションを受けて、監督に関心を持ってもらえなくて悔しい思いをしました。その体験があったので、「運命」というよりは、これまでの役者人生全てをぶつけて、集大成を見せるべきだと思いました。

横浜:毎回、代表作を作るつもりで臨んでいますけど、『国宝』は最高傑作になったと思います。

吉沢:完成作を観て、こんなとんでもないものを作れるんだと嬉しくなりました。この熱を感じていただけたら!

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