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「さすがNHK」「民放では無理か…」“圧倒的リアリティを追求した脚本”に称賛の嵐…「こんなドラマ初めて」視聴者を虜にしたワケ

  • 2025.7.7

ドラマの中には、人と人とのつながりを描いた名作があります。今回は、そんな中から“至高のNHKドラマ10”を5本セレクトしました。本記事ではその第2弾として、ドラマ『シングルマザーズ』(NHK)をご紹介します。夫のDVから逃れ、幼い息子と共に新たな土地で生き直そうとする母が、支え合いの中で見つけた再出発の道とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

逃げるようにたどり着いた海辺の町での再出発

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(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):『シングルマザーズ』(NHK)
  • 放送期間:2012年10月23日~12月11日
  • 出演: 沢口靖子(上村直 役)

主人公の直(沢口靖子)は夫のDVから逃れ、幼い息子・涼太(田中奏生)とともに海辺の町へたどり着きました。手を差し伸べてくれたのは、地元で働く久美(北斗晶)。老夫婦が営むカレー店“鴎夢亭”にも迎え入れられ、直は少しずつ働き始めます。息子もその温かい空間になじみ、笑顔を見せるようになっていきました。

けれど、過去の傷はそう簡単に癒えません。パート先でフラッシュバックに襲われた直は解雇されてしまいます。そんなとき出会ったのが、シングルマザー支援団体“ひとりママネット”を立ち上げた高坂燈子(高畑淳子)。彼女の存在と“鴎夢亭”の優しさに支えられながら、直は簿記やパソコンの資格取得を目指し、生活の再建へと動き出します。

その後、直は“ひとりママネット”の事務局長となり、他の母親たちの自立を後押しするようになるのですが――。

名女優“圧巻の快演”に称賛の声

『シングルマザーズ』で主人公・直を演じた沢口靖子さんにとって、この役は特別なものだそうです。役作りでは、DVやフラッシュバック、シングルマザーの現実に関する資料や体験談を読み、実際に当事者の声にも耳を傾けたといいます。

実際にその立場にいらっしゃる方がご覧になった時に、ウソの表現だと思われないように、失礼のないようにと心して演じたつもりです。ただ、そんな思いが強すぎて自分を追い詰めて役作りをしてしまったために、フラッシュバックのシーンなどを演じていると私自身が大きな精神的負担を感じて、ストレスから急性胃炎を起こしてしまったこともありました
出典:ドラマ10 シングルマザーズ(2012) 沢口靖子インタビュー NHKアーカイブス

そんな沢口さんがこの作品を通して伝えたかった思い――それは、孤独や痛みの中にも必ず希望があるということでした。舞台からドラマへ――。主人公・直役を演じ抜いた沢口さんだからこそ届けることのできる、心に響くメッセージです。

SNSでも「沢口靖子はじめキャストの演技が素晴らしかった」「沢口靖子さん素晴らしい」「説得力のある芝居」と絶賛の声が続出。視聴者の心を揺さぶるその演技は、作品の持つテーマをより深く、より鮮明に伝える力となりました。沢口さんの真摯な姿勢と表現力が、多くの人々に勇気と感動を与えていることは間違いありません。

「こんなドラマ初めて」視聴者を虜にしたワケ

このドラマの原作は、劇作家・永井愛さんによる同名の舞台作品です。2011年に劇団“二兎社”によって初演され、永井さん自身が演出も手がけました。児童扶養手当の削減や母子加算の廃止が社会問題となる中、ひとり親家庭の厳しい現実を正面から描いた、社会派の戯曲です。「こんなドラマ初めて」といった声が寄せられるほど、一線を画す作品となった本作ですが、それは一体なぜなのか?

それは、キャストや制作陣がこの作品に真摯に向き合い、登場人物一人ひとりの背景や感情を丁寧に描き出したからです。現実に根ざしたセリフや演出が、視聴者の心に深く刺さり、単なるフィクションにとどまらないリアリティを生み出しました。

NHKが当時公表したデータによれば、2011年度の時点でシングルマザーの数は全国でおよそ124万人でした。母子世帯の平均年間収入は291万円で、これは子どもがいる全世帯の平均収入の半分以下という厳しい実情を示しています。『シングルマザーズ』は、そうした数字の向こうにある“暮らしの声”を丁寧に、かつ現実的に描いています。

また、DVの描写についてもリアルに表現しており、あまりの生々しさにトラウマになったという人も。しかし、そんなリアルな脚本だからこそ多くの視聴者は称賛し、特に本作のような作品がNHKには多いと感じている視聴者からは「さすがNHK」「民放では無理か…」といった声も寄せられました。さらに、「具体的な対応の仕方もちゃんと描いていて凄い」「ドラマ構成と演出のギッシリ感と沢口靖子の演技が素晴らしい」と称賛の声で溢れています。

本作は貧困や非正規雇用、元夫への恐怖といった現実に向き合いながらも、互いに支え合い前へ進もうとする女性たちの姿を力強く描いた名作です。


※記事は執筆時点の情報です