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「全人類観なきゃいけない」5年前の“新型コロナウイルス”集団感染が実写化…豪華俳優陣による“事実に基づく”新作映画

  • 2025.6.20

2020年、世界がひっくり返るほどの、感染力の強い未知のウイルスが私たちに襲いかかった。新型コロナウイルスと呼ばれる、得体の知れないウイルスによる感染症を身近に感じるきっかけとなったのは、横浜に停泊した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」の中で起きた集団感染のニュース。その時はまだまだ他人事で、中で何が起きていたのかよくわからなかった。「日本にウイルスを入れてはいけない」という指示から始まった、この船での大変な状況を、つまびらかに伝えてくれる映画が誕生した。どのような人たちが、命がけで人名救助活動をしてくれていたのか。映画『フロントライン』は、今を生きる私たちが観るべき作品だ。 ※この記事には一部ネタバレがあります。

映画『フロントライン』

2020年2月、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜に入港した。その船の中で、日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生。当時、日本にはウイルス災害専門の機関は存在せず、船内の救命活動に駆り出されたのは、災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」だった。彼らは地震や洪水といった災害のスペシャリストではあったが、未知のウイルスに対応する経験を持たない中、乗船して患者を治療してほしいと依頼される。

DMAT指揮官の結城(小栗旬)と、厚労省の立松(松坂桃李)は、船外で対応にあたり、医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)は、船内に乗り込むことに。船内で隊員を統括する仙道の下、直接患者と接して治療にあたる真田たち医療チームは、治療法不明の未知のウイルス相手に、自らの命を危険に晒しながらも、乗客全員を無事下船させるまで諦めずに戦い始める。

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーも、必死に乗客たちをサポートする中、TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの加熱報道が世論を煽り、医療スタッフの家族は“差別”にさらされる。それでも結城たちは、乗客の命を守り、全員がかけがえのない日常を取り戻すために、治療と受け入れ先探しに奔走する。

知られざるDMAT隊員の尊い活動

当時、Twitter(現X)上で、さまざまな憶測や誹謗中傷が飛び交ったことを覚えている。その中には、未知のウイルスに対応できる経験がなく、訓練もされていない医療チームが“フロントライン(最前線)”で救助活動に当たったことに対する批判の声もあった。今回、本作を観て知ったことで最も驚いたのは、DMATの隊員は、普段はそれぞれが所属する病院で働いている医師や看護師で、DMATの活動は病院の勤務時間以外に行うボランティアということだ。そのような尊い活動に勤しんでいるDMATを、知らないとはいえ批判する人がいたり、隊員の家族が“ばい菌”扱いされたりなど、理不尽な目に遭っていたことも、本作には描かれている。

本作を観た人たちからは、「今観るべき映画」「全人類観なきゃいけない」「胸が熱くなる」「最上級の感謝を伝えたい」といったコメントが上がっており、筆者と同じように、DMATや対策本部で対応にあたっていた人々の真実に感動する観客が続出している模様だ。

「船からコロナを日本に上陸させるな」という指示が国から出る中、仙道は何より乗客の命を優先すると結城に宣言する。船外でさまざまな調整をする結城は、隊員たちが差別に遭うことを心配し、いろいろと気を回すが、仙道の言葉を聞き、3.11の際に助けられなかった命があった苦い経験を思い出す。世間の目よりも命を救うことが最重要。厚労省の官僚である立松も、四角四面にやっていては現状を打破できないと、彼ならではの“根回し術”を発揮する。

同行した家族が未知のウイルスに感染したことで、不安に押しつぶされそうになっている乗客を励まし、温かく真摯な態度で支える羽鳥。言葉が通じない外国からの乗客に対して、羽鳥に通訳を頼みつつ、咳のひどい患者の飛沫を浴びながらも、自分の帰りを待っている愛する家族への想いを胸に、1人1人患者を治療していく真田。

心揺さぶる主要キャスト4人の熱演

小栗は、DMATの指揮官として多くの問題に立ち向かう結城を頼もしく熱演しており、彼が本作の“リーダー”にピッタリだと感じさせた。

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

窪塚は、外野が何を言おうが、命を救うためなら何でもやるという仙道を好演。旧知の仲である仙道と結城のやり取りから、長く友人関係にあるという窪塚と小栗の信頼の深さが伝わってくる。

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

松坂は、登場したばかりの時は、上から目線で、ちょっと感じの悪い官僚のように見えるが、実は温かい心を持ち、人助けをするために役人になったことがわかる立松を体現。非常に有能で、結城から頼られる存在になっていく立松を、本作を2度鑑賞して大好きになってしまった。

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

自分がコロナに感染することは怖いが仕方ない。でも、家族が差別に遭うのは耐え難い。そう結城に吐露する真田に扮する池松。人間味あふれる彼の声を聞き、当時はあまりにも知識がなく、何も知らなかったということを痛感した。

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

真実を知ることができる映画

マスコミの過熱報道によって情報が錯綜し、DMATの尊い活動が捻じ曲げられて伝わってしまったことが本作で描かれているが、徐々に報道に疑問を抱く上野を通して、当時の真実がしっかりと伝わってくる。上野を演じる桜井や、船の中で奮闘する羽鳥を演じる森の表現力も素晴らしい。

本作について書きたいことは山のようにあり、まだまだ書き足りない気持ちだが、前述のSNSのコメントの通り、今“観るべき映画”だと思うので、ぜひご自身の目で観て、真実を知ってほしい。綿密な取材による、事実に基づく物語の中に、隊員と観客のドラマチックなストーリーが綴られる、エンターテインメント作品としての魅力も盛り込まれた、社会性とエンタメのバランスが秀逸な、圧巻の傑作『フロントライン』は全国公開中だ。


映画『フロントライン』2025年6月13日(金)より上映中
出演:小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
監督:関根光才 脚本:増本淳
企画・脚本・プロデュース:増本淳
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
(C) 2025「フロントライン」製作委員会

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(C) 2025「フロントライン」製作委員会

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP