1. トップ
  2. “ある意味最強のエンタメ” ホラーコメディ漫画の『実写映画』グッと引き込む“圧倒的演技力”で魅了した若手女優

“ある意味最強のエンタメ” ホラーコメディ漫画の『実写映画』グッと引き込む“圧倒的演技力”で魅了した若手女優

  • 2025.6.18

6月6日より公開となった映画『見える子ちゃん』。

原作は泉朝樹の同名ホラーコメディ漫画だ。

ある日突然、霊が視えるようになった主人公のみこ(原菜乃華)。霊に対して、みこに立ち向かおうとしたり、はたまた祓おうとしたり、とするのだろうかと思いきや、彼女が選んだのは「霊を無視する」という意外な方法だった。

監督・脚本は『予告犯』、『忍びの国』などの監督作、『仄暗い水の底から』の脚本などを務める中村義洋氏だ。

視えないフリをすることで自分を守ろうとするが……

undefined
(C)SANKEI

霊が視えるのに視えないフリをするという時点でもうおもしろい。見えるからこそ、いろんなリアクションが起こせるわけだし、そこがホラーの醍醐味だと思っていた。だって視えないフリをするのなら、何も起こっていないということ。何も起こっていないなら物語は進まないのでは? という話だが、フリをしているだけで視えていることには変わりはない。

霊に憑りつかれて様子が変わってくる友人、妊娠中の担任に近づこうとする霊……霊にはいいものと悪いものがいて、人間に与える影響も変わってくる。霊に知識が少ないみこに、同級生の二階堂ユリア(なえなの)、権藤(山下幸輝)が助言を与えていく。

そして、視えないフリをすると言っても作中にはしっかりと幽霊の姿は登場する。ホラーコメディではあるが、怖くないというわけではない。どちらかというと、幽霊の姿はわりと怖い。グロテスクな姿に思わず目を閉じてしまいそうになる。おまけになんとなくそこにいる、というよりは「なぜ霊として現世にいるのか」という存在している理由もしっかり描かれているので幽霊の意志が感じられてさらに恐怖倍増。

クスッとできて、ゾッとする、ある意味、最強エンターテインメントが登場したと言える。

さまざまな表情をイキイキと演じる原菜乃華

undefined
(C)SANKEI

視えているの視えないフリをするという、作中でも演じるという難しさも感じられる役どころを演じるのが原菜乃華だ。もともと表情が豊かな役が多い原。『推しの子』ではコメディエンヌとしての片鱗を垣間見せていたが、本作では喜怒哀楽の全ての感情を振り切って表現。観ている者をゾッとさせるだけではなく、和ませる役割も果たしており、すばらしいみこだった。

映画オリジナルのキャラクターとなるのが山下幸輝演じる権藤昭生だ。ピシッとした独特の硬さもありつつ、そこはかとなく感じさせるポンコツっぽさが良い塩梅となっている。気がついたらみこのそばにいる。それが少しばかり不気味にも感じるが、頼まれていないのにみこの相談役となっているのがユニーク。ただ頼りになるかというと、やはりそこはかとないポンコツさが否めないのがキュートである。

そして、物語の後半のキーマンとなるのが、産休の荒井(堀田茜)の代わりに赴任してきた京本大我演じる、遠野善。気弱そうで、どこか自信なさげにおどおどしている様子が、この作品における不安感を加速させる。物語の終盤、さまざまな謎が解決したあとに善が見せる表情が、そこまでとは全く異なるものなのでぜひ注目してほしい。

「視えないフリをする」に頼らない丁寧な物語

どうしても「視えているのに視えないフリをする」という設定が珍しいのでそちらに意識が向いてしまうが、それぞれのエピソードがとても繊細。特に、みこが最初に視えてしまった霊にまつわるエピソードにはグッと来てしまった。

みこたちを悩ませる霊のエピソードもどこか物悲しさと息苦しさを感じるもの。どうして霊が存在するのか。彼らの存在理由が丁寧に説明することで恐怖と悲しみが入り混じる。さまざまな感情を揺さぶられたいという人はぜひ、映画館に足を運んでみてほしい。大画面で観たほうが恐怖も倍増するだろう。


※記事は執筆時点の情報です

ライター:ふくだりょうこ(Fukuda Ryoko)
うさぎと暮らすライター。シナリオやインタビュー、コラム、エッセイなどを中心に執筆。小説とお酒と音楽とドラマがあればだいたいご機嫌。