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「ここ10年の邦画の中で最高峰」「群を抜いて傑作」吉沢亮が“役者人生をかけて挑んだ”最高の新作映画『国宝』

  • 2025.6.17

吉沢亮が主演を務める、芸の道に人生を捧げた主人公の50年を描いた映画『国宝』が大きな反響を呼んでいる。吉沢は歌舞伎役者を演じるにあたって、共演の横浜流星と共に1年半の準備を経て、この役に臨んだという。その熱演ぶりはスクリーンを通して伝わってきて、観た人たちからは「ここ10年の邦画の中で最高峰」「今まで観た邦画の中で群を抜いて傑作」といった声がSNSに続々と上がっている。 ※この記事には一部ネタバレがあります。

映画『国宝』

吉田修一が3年間、歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた渾身作を李相日監督が映画化。これまで李監督は、『悪人』『怒り』と吉田の小説を映画化してきており、吉田からの信頼が厚い中、小説刊行から構想6年、見事な傑作映画を誕生させた。

任侠の一門に生まれた喜久雄(黒川想矢)は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、歌舞伎の世界へと飛び込む。そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介(越山敬達)と出会った喜久雄は、ライバルとして互いに高め合い、厳しい指導を受けながら、芸に青春を捧げていく。

成長し、一緒に舞台に立つことになった喜久雄(吉沢亮)と俊介(横浜流星)。正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる2人は、多くの出会いと別れを経験するが、やがて運命の歯車が大きく狂っていくことに……。

鳥肌が立つほど美しい吉沢亮

本作は、主人公の喜久雄が後に“人間国宝”に認定されることがあらかじめ、わかっている物語だが、その過程はあまりにもドラマチックで、何度もつらいことを経験し、挫折し、どん底に落ちる主人公の姿を見ていると、どのように着地するのか、ドキドキする気持ちが止まらず、175分間ずっと心を鷲づかみにされたままだった。

原作の喜久雄は“この世ならざる美貌”の持ち主だが、吉沢はその設定に非常にふさわしく、観客を釘付けにする力を持っていると感じた。SNSでも「瞬きするのさえもったいない」「美しさに全身鳥肌」といったコメントが見られ、筆者も呼吸するのを忘れていることが何度もあった。

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

任侠一家に生まれたにもかかわらず、“生まれながらの女形”と呼ばれて、歌舞伎界で駆け上がっていく喜久雄。半二郎も、芸のうえでは実の息子の俊介より優れていると思わずにはいられず、喜久雄に自分の代役を頼んだり、襲名させるのは喜久雄だと考えたりする。そんな父の決断に俊介が傷つく一方、いざという時は“血筋”が何より大事だという事実に苦悩する喜久雄。

吉沢と横浜は、苦楽を共にしながら成長し、同じ舞台に立つ親友でありライバルでもある2人を好演しているが、歌舞伎の演技もさることながら、内面の葛藤を秀逸に表現しているのが素晴らしく、喜久雄と俊介のどちらにも感情移入しながら見入った。

吉沢亮と横浜流星の努力の賜物

吉沢と横浜が演じる歌舞伎の演目は、本作の大きな見どころ。まるで「シネマ歌舞伎」を観ているかのような完成度で、映像美に圧倒された。ぜひ、ビッグスクリーンでの鑑賞をおすすめしたい。贅沢な気分を味わえ、本物の歌舞伎を堪能している気分になること請け合いだ。

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

特に、後半の『曾根崎心中』が圧巻で、喜久雄と俊介の人生を振り返って胸が詰まり、心が震えた。御曹司でありながら、喜久雄への劣等感を抱く俊介。歌舞伎一門の血が流れていないがために、どんなに芸を磨いても道が閉ざされ絶望する喜久雄。紆余曲折を経て、“人間国宝”になる喜久雄だが、その過程を体現する吉沢の演技は凄まじく、本年度の日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞は、ほぼ彼で決まりではないかと思わせる熱演ぶりだ。

いわゆる“お坊ちゃま”であり、何をしても憎めないけれど、人知れず苦痛を味わっている俊介を表現する横浜にも大いに引き付けられた。

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』は、吉沢と横浜の、1年半にも及ぶ歌舞伎の演技の練習を含め、血のにじむような準備と努力が、美しい作品へと昇華させているのだと思う。完成報告会での吉沢本人のコメントも紹介する。

どの作品も特別で、全力でやっていますが、この作品にかけた時間とエネルギー量は桁違いです。それだけのものを背負って現場に臨みました。確実に、今までの役者人生の集大成です。これまで培ったものをすべてぶつけた作品です。

出典:『国宝』完成報告会 | 東宝株式会社

SNSでも「将来名だたる邦画の名作に名を連ねるであろう作品」などと絶賛されており、映画館でも満席が続出している模様だ。

カンヌ国際映画祭に参加経験のある2人の新星俳優

歌舞伎役者を演じる渡辺謙、田中泯らの名演技も素晴らしい。さらに、喜久雄と俊介を取り巻く女性たちを演じる高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛らも、それぞれ重要なパートを担っているので注目してほしい。また、瀧内公美はキャスト表記に名前がなく、公開初日に本人がInstagramで出演を報告したことでも話題を呼んだが、彼女の印象的な登場シーンも必見だ。

ほかに、筆者が気になったのは、喜久雄と俊介の少年時代を好演した黒川想矢と越山敬達。2人も半年ほど歌舞伎の練習をして撮影に臨んだそうだが、初日舞台挨拶で吉沢は黒川を「色っぽすぎてやばい」と絶賛していた。黒川と越山は、2009年生まれの同い年だが、黒川は『怪物』で、越山は『ぼくのお日さま』で、それぞれカンヌ国際映画祭に参加している新星俳優だ。各作品の主人公を演じた2人は、『国宝』でも序盤に活躍しており、作品の魅力を押し上げている存在として、今後の活躍も大いに気になる。

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

“俳優・吉沢亮”の役者魂が全編からあふれている映画『国宝』は、全国東宝系にて公開中。


映画『国宝』2025年6月6日(金)より上映中
出演:吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯、渡辺謙
原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督:李相日 脚本:奥寺佐渡子
配給:東宝
公式サイト:https://kokuhou-movie.com/
(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

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(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP