「ウォッチズ＆ワンダーズ ジュネーブ 2025」から注目ウォッチを厳選。時計のトレンドは“感性”の時代へ

W&WG 2025に見る、ラグジュアリーウォッチの未来形

50を超えるラグジュアリーメゾンが一堂に会した、世界最大級の時計フェア「ウォッチズ＆ワンダーズ ジュネーブ（W&WG）2025」。今年は、単なるスペックやステータスを競う時代から、“時間”そのものに美意識を投影するアートピースとしての時計へ──そんな価値観の転換が色濃く映し出された。

テクニカルな誇示よりも、静かで本質的な進化を見せるメゾンが多数。なかでも、1930〜70年代の名作やヘリテージモデルを、現代的な感性で再構築する動きが目立った。ダイヤルのカラーも多様化し、ピンク、ブルー、ディープレッドなど、個性を象徴するカラーが存在感を放つ。これはZ世代や若年層のコレクターへの意識的なアプローチといえるかもしれない。

また、複雑機構のミニマルな表現も印象的。超薄型ムーブメントはさらに進化し、持つ人だけがその奥行きを知る“静かな贅沢”が、知的なウォッチラバーの支持を集めている。

さらに、ジュエリーとウォッチの垣根を越えた融合も進化。両分野における専門技術を驚きの手法で融合し、メゾンのサヴォワールフェールが光る“時を告げるジュエリー”は、エモーショナルな魅力とともに、未来のジュエリーウォッチの新たなあり方を提案する。

2025年のW&WGは、ウォッチ界の成熟と感性の深化を改めて印象づけるものとなった。ここでは、『VOGUE JAPAN』編集部が厳選した、9ブランドによる今年注目すべきタイムピースを紹介しよう。

CHANEL

「J12」25周年を祝う、マットブルーの限定モデル

セラミックをラグジュアリーの領域へと引き上げ、ウォッチメイキングの世界に革命をもたらしたシャネル（CHANEL）のアイコンウォッチ「J 12」が、誕生25周年を迎えた。記念すべき節目の年に登場したのが、5年の歳月をかけて開発されたマットブルー セラミックを用いた「J 12 BLEU」だ。ダイヤルのインデックスにはダイヤモンドを配し、静謐なエレガンスをまとった一本。黒を感じさせる深いブルーが、手元に知性と品格を香らせる。シースルーバックからのぞく円形ローターも印象的。

シャネルの美学を象徴する“コスメティック”がダイアルに

マドモアゼル シャネルがアトリエで常に身に纏っていた“ピンクッション”に着想を得たドーム形ガラスを纏った円形ダイヤル。その上には、メゾンの美学を象徴する“コスメティック”のモチーフが精緻に描かれた。リップスティック、アイシャドウ、ネイルポリッシュ、チーク、そしてパールのチェーンジュエリー…まるで心ときめくドレッサーの上をのぞき込んだよう。金細工、細密画、エナメルなど、メゾンが誇るサヴォワールフェールを集結し、チャーミングなミニチュアの物語が、ダイアルの上に広がる。

問い合わせ先／シャネル カスタマーケア 0120-525-519

https://www.chanel.com/

BVLGARI

蛇の本質を抽出した彫刻的シルエット

ブルガリ（BVLGARI）を象徴するアイコン「セルペンティ」を、大胆かつ前衛的に再解釈した「セルペンティ エテルナ」。ケースと一体化したバングルタイプのタイムピースは、しなやかな蛇の動きを抽象的に捉え、ダイナミックかつ流麗な彫刻的フォルムへと昇華。蛇の鱗を模したブレスレットには、大小のダイヤモンドがスノーセッティングであしらわれ、ラグジュアリーな輝きを放つ。独自のクラスプ構造が優雅にフィット感を実現し、ブレスレットの内側には六角形のうろこ模様が刻まれるなど、細部にまでこだわりが光る。

厚さわずか1.85mm、世界最薄のトゥールビヨン

ブルガリが誇る超薄型ウォッチの集大成「オクト フィニッシモ ウルトラ トゥールビヨン」が登場。厚さわずか1.85mmという驚異的なスペックで、世界最薄のトゥールビヨンウォッチの新記録を樹立した。手巻きムーブメントBVF900を搭載し、構造美と機能美を極限まで追求。ローマ建築から着想を得たデザインに、洗練されたスケルトン構造が融合し、ムーブメントの細部の美しさが際立つ。技術と芸術が融合した、まさにブルガリの革新を象徴する1本だ。

問い合わせ先／ブルガリ・ジャパン 0120-030-142

https://www.bulgari.com/ja-jp/

VAN CLEEF & ARPELS

ロマンティックな世界観と匠の技の見事なマリアージュ

ヴァン クリーフ＆アーペル（VAN CLEEF & ARPELS）の「レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ」は、恋人たちの出逢いを詩情豊かに描いたロマンティックなタイムピース。舞台は、19世紀のパリ郊外に広がる屋外ダンスカフェ“ギャンゲット”。正午と真夜中にふたりが口づけを交わす情景が、ボタンひとつで何度でもよみがえる。4年の歳月をかけて開発された新ムーブメントは、薄型ケースに巧みに収められ、恋人たちの自然な動きを繊細に再現。メゾン独自のダブルレトログラード機構では、2つの星が時間を示し、段差を生かした文字盤とグリザイユエナメルが幻想的な奥行きを生み出す。

密やかに時を纏う。名作「カデナ」が華やかに刷新

1935年に誕生したヴァン クリーフ&アーペルの名作「カデナ ウォッチ」を、モダンな感性で再解釈。南京錠を思わせる独創的なケースデザインに、傾斜した文字盤が密やかに時を告げる──そんな優雅な所作を引き出すコンセプトは、発売当時、女性たちの心を魅了した。今回の最新作では、イエローゴールドのケースにダイヤモンドをスノーセッティングで敷き詰め、プリンセスカットのサファイアを一列に配した華やかなデザインに。ダイヤルやクラスプにも輝きが宿り、ジュエリーとしての存在感も際立つ。しなやかに手首に沿うダブルスネークチェーンとのコンビネーションが、大胆さとタイムレスな魅力を奏でる。

問い合わせ先／ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク 0120-10-1906

https://www.vancleefarpels.com/

CARTIER

大胆な螺旋モチーフは、まるでモダンアートのよう

フランス語で“編み込み”を表現するカルティエ（CARTIER）「トレサージュ ドゥ カルティエ」。レクタンギュラーのケースを包み込むように、螺旋状の装飾が立体的に絡み合うデザインは、手首に纏う彫刻のような鮮烈なインパクトを残す。ダイヤルにはスノーセッティングでダイヤモンドを贅沢に敷き詰め、螺旋モチーフにはノーブルな輝きを放つサファイアがグラデーションであしらわれた。ジュエリーメゾンならではの美意識と、ウォッチメイキングの精緻な技を大胆に融合した、メゾンの真骨頂とも言えるマスターピース。

洗練を極めたミニマルな造形美

毎年、歴史的名作を現代の技術で蘇らせる「カルティエ プリヴェ」。2025年の主役は、ジャンピングアワー機構を搭載した「タンク ア ギシェ」だ。ダイアルの大部分をメタルケースで覆い、“ギシェ＝小窓”から時刻を表示するユニークな設計は1928年、鉄道や自動車が普及する中で“瞬時に時間を読む”というニーズに応え誕生したもの。今回登場したイエローゴールドモデルは、その初代のデザインを踏襲している。装飾を極限まで削ぎ落とし、時をミニマルに美しく表現したデザインが、コレクター心を刺激する。

問い合わせ先／カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-1847-00

https://www.cartier.jp/

ROLEX

イエローゴールドの輝きで魅せる「パーペチュアル 1908」最新作

ロレックス（ROLEX）がブランド名を商標登録した1908年。その名を冠した「パーペチュアル 1908」に、初のメタルブレスレットモデルが登場した。イエローゴールドのケースに組み合わされた7列リンクのブレスレット“セッティモ”が、しなやかな装着感を実現。ポリッシュ仕上げが施され、手元にジュエリーのような華やかな輝きを宿す。39mmのケースには、特徴的な時針やスモールセコンドを配したクラシカルなダイアルを採用。大胆さと繊細さ、伝統と革新が響き合う、ロレックスの新たな象徴だ。

神秘的な夕暮れの輝きをグラデーションにのせて

ロレックスの「オイスター パーペチュアル デイジャスト31」の新作は、夕陽を思わせるレッドオンブレダイアルがひときわ印象的。太陽が地平線に沈む瞬間のように、中央の赤から外周の黒へと移ろうグラデーションが、光と影の美しいコントラストを描き出す。ケースとブレスレットはイエローゴールド製。ベゼルには46個、アワーインデックスには10個のダイヤモンドがあしらわれ、ダイアルの色彩を際立たせている。ムーブメントには高精度を誇る自社製キャリバー2236を搭載。華やかさ品格を併せ持つ、ロレックスの美意識を体現した一本だ。

問い合わせ先／日本ロレックス 0120-929-570

https://www.rolex.com/ja

HERMÈS

時間から解き放たれる詩的な感覚を体験

2024年に発表したエルメス（HERMÈS）の「カット」シリーズに、2025年新作として“タン シュスポンデュ”機構を搭載したモデルが仲間入り。時分針を一時的に停止させるこの機構は、“時間”の束縛から解放されるような詩的な体験をもたらす。ボタン操作で針がダイヤルの特定位置に静止し、まるで時の流れを自在に操るような幻想を演出。サテン仕上げのピンクゴールドケースに、深みのあるレッドダイヤルを合わせた限定モデルは、機能美と哲学的な問いかけを内包する、エルメスらしいマスターピース。

旅する時間のオブジェ。タイムピースの新たな形

エルメスのアイコン「シェーヌ・ダンクル」のアンカーチェーンのコマを再解釈して誕生した「マイヨン リーブル」に、ブローチ時計が登場。古くから男性の装身具として愛されてきたブローチ時計に着想を得たピースは、“旅する時間のオブジェ”と称したくなる詩的な佇まいが魅力。単体で纏うのはもちろん、付属のレザーコードを通してペンダントとしても楽しめる。メゾンのレザークラフツマンシップへの敬意を込めた、気品と驚きの遊び心が共鳴する逸品だ。

問い合わせ先／エルメスジャポン 03-3569-3300

https://www.hermes.com/

GRAND SEIKO

春の儚く美しい情景“桜隠し”をダイルに

1967年誕生した「62GS」の意匠を受け継ぐ、グランドセイコー（GRAND SEIKO）の小型メカニカルモデルが登場。30mmのコンパクトなケースには、自動巻きキャリバー「9S27」を搭載し、厚さ10.5mmのスリムな設計を実現。グレイッシュピンクに繊細な型打ち模様を施したダイヤルは、東北地方で見られる“桜隠し”の情景が着想源。桜の花に雪が降りかかる儚くも美しい瞬間を、移ろう光のニュアンスで静かに表現している。日本の美意識と機能性を融合させた一本は、ブランドが誇るクラフトマンシップの域を体現する。

ピンクゴールドに映える日本の自然美

「62GS」レギュラーモデルに、ピンクゴールドケースを採用した新作が登場。やわらかな光沢を湛えるケースに映えるのは、“桜隠し”の情景に朝日が差し込む瞬間をイメージした温もりあるピンクのダイヤル。ダイヤルの柔らかさに対し、桜の幹を思わせるブラウンのクロコダイルストラップが、上品なコントラストを描く。内部には、自社製ハイビートムーブメント「キャリバー9S85」を搭載し、高精度かつ安定した信頼性を誇る。

問い合わせ先／セイコーウオッチ お客様相談室（グランドセイコー） 0120-302-617

https://www.grand-seiko.com/jp-ja/

CHOPARD

満点の星空を手もとに。名作のムーンフェイズ搭載モデル

光の芸術としてのダイヤモンドの美を体現するショパール（CHOPARD）の「ルール・ドゥ・ディアマン」に、コレクション初となるムーンフェイズ搭載モデルが登場。コンパクトなレディスウォッチのケースに、自社製キャリバー「Chopard 09.02-C」を収め、複雑機構を静かに潜ませる。ベゼルやラグ、ダイヤルを彩るブリリアントカット・ダイヤモンドは、光の透過を最大限に引き出すクラウンセッティング技法で配置。アベンチュリンガラスを用いたミッドナイトブルーの文字盤とともに、満点の星が瞬く夜空のように神秘的な輝きを放つ。

天然石のパワーを宿す、時を告げるタリスマン

時計製造の比類なき技と、ダイヤモンドジュエリーへの深い造詣を余すことなく注ぎ込んだ「ルール・ドゥ・ディアマン」に、ピンクオパールの新作が登場。淡く優しいカラーが印象的なダイヤルは、“直感”や“夢の実現”を象徴するパワーストーンの力を宿し、手もとに高揚感をもたらす。ベゼルを飾るダイヤモンドの光が、フェミニンなトーンに華やかな品格を添え、ジュエリーとしての存在感も発揮。26mmのコンパクトなケースには、ショパールが手がける極小手巻きムーブメント「Chopard 10.01-C」を搭載。ラグジュアリーとスピリチュアルな魅力が共鳴するタイムピースだ。

問い合わせ先／ショパール ジャパン プレス 03-5524-8922

https://www.chopard.com/ja-jp/

PATEK PHILIPPE

「Twenty~4」初のコンプリケーションウォッチが誕生

パテック・フィリップ（PATEK PHILIPPE）のレディスコレクション「Twenty~4」に、初の永久カレンダー搭載モデルが誕生。36mm径のラウンドケースは、手首に優しくフィット。宝石をあえて配さないベゼルとローズゴールド製ケースが、控えめな気品を演出する。ダイヤルには日付・曜日・月・うるう年表示とムーンフェイズをバランスよく配置し、視認性と美しさを両立。サファイアクリスタル・バックからは、超薄型自動巻きムーブメント「キャリバー240 Q」の精緻な動きと装飾を堪能できる。日常に寄り添う、知性とエレガンスを備えた、タイムレスなコンプリケーションウォッチだ。

腕に清涼感を宿す、アズールブルーの最新作

1976年の誕生以来、“ラグジュアリー スポーツウォッチ”の象徴として、愛され続けるパテック フィリップの「ノーチラス」に、アズールブルーが美しい新作が登場。舷窓（げんそう）に着想を得た柔らかな八角形のケースには、ポリッシュとサテン仕上げが交互に施され、立体感と陰影を演出する。ダイヤルにはおなじみの波形モチーフを配し、3時位置には日付表示をセット。ベゼルを飾る46個のダイヤモンドの輝きが、爽やかなブルーカラーを際立たせる。

問い合わせ先／パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109

https://www.patek.com/

PIAGET

60年代の前衛的なスピリットを手もとに

ピアジェ （PIAGET）の「 シックスティ」は、1969年に発表したジュエリーウォッチのアヴァンギャルドな精神にオマージュを捧げるタイムピース。ひときわ目を引くモダンなトラペーズ（台形）型ケースと、しなやかなゴールドブレスレットが、光を纏うように肌に寄り添う。繊細なゴドロン装飾のベゼルや、サテン仕上げのダイアルが上質な輝きを放ち、時を超えたエレガンスを演出。自分らしく、自由を謳歌する女性たちの手もとを、華やかに彩ってくれる。

手もとをハッピーに彩る、レインボーカラーのオーラ

ハイジュエリーとウォッチメイキングの粋を極めた、ピアジェ（PIAGET）の極薄機械式ジュエリーウォッチ「オーラ」。ウォッチの形状に合わせて調整されたバゲットカットの宝石がケースからブレスレットへと流れるように連なり、洗練された一体感を生み出している。ダイヤモンドやサファイア、エメラルド、クリソベリル、ツァボライトが織りなす鮮やかなレインボーグラデーションが、ひと目で心を奪い、ポジティブな高揚感をもたらすデザイン。纏う人に輝きとエネルギーを宿す、唯一無二のアートピースだ。

問い合わせ先／ピアジェ コンタクトセンター 0120-73-1874

https://www.piaget.com/jp-ja

Photos: Courtesy of Brands Text: Makiko Awata Editor: Mayumi Numao