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いじめの過去と向き合って。俳優ミリー・ボビー・ブラウンが若者へ届ける言葉【社会変化を率いるセレブたち】

  • 2025.4.28
2025年2月にLAで開催された全米映画俳優組合賞に出席した、俳優のミリー・ボビー・ブラウン。Photo_ Kevin Mazur / Getty Images
31st Annual Screen Actors Guild Awards - Arrivals2025年2月にLAで開催された全米映画俳優組合賞に出席した、俳優のミリー・ボビー・ブラウン。Photo: Kevin Mazur / Getty Images

「こうして今、私のユニセフ親善大使になるという夢が叶い、長年にわたってユニセフを支援してきた素晴らしい人々と肩を並べることができて本当に光栄です。これからは、できるだけ多くの子どもや若者と直接会って彼らの話を聞き、彼らに代わって声を上げていきたいと思っています」

2018年、14歳のときに史上最年少でユニセフ親善大使に任命された俳優のミリー・ボビー・ブラウンは、NetflixSFシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016)のイレブン役でプライムタイム エミー賞2部門にノミネートされるなど、世界が注目するトップ俳優の一人だ。そんな彼女は、映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)、『ゴジラvsコング』(2021)で主演を務めたほか、Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』(2020)シリーズと『ダムゼル / 運命を拓きし者』(2024)では主演・プロデュースを務めるなど、その才能を遺憾無く発揮。さらに、 大手モデルエージェンシー「IMG」とモデル契約しモンクレールMONCLER)、カルバン クラインCALVIN KLEIN)などのキャンペーンモデルを務める一方で、2019年にはZ世代向けのヴィーガンビューティーブランド、フローレンス・バイ・ミルズ(Florence by Mills)を立ち上げるなど、10代半ばでビジネス面でもその才覚を現している。

2024年3月、映画『ダムゼル / 運命を拓きし者』のNYプレミアに登場。Photo_ Arturo Holmes / WireImage
Netflix's "Damsel" New York Premiere2024年3月、映画『ダムゼル / 運命を拓きし者』のNYプレミアに登場。Photo: Arturo Holmes / WireImage

だがそんな目覚ましい活躍の中、生まれつき左耳の聴力があまり機能しておらず、後に完全に聴力を失ったことをアメリカの『Variety』誌に公表。そのため、歌を歌っているときなどは演奏を完全には聞くことができないものの、それを補う“感覚”が研ぎ澄まされたという。

「自分の歌が下手に聞こえても、まったく気にしません。歌もダンスも演技も、上手であることが目的じゃない。自分が心から楽しんでいることが大切なんです。何かをするときに重要なのは、それが本当に好きで楽しいか──その情熱がある限り、誰も止められないのです」

小学生のころに経験した、いじめの痛み

2018年11月20日、世界こどもの日にユニセフ親善大使に任命されスピーチをするブラウン。Photo_ Luiz Rampelotto / NurPhoto via Getty Images
Millie Bobby Brown Named UNICEF Goodwill Ambassador2018年11月20日、世界こどもの日にユニセフ親善大使に任命されスピーチをするブラウン。Photo: Luiz Rampelotto / NurPhoto via Getty Images

こう語るブラウンは、2004年2月19日にスペイン・アンダルシア州マラガ県マルベーリャで、イギリス人の両親のもと、4人きょうだいの3番目として生まれた。4歳のときに家族とともにイギリス・ボーンマスに定住したが、彼女が8歳のとき一家でアメリカ・フロリダ州オーランドに移住。そのわずかなイギリス生活の中、学校で壮絶ないじめを受けたことから彼女は一度転校している。

「当時学校で数人のグループからいじめられていて、朝起きると、スマホに脅しまがいのメッセージが届いているのを目にするたびに心臓が締めつけられる感覚に襲われました。こんな気持ちは、経験した人でないとわからないでしょう。誰を信じて良いのか分からず絶望感に囚われていた私は、安全な場所であるはずの学校で毎日心が張り裂けるような思いをしながら過ごしていたのです」

国連のスピーチで自身の体験をこう語り始めたブラウンは、そんな絶望的な日々の中でついに耐えかねて家族にその状況を明かしたところ、彼女の気持ちを正面から受け止めた家族は、迷うことなく転校を選択。その英断により、彼女は救われる思いがしたという。

「SNSのいじめは、単なるいじめではありません。その言葉は単なる言葉ではなく、命を奪いかねない凶器です。言葉を投げかけられた人の精神を破壊し、自殺へと追い込みかねないものなのです」

こう続ける彼女は、SNSでの拡散やディープフェイク画像などにより、今現在もこの世界には自分よりさらに窮地に追い込まれ、誰にも助けを求めることができない若者たちが大勢いることや、現状がますます圧迫されていることを訴えた。

多勢に無勢、匿名のSNSいじめ撲滅に向けて

2019年11月国連にて。Photo_ Monica Schipper / Getty Images for UNICEF
UNICEF Goodwill Ambassadors David Beckham And Millie Bobby Brown Headline UN Summit To Demand Rights For Every Child On World Children's Day 20192019年11月国連にて。Photo: Monica Schipper / Getty Images for UNICEF

だが、2018年『タイム』誌の“世界で最も影響力のある100人”に選出された当時14歳のブラウンを、再び悪夢が襲った。彼女が空港でヒジャブをかぶっていたファンとの写真撮影を拒否した上、ヒジャブをひっぱったとの噂が一人歩きし、SNSが大炎上したのだ。追い討ちをかけるように、イギリスでは彼女を攻撃するようなハッシュタグが流行するなど、心無い言葉の集中砲火が続いたことから、ついに彼女は「X」の利用をやめてしまった。これに対しブラウンは、「言いたいことがあるなら私のインスタグラムにDMを」と、SNS上でのいわれなき攻撃には断固戦うという姿勢を見せている。

俳優として成功を収めた今、自身の立場をかつての自分のようにいじめに苦しむ若者の救済のために行使するブラウン。そんな彼女は、まず第一に子どもたちが暴力や搾取から守られるようにするとの意向を示し、今後もSNSでのいじめは許容しないと続ける。

「私はイギリスの学校でいじめを受けて転校を余儀なくされ、大人になった今も心に多くの不安を抱えて生きています。そして俳優になってからも、私は普段の生活やオンラインで魂が張り裂けるような苦しみを味わってきました。有名人である私は目立つから、きっとターゲットにしやすいのでしょう。SNSに蔓延する憎しみは耐え難いもの。それが私には痛いほどわかるから、私はこれからもずっといじめに対して声を上げ続けなければならないのです」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

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