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“アトムブーツ”などを生み出したミスチーフ(MSCHF)って何者?

  • 2025.4.14

さまざまなシーンで話題を集めているものの、その実態については謎だらけ。ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するアーティスト集団「MSCHFミスチーフ)」とはいったい何者なのか? 東京のNANZUKA UNDERGROUNDで開催した新作個展「マテリアル・バリュー(Material Values)」に合わせて来日した、MSCHFの創立メンバーのルーカス・ベンテルとケヴィン・ワイスナーを直撃した。

──MSCHFの現在のメンバーと、結成の経緯を教えてください。

ケヴィン・ワイスナー(以下・ )まず、今のメンバーは25人で、世界中に散らばっています。最初は僕たち2人を含む5人でスタートしました。ルーカスと僕は学生時代からの友人で、ほかの3人もお互いをよく知った仲で、当時それぞれがNYを拠点にオンラインでへんてこなものを創っていたんです。そこで共通の知り合いから、作風が似ているから一度会ってみるべきだとすすめられて、5人で集まったのが出会いです。MSCHFの立ち上げは2019年の冬ですが、最初の3年はアート集団とも名乗らず、むしろプロジェクトの背後に自分たちがいることを隠すようにしていました。同じ作品は作らず、プロジェクトを遂行する際には、その専門会社だと思われるようにするというのが我々の考えでした。例えばゲームを作るなら、人々からはゲーム会社だと思われるように徹底しようと。なので、今でもMSCHFが何なのか、よくわからない人は大勢いると思います。

高度資本主義社会におけるアートと物質的価値の関係を、ユーモアを交えて再定義するシリーズ「MATERIAL VALUE SCULPTURES」。
高度資本主義社会におけるアートと物質的価値の関係を、ユーモアを交えて再定義するシリーズ「MATERIAL VALUE SCULPTURES」。

──作品のアイデアはどのようにして決めているのでしょうか?

ルーカス・ベンテル(以下・)定期的にアイデアを出してブレストをする時間を設けているので、誰でも自由にアイデアを提案できます。いいアイデアをリスト化し、それを元に実行へと動くのですが、リストには常に1000件ほどストックがあるので、優劣を決めて、みんながいいと思うものを実行する形です。ただし一つのプロジェクトに大体1〜3年の時間を費やしているので、次々に新プロジェクトを発表するというわけにはいかないんです。

──コントロバーシャルで挑発的な作風で知られていますが、世の中に議論を巻き起こすテーマが基本的なトピックなのでしょうか?

まず、お伝えしたいのですが、我々は決して法的な論争を求めているわけではないですし、お騒がせ的な注目が欲しいわけではありません。正直なところ、僕たちがこれまで発表してきた作品のすべては、少なくともアメリカ国内では100%法的な権利の範囲内です。ただアメリカでは、たとえ法的に問題がなかったとしても、誰でもどんなことに対してでも訴えることができてしまうんです。

展示に合わせて発売されたシリアル番号入りスニーカー「NANZUKA Super Normal」
展示に合わせて発売されたシリアル番号入りスニーカー「NANZUKA Super Normal」

──法的な話が出たので、MSCHFとラッパーのリル・ナズ・Xのコラボスニーカー「サタンシューズ」について聞かせてください。ソールに赤いインクと人間の血の1滴を加えたシューズは大きな議論と注目を集めましたが、あの現象をご本人たちはどう見ていたのでしょうか?

あれは正直自分たちでもよくわからないなと思っています。と言うのも、あの1年前に僕たちは「ジーザスシューズ」という、ヨルダン川の聖なる水を入れた、「サタンシューズ」とは正反対の作品を発表したのですが、それはものすごく好評でした。ところが「サタンシューズ」ではナイキから訴訟という反応が返ってきた。これは僕たちにとって、まったくの想定外でした。

アメリカの子ども向けSF小説『アニモーフ』から着想を得た「Animorph Painting」シリーズ。
アメリカの子ども向けSF小説『アニモーフ』から着想を得た「Animorph Painting」シリーズ。

──「鉄腕アトム」や「ポケモン」、「ドラゴンボール」など日本のアニメにインスパイアされた作品も多く手がけていますが、日本のカルチャーの面白さは?

日本は文化的影響を与えるデザインを生み出すことに長けている国だと思います。僕たちの作品は、基本的にカルチャーの中に存在するもののサンプリングだったりするので、カルチャーと密接な関わりがあるものを探ると、日本のカルチャーに辿りつくという必然なんです。ちなみに僕自身はハローキティの大ファンです。イメージとキャラクターが見事なまでに両立した、最高のモデルだと思います。

──MSCHFはファッションやアート、その発信方法など、さまざまな境界線を越えてきましたが、今後発信したいメディアは?

現在取り組んでいることはたくさんあります。それこそ、テレビや建築などへの関心もあります。ただ、前述したように、我々は一つのプロジェクトにじっくりと時間をかけるので、例えば5年後に何かを発表したとき、今と同じ関心や価値があるのかはわかりません。なので、その辺りはものすごく流動的だったりもする。物事の価値でいうならば、MSCHFもそれこそ5年後には活動はしていても、メンバーは一新されているかもしれない。そういう可能性だって大いにあるんです。

Photo: Kazuki Iwabuchi Text: Rieko Shibazaki Editor: Sakura Karugane

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