1. トップ
  2. Licaxxxが読み解くサザンオールスターズの新しい音楽。『THANK YOU SO MUCH』視聴会レポート

Licaxxxが読み解くサザンオールスターズの新しい音楽。『THANK YOU SO MUCH』視聴会レポート

  • 2025.4.14
licaxxx サザン

英語圏に『空耳アワー』があったら、「JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)」は採用されると思う

子供の頃からサザンを聴いてきましたが、『THANK YOU SO MUCH』が発表されるということで、改めて過去の曲を聴いてみたんです。サブスクで聴くことのできる名曲の数々は、昨年新たにデジタルリスニング用としてリマスター処理が施されていて、驚くほど音質がクリア。

流行のリバイバルは周期的に来るというけれど、80〜90年代の曲も最近作ったと言われても違和感がないほど、音質的にも内容的にも現代にハマっていてかっこよかった。

特に自分はイギリス周辺の90年代の音楽に影響を受けているんですが、サザンもロックンロールやR&B、レゲエからダンスミュージックまで、その時に気になる音楽を吸収し、唯一無二の楽曲を作ってきたということが今の私には改めて理解できました。

例えば1984年に発表された「JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)」はレゲエというよりデジタルシーケンサーを使っている和製フュージョンといった感じでお気に入りです。

楽曲が輝き続ける理由には、もちろん桑田さんの、言葉の響きを大事にする感覚もあると思います。桑田さんの楽曲には、英語の音に似た日本語詞をつけるものが多数あると思いますが「JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)」は、日本語の中でも特に、古語が当てられています。

英語っぽいアクセントに古語ならではの妖艶さがベストマッチ。英語圏で『空耳アワー』があったら「“愛苦ねば 世も知れず”という冒頭のラインが“I Could Never, You More”に聞こえる」とか、応募が来るんじゃないかな(笑)。

Licaxxxのポートレート

言葉と音楽の試行錯誤は、新作『THANK YOU SO MUCH』にもたくさんありました。「桜、ひらり」の「柳暗花明(りゅうあんかめい)」は、英語の発音に日本語をあてたのかと思いきや、実は言葉自体に“春の美しい景色”という意味があって。憶測を超えた懐の深さを感じました。

どうやって辞書引くんだろう。それから、ショッキングな「ごめんね母さん」を聴き、最近観たドラマとか事件とかいろいろなことを想起しちゃいました。ショックつながりで「マリワナ伯爵」を思い出し、そのタイトルから寺山修司の『トマトケチャップ皇帝』を連想して。

桑田さんは「天井棧敷の怪人」も書いているし、寺山ファンなのかなと嬉しくなりましたね。これだけキャリアを重ねても「ごめんね母さん」みたいな攻めたワードセンスの曲を書いてしまうところも桑田さんの魅力だと思います。

メッセージ性の強いアルバムですが、原さんの歌う爽やかな「風のタイムマシンにのって」が、全体の折り返しになっていて。鮮やかな湘南の情景描写になっています。

実は私自身、大学が湘南方面で、毎日のように片瀬江ノ島行きの電車で通学していました。地名だけは存じ上げておりますのでシンパシーを込めて歌詞に耳を傾けました。同時に、湘南の海へは2回しか行ったことがないことを思い出しました(笑)。

Hit Me Lyric

未来のことなんて 分からなくていいんじゃない? 江ノ島も手招きしているから

「風のタイムマシンにのって」より

My Favorite サザン

よどみ萎え、枯れて舞え (1984年)
「“湯女(ゆな)”などの江戸時代の言葉が用いられた、あけすけで妖艶な世界観は純文学のよう。間奏も何か言ってて遊び心満載の和製スティング」
ドラマで始まる恋なのに (1996年)
「ロックとブレイクビーツがいい塩梅の、ニューウェーブ好きにもチェックしてほしい曲。歌詞が勢いのある適当な感じもお気に入りの理由」
涙の海で抱かれたい
「ドラマ『僕だけのマドンナ』主題歌。ひと夏の恋を爽やかに歌いながらも、“真夜中過ぎの涙の電話(テレフォン)”と情けない男性の描写が桑田さんらしい」

profile

Licaxxx(DJ)

りかっくす/東京を拠点に活動するDJ、ビートメーカー。FUJI ROCK FESTIVALや海外のクラブにも出演。近年ではWリーグやファッションショーの音楽プロデュースも担当。また、ラジオパーソナリティとしても人気。

*「My Favorite サザン」で紹介しているジャケット写真は、楽曲初出時のものを掲載しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる