ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
「頑張らない」の効用
ドイツに来て家事全般の考え方がすごく楽になりました。なぜならいろんなことを無理しないでいいから(笑)。
こちらの人はどれだけ自由であるか、無理しないか、っていうのを、家事の基準にしているような気がします。だから人にも頑張りを強要しない。自分がラクをしたいから、人にもどうやったらラクになるか、を提案する。もし大変そうなことがあったら、「そんな大変なことをやってはいけないし、やらせてもいけない!」という雰囲気になる。これはいい!(笑)、というわけで、我が家でも今や「頑張らないでいい暮らし」が基本です。
お弁当、頑張らない。お掃除、頑張らない。子育て、頑張らない。
でも、頑張らないっていうのは、何もしない、ということじゃないんですよね。そして意外と難しいのが、頑張らないでいいのだ、と心から理解することなんです。だって私たち日本人は、頑張ってきちんとして、迷惑かけないことがとっても大事、という価値観で育ってきたから。それもいいことではあるんですけど、どうも頑張りに偏り過ぎている感があると、海外に出てみて気がつきました。
でね、なぜ頑張らないをお勧めするかというと、頑張らないとキャパシティが広がるからなんです。
いろいろ完璧にしよう、きちんとしようとすると、「もうできない! もうやりたくない! なんで私だけが子育てを……」などなどと思いがちですが、ほどほどでいいと決めると、「全部上手くできないかもだけど、まあ、やってみるわ」という気になるのです。これもいい!(笑)
たとえば子どもがお泊まりに来るって大変だからなぁ、と思ってしまうけど、子どものご飯はお腹が空かなければいいので、我が家では毎回ドイツの子どもが絶対に食べられるパスタにトマトソースかパンがあればオッケーと思っています。
お風呂には入れないでいいし、子どもは遊んで食べて、パジャマに着替えて歯磨きだけさせて寝かせればいいので、楽勝です。それ以上は誰も望んでいないし、させようともしない。メインは子どもが一緒に遊ぶことですから。子どもも豪華なご飯や行き届いたケアを望んでお泊まりにきているわけではないんです。
そんなわけで、まずは育児も家事も頑張らないでいい、ということを自覚するのがおすすめです。それでも暮らしは回っていくし、子どもも元気に育ちます。お母さんもラクになるのでキャパが広がります。自分がラクになると、人もラクにしてあげたくなります。本来の暮らしや子育てって、もしかするとそういうものなのかもしれません。