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「発狂しそう」「苦しくなった」初回放送で相次ぐの共感の声…センシティブなテーマの新ドラマ『夫よ、死んでくれないか』

  • 2025.4.11

安達祐実が主演のテレビ東京 ドラマプレミア23『夫よ、死んでくれないか』が、4月7日より放送開始。

満たされない結婚生活を送る30代後半の麻矢(安達祐実)、璃子(相武紗季)、友里香(磯山さやか)。彼女たちの鬱屈した日々は、親友・友里香の衝撃的な一言で急変する。「夫を殺しちゃった……」。

さらに、麻矢の夫・光博(竹財輝之助)までもが失踪。愛が憎しみに変わる瞬間、彼女たちは何を選択するのか? テレ東“全夫が震えるシリーズ”第3弾『夫よ、死んでくれないか』は、結婚という制度に潜む闇を描き出し、女性たちの心の叫びを深く抉るサスペンスドラマだ。

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(C)SANKEI

「二人でいても一人」麻矢のモノローグが突きつける孤独

「一人でいても二人でいる気がした。それが今は、二人でいても一人でいる気がする」…。この麻矢のモノローグに、彼女が置かれている結婚生活の実態が詰まっている。

麻矢の夫・光博はIT企業勤務。家庭ではスマホゲームばかりに熱中し、麻矢に対して言葉も視線も向けない。明確なモラハラや暴力があるわけではないが、“無関心”が蓄積することの暴力性が如実に描かれていた

実家に帰省した麻矢は、母から「そのうちどうでもよくなるから、ちょっとくらい我慢しなさい」と諭される。母は、家事も介護も淡々と引き受ける“かつての女性像”を体現している。けれど麻矢は、その姿に“自分の未来”を重ねることができない。

「女として、母のようになりたくない」麻矢は、結婚の中で自分という存在が少しずつすり減っていくことに、心の底から恐怖を覚えていた。このモノローグは、結婚という形式のなかで孤独を深める現代の女性たちの“秘めた叫び”そのものだ

死の代わりに人格を失った夫たち

友里香の夫・哲也(塚本高史)は、典型的なモラハラ夫。彼女を責め、否定し、従わせる言動を繰り返してきた。ある日、口論の末に彼を突き飛ばした友里香は「死んだかもしれない」と狼狽する。

しかし目覚めた哲也は、まるで別人のようにおだやかで従順な“新しい夫”になっていた。記憶喪失か、それとも演技か? いずれにせよ、これまでの哲也は“死んだ”も同然なのだ。

一方、璃子は夫・弘毅(高橋光臣)の異常な束縛に苦しんでいる。GPSで常に行動を把握され、飲みに行けば「10分おきに写真を送れ」と要求される日々。自由を奪われ、追い詰められた彼女は、麻矢に「私が夫を殺すって言ったら、手伝ってくれる?」と漏らすが、その言葉は電車の音にかき消された。

哲也に起きた“変化”をどう捉えるか。暴力の元が消えたことは救済なのか、それともさらなる危険の序章なのか。視聴者の判断が試される。

“誰が悪い”ではなく、“なぜこうなったか”を問うドラマ

興味深いのは、本作で描かれる夫たちに決定的な“悪人像”が与えられていないことだ。誰かが誰かを一方的に虐げるのではなく、すれ違い、疲弊し、やがて壊れていく関係が丹念に描かれている。

麻矢の母は、夫のつまみ食いや食べこぼしにも無言で片づけ、引きこもった息子の世話を当たり前のように引き受けている。世代を超えて継承されてきた“黙って耐える女性像”が、今なお麻矢たちに影を落とす。

また、職場でも麻矢は「女性である」というだけで評価の軸から外されがちだ。結婚も仕事も、満足を得るには程遠く、自分を消耗する日々。彼女の問い「いつからこうなったのか」は、きっと多くの人に突き刺さる。

放送後、SNSでは「発狂しそう」「まさに令和って感じ」「苦しくなった」という声が相次いだ。なかには「次は『妻よ、死んでくれないか』も観てみたい」といった反発的な声もあり、ドラマのテーマがいかにセンシティブであるかを物語っている。

本作は、夫婦関係の一方的な断罪ではなく「結婚」という枠組みが抱える構造的なゆがみに光を当てようとしている。だからこそ、視聴者の受け取り方にも多様性が生まれるのだろう。

これは、人生の再起動劇だ

タイトルだけを見ると、過激でブラックな復讐劇を想像するかもしれない。だが、その実は、壊れてしまった日常から抜け出し、“本当の幸せ”を探しにいくための再起動の物語である。

夫に、家族に、そして社会に奪われたものを取り戻すために、3人の女性たちはそれぞれのやり方で闘いを始めた。『夫よ、死んでくれないか』その言葉の裏には、悲鳴にも似た祈りが込められている。

第2話では、果たして誰の“罪”が明らかになるのか。震えるような余韻を残しつつ、物語は静かに、しかし着実に進んでいく。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_