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「第一話から名作の予感」20年ぶりに“目覚めた男” が見た光景…考察しがいのある初回放送に称賛の声!【日曜新ドラマ】

  • 2025.4.8

20年間眠っていた男が目覚めたとき、世界はもうまったく違う場所になっていた。ABCテレビ・テレビ朝日系 日10ドラマ『いつか、ヒーロー』の第1話は、ただのSFでもミステリーでもない。「夢を見ること」と「現実を生きること」の間で揺れる人々の物語だ。

主演・桐谷健太が演じるのは、かつて児童養護施設「希望の道」で子どもたちと夢を語り合い、自らも「カンボジアに学校を作る」という夢を追っていた赤山誠司。その彼が、施設を辞めた日に頭部を殴打され、20年間ものあいだ意識不明で過ごした末に目を覚ます。目覚めた誠司が見たのは、もはや夢など口にできないほど過酷な現実を生きるかつての教え子たちの姿だった。

第1話の放送後、SNSでは、「考察しがいのあるドラマきた!」「第一話から名作の予感」「一段上の世界」といった声もあふれていた。

このレビューでは、第1話に込められた3つのキーワード「夢の代償」「死滅回遊魚」「20年の空白」から、その骨太なテーマ性と演技の魅力を掘り下げる。

「夢を持つこと」は希望か呪いか

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(C)SANKEI

誠司とともにタイムカプセルを掘り返すために再会したのは、かつての教え子・樋口ゆかり(長濱ねる)。彼女はかつて「通訳として海外で活躍する」という夢を語っていたが、現在は介護職に就き、手取り17万円で日々の生活に追われている。

ほかの子どもたちも同様だ。ヒーローになりたかった渋谷勇気(駒木根葵汰)、サッカー選手を目指していた野々村光(泉澤祐希)、商社マン志望だった交野瑠生(曽田陵介)、金持ちイケメンの嫁になりたかった君原いぶき(星乃夢奈)。どれも、現実のなかで形を変えたり、手放されたりしてしまっている。

ゆかりが言う。「生きていくので精一杯なんだよ」。その言葉は、夢を「追うもの」から「背負うもの」に変えてしまった現代の空気そのものを示している

夢を持つことは本来自由で、誰にも制限されないもののはずだ。しかしそれが叶わないまま年を重ねたとき、人は「夢を持っていた自分」に苦しめられる。誠司が言う「お前たちは、俺の夢だ」というセリフは、夢を託す側の純粋な願いであると同時に、託された側には新たな“荷物”ともなりうるのかもしれない。

「死滅回遊魚」という比喩の重さ

第1話のクライマックス、勇気は謎の男・氷室海斗(宮世琉弥)から「お前は死滅回遊魚だ」と言われる。そしてその直後、ビルの屋上から転落し命を落とす。死滅回遊魚。熱帯の海で生まれ、黒潮に乗って北の海へと流れ着いたものの、寒さに耐えきれず死んでしまう魚。

この比喩があまりに強烈だ。勇気はヒーローになりたかった。しかし社会という海はあまりにも冷たく、彼の理想は現実によって打ち砕かれていく。「居場所ではない場所に流れ着いてしまった存在」として、死滅回遊魚は現代の若者、そして私たち自身にも重なる

なぜ氷室はそんな言葉をかけたのか? 彼は敵なのか、操られているのか。それはまだわからない。ただひとつ確かなのは、「夢を見てはいけない」と言い放つこの世界に、誠司は再び立ち向かおうとしていることだ。

20年眠っていた男が見つめる「絶望」と「再生」

誠司を演じる桐谷健太の演技が素晴らしい。目覚めた瞬間の、失われた20年への慟哭。身体が動かない不自由さへの苛立ち。旧知の場所がすべて失われていたと知ったときの絶望。そのどれもが過剰にならず、しかし見る者の胸を確実に打つ。

桐谷の誠司には、取り戻したいという焦りではなく「まだ間に合うかもしれない」という一縷の希望が宿っている。それは、たとえ叶わなくても、誰かの背中を押すことができると信じる力だ。ゆかりと再会し、残りの4人の教え子たちを探しに行く旅がここから始まる。

この物語は、ただの“夢をもう一度”系ドラマではない。夢を持つことの光と影、そしてそこに向き合うすべての人々に向けた“再生の物語”なのだ。

『いつか、ヒーロー』第1話は、夢が奪われた人々の現実と、それでもなお希望を信じようとする者の再起を描いた作品だった。誠司がなぜ襲われ、誰がこの陰謀を仕掛けたのか。氷室とは何者なのか。そして、5人の子どもたちはもう一度夢に向き合えるのか。

すべての謎が明かされるのはまだ先だが、第1話は確かに、視聴者の胸に“生きることへの問い”を投げかけてきた。ヒーローになれなかったとしても、誰かのヒーローになることはできる。その「いつか」を信じて、この物語を追いかけていきたい。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_