意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「女性活躍推進法10年」です。
活躍推進のための基準値を上げ、実現に向け意欲を。
女性活躍推進法が施行されて10年、来年3月末までの時限立法のため、現在国会で改正法案の議論がなされています。これまでは従業員が301人以上の企業に対して、男女間の賃金格差の公表を義務づけていましたが、改正案では101人以上の企業に変更。女性の管理職比率の公表も必須に。これにより、対象が約1万8000社から約5万社に広がることになります。
フルタイムで働く女性の賃金は、男性を100とした場合に78.7と低く抑えられています。本法律が成立したのは2015年ですが、当時は72.2でしたので大きな改善はみられません。OECD諸国の平均は88.4ですから、先進諸外国と比べても日本の女性の賃金の割合が低いことは明らかです。
女性管理職の比率も法律が施行される前の2014年が11.3%、2023年の段階で12.7%と1ポイントアップにとどまっています。内閣府の直近のデータでは、アメリカやフランスで約40%、ドイツで約30%ですから、それらに比べても大変低い比率です。
日本で女性管理職が少ない一番の理由は長時間労働でしょう。年間の総労働時間は、2022年の段階でフルタイム労働者の場合1948時間。10年前と比べ4%しか減っていません。これは、働くこと=生きがい、働かないと自己実現が叶わないと感じるような風潮も大きく作用していると思います。長い休みを取ることに不安を感じてしまうような古い慣習が、女性にとっての働きやすさを阻害しています。大事なのは働き方の選択肢を増やすことではないかなと思います。共働きや育児、体調などにより、短時間でも働ける、いつ休んでも働き続けられるようなシステムをDXを使って可能にするなど、方法はあると思います。
男性の育休取得率は2023年度に30.1%に上昇しましたが、女性の84.1%に比べると隔たりは大きい。東京都では「育休」を「育業」という言葉に置き換えました。休みではなく立派な「業」だからです。自治体も女性の首長が増えると日本経済も活性化するでしょう。女性活躍推進法施行から10年、国はハードルを上げて、積極的に進めようという意欲を見せています。
PROFILE
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
anan2437号(2025年3月5日発売)より