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「出しゃばらないで!」義父の死で『泥沼の遺産相続争い』が発生…娘婿が後悔する“悪手”〈専門家は見た〉

  • 2025.5.19
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写真:photoAC(イメージ)

相続が発生したとき、亡くなられた方が遺言書を残している場合、遺言書の内容に沿って遺産分割を行います。しかし、遺言書を残していない場合は、相続人全員の同意があるまで「遺産分割協議」を行わなければなりません。

なかなか遺産分割協議が調わないと、相続に詳しい人は思わずアドバイスをしたくなるかもしれません。しかし、相続人以外の人が遺産分割協議に首を突っ込みアドバイスをするのは控えたほうがよいでしょう。

FPとしてさまざまな家庭でお金の相談を受けてきた筆者が、遺産分割協議に相続人以外の人が参加し事態が泥沼化してしまったケースを紹介します。

遺産相続で相続人以外の親族が登場する弊害

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写真:photoAC(イメージ)

今回紹介する事例は、奥様の父親が亡くなり相続が発生したAさんです。

そのときの法定相続人は以下のとおりでした。

  • 亡くなった方の妻
  • 亡くなった方の長男
  • Aさんの奥様(亡くなった方の長女)

Aさんは金融機関に勤務しており、CFP®資格も保有しているため相続に関して豊富な知識を持っています。ちなみにCFP®とは、世界的に認められた国際的なファイナンシャル・プランナーの資格で「FPの頂点」と呼ばれることもある資格です。

Aさんは「なかなか遺産分割協議が調わない話を聞いたため、あくまでも中立的な立場でアドバイスしようとしたのですが、完全に裏目になってしまいました...」と語ります。

どのようなアドバイスをしたのか聞くと「相続税を抑えるための遺産分割方法」「各相続人の年齢や家族状況に合わせた相応の遺産分割割合」などだそう。やはり相続に関して豊富な知識を持っているだけあって、効果的かつ的を得ているアドバイスと感じました。

しかしAさんの奥様以外の相続人は「関係ない人が出しゃばってきて迷惑」と感じてしまったようです。結局、Aさんのアドバイスに納得できない故人の長男が弁護士に相談し、事態が泥沼化してしまったそうです。

このようにAさん自身は“中立的な立場”であると思っていても、相続人全員からそのように思われるとは限りません。

実際にAさんが行ったアドバイスは的を得ている内容でしたが、肝心の相続人にお金や税金に関する知識がないため、なかなか理解を得られないのも災いとなりました。

法律用語には「利益相反」という言葉があり、これは誰かが得をすると他の誰かが損をすることを意味します。誰かの相続分が増えれば誰かが損をしてしまうため、「相続人の配偶者」が中立的な立場でアドバイスをするのは難しいのです。

相続人が事前に知識を習得しておこう

結果論にはなりますが、今回のケースで筆者はAさんには「相続人の全員からアドバイスを求められるまで、出しゃばるべきではなかった」点をお伝えしました。

遺産分割協議は相続人同士で話し合うのが原則なので、部外者は参加しないほうがよいでしょう。

しかし、相続人全員にお金や相続に関する知識がないと、自分たちで遺産分割の問題を解決できません。特に、お金の管理は亡くなられた方(被相続人)に任せていた、という方は注意が必要です。

筆者がFPとしておすすめしたいのは、もし相続が起きそうと思ったら、相続人全員で相続に関連する法律やお金に関する知識を習得することです。専門的な勉強をする必要はなく、法定相続分や相続税の計算方法など、基本的な部分だけでも理解しておくとよいでしょう。

遺産が多額になればなるほど、また財産の種類が増える(預貯金だけでなく有価証券や不動産などを保有している場合)ほど、遺産分割は複雑になります。できるだけ相続人同士で解決するためにも、やはりある程度の知識は知っておくべきでしょう。

なお、相続税が発生する場合は、「誰が何を相続するか」で納税額に大きな影響が出ることがあります。相続税に関する特例は種類が多いうえに要件が複雑なので、相続税に関するアドバイスは相続に強い税理士に相談するのがおすすめです。

同じアドバイス内容でも「相続人の配偶者(Aさん)」が言うよりも「専門家かつ第三者である税理士」が言ったほうが、相続人に受け入れられやすい側面もあります。

また、個別具体的な税務相談ができるのは原則として税理士だけなので、私も相談の中で「これは税理士に頼ったほうがよい」と感じたら、税理士に依頼するようにアドバイスしています。

まとめ

遺産分割協議は、基本的に当事者である相続人同士で行いましょう。相続人以外の人が協議に参加すると、事態が泥沼化してしまう恐れがあります。

相続に備えるために、相続人になる見込みがある人は、相続に関する法律やお金について勉強しておきましょう。

税金に関するアドバイスを求めたい場合は、相続に強い税理士に相談することをおすすめします。



【柴田充輝】

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。 FP1級と社会保険労務士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。

※サムネイル画像:ChatGPTでTRILL作成