「役のせいで」「嫌いになりそう」朝ドラ女優、“とにかく性格の悪い”キャラにあつまる賛辞の声【月10ドラマ】

月10ドラマ『あなたを奪ったその日から』（カンテレ・フジテレビ系／毎週月曜よる10時）は、ある食品事故をきっかけに始まるヒューマンサスペンスドラマだ。物語後半のキーマンになりそうな人物としてあげられるのが、平祐奈が演じる結城梨々子。梨々子の歪んだ悪女っぷりを平祐奈が巧みに表現している。

食品事故をきっかけに娘を失った二人の親

主人公・中越紘海（北川景子）は、食品事故で娘を亡くし、食品を購入した店の社長・結城旭（大森南朋）への恨みを募らせていた。そんな紘海は、ある日ひょんなことから結城の娘・萌子（倉田瑛茉）を誘拐してしまう。紘海は子どもを失った被害者でありながら、結城の娘を誘拐した加害者。また、結城も子どもを死なせる事件を起こしていながら、子どもが行方不明になった被害者でもある。

紘海は、萌子の中越美海と名付け、中学生まで育て上げた。美海との生活を守るためには、結城の関係者にバレないように慎ましい生活を送らなければならない。しかし、紘海の頭には実の娘・灯（石原朱馬）を失った悲しみと結城への憎しみがよぎる。食品事故の真相を知りたいという思いが抑え切れない紘海は、結城が常務を務める会社へと転職。結城のそばで彼を観察しながら、事件の真相を追っていく。

平祐奈が演じる梨々子は、結城の長女であり、萌子の年の離れた姉だ。第1話では萌子にキツくあたるなど、姉妹仲はそこまでよくない様子。梨々子は、家出をした実の母からも構われず、仕事が忙しい結城からも愛情を感じられないことから、性格が歪みきっている。家庭教師の玖村毅（阿部亮平）からセクハラを受けたと嘘の情報を拡散したり、結城にも本心を見せずにのらりくらりとかわすような態度を見せている。

第1話で高校生だった梨々子は成長し、現在は美容クリニックの受付として働いている。結婚を目前にした彼氏がいるようだが、うまくいっていない様子。暇つぶしにマッチングアプリをしているときに、玖村を発見し、再会するように。玖村は萌子が失踪した時に、紘海が結城の家の前にいたことを見ている人物。梨々子と玖村の動きが、紘海を追い詰めることになる可能性もあるだろう。

とにかく性格が悪い悪女を演じる平祐奈の新境地

梨々子はとにかく性格が悪い。行動の裏にある真意が読みきれず、ただ人を困らせたり、バカにするためだけに嫌な行動をしているように見える人物だ。物語が終盤に差し掛かるにつれ、徐々に梨々子の中にある孤独感があらわになってきたが、序盤はただの嫌な奴に徹していた。しかし、梨々子は嫌なことをしている人物のような分かりやすく悪意のある表情を見せず、むしろ涼やかな態度を見せていることが多い。余韻を持った声の響かせ方や相手を下から舐めるように見つめる視線、瞳の潤みなどが印象的で、あらがえない悪女の雰囲気をかもしている。

正直、梨々子を演じる平に悪女の印象を持っている人は少ないだろう。平はこれまで真っ当なヒロインを演じることもあり、2024年後期の朝ドラ『おむすび』では、兵庫出身のお嬢様である湯上佳純を演じていた。学生時代はおっとりとした話し方で気の強さもあった佳純は、神戸栄養専門学校での学び、結との関わり、就職後の経験からさまざまなことを学び、地に足を付けた立派な栄養士として成長をしていく役柄。平の真摯な眼差しの強さが印象的で、佳純の変化をよく表していた。

朝ドラへの初出演、映画『ネムルバカ』の金髪バンドガール姿など、新たな挑戦が続いている平。梨々子も一つの新境地として平に刻まれることだろう。

SNSでは、「役のせいで平祐奈のこと嫌いになりそう」「ひねくれた役柄が上手」など、賛辞の声が集まっている。これまで本心を打ち明けるようなことが一切なかった梨々子。物語終盤で結城に心のうちをぶつけるシーンが描かれれば、平の芝居の見せ所になることだろう。梨々子役を超えた先にある平の女優としての発展を楽しみに、梨々子の行く末を見守りたい。

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カンテレ制作・フジテレビ系列 月10ドラマ『あなたを奪ったその日から』 毎週月曜よる10時

ライター：古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X（旧Twitter）：@k_ar0202