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1話から完成度の高さがすごい...“NHKの夜ドラマ”『虎に翼』出演女優たちの“待望の再共演”に期待高まる

  • 2025.4.15

NHK火曜ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』の放送が、4月1日から始まった。水凪トリの同名漫画を原作とした作品で、膠原病を患った主人公・麦巻さとこ(桜井ユキ)が、薬膳と出会ったことをきっかけに、団地に引っ越してくるところから始まる物語だ。仕事や家庭の事情に対する複雑な感情が、薬膳を通して解かれていくのではないか。そんな予感をくれるドラマだった。

他人事ではない仕事と個人の事情の物語

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『しあわせは食べて寝て待て』第1話より(C)NHK

さとこが患っている膠原病は、自己免疫の異常によって全身の結合組織に炎症が起きる難病。症状は人それぞれだが、さとこは疲れやすかったり、風邪をひきやすかったりという症状があるようだ。日常生活は送れるものの健康とは言い難く、さとこは常に不調を抱えたままの生活を余儀なくされていた。

膠原病は目に見えない病気だ。知名度も低い。さとこは働いていた会社で同僚からの無理解による嫌がらせにより、退職に追い込まれており、週4日のパート暮らしをしている。普段の食事もカップラーメンで済ませる倹約ぶりだったが、マンションの更新料が払えず、引っ越しをすることに。

膠原病によってさとこが失ったものは、健康な身体だけではない。長く働いていた職場、地位、少し広めの賃貸マンション。さまざまなものを“仕方ない”と諦めなければならなくなったさとこは、正気が消えかかっているように見えた。病はさとこから生きていく気力を奪ってしまったのだ。

さとこのように働くのが困難な病気になるかもしれない。それだけでなく、出産や育児、家族の介護など、予想外の出来事により満足に働くことが叶わなくなることもあるだろう。これは、仕事と個人の事情に揺れるすべての現代人に起こりうる物語なのだ。

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『しあわせは食べて寝て待て』第1話より(C)NHK

さとこは引っ越し先の内見中に、90歳の大家・鈴(加賀まりこ)とその息子・司(宮沢氷魚)を通して、薬膳に出会う。この薬膳がさとこにとって、“仕方ない”自分を受け入れるきっかけになりそうだ。

主人公・さとこを演じる桜井ユキのバランス感覚

第1話で描かれたさとこと薬膳の出会い。自尊心を無くし、どこかぼんやりと生きていたさとこが、大根で喉の痛みが軽減されたことで薬膳の魅力を知ったときの喜びが、眩しく感じるような内容だった。

さとこを演じる桜井ユキは、『ライオンの隠れ家』では工藤役として颯爽と登場し、仕事をこなすクールな女性を演じた。『虎に翼』では、華族の桜川涼子として優雅な所作を見せており、これまでの作品を見ると存在感のある役柄を演じることが多い。『真犯人フラグ』『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』などのミステリードラマでも、物語に大きく影響するような一癖ある役柄を演じている。桜井が演じているだけで、「何かある」と思わせてくれる。

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『しあわせは食べて寝て待て』第2話より(C)NHK

さとこ役は、これまでの桜井が見せてきた存在感を消して演じている。存在感を薄めていても、さとこが抱える葛藤や悩みが少しの視線のかげりや声色から繊細に表現されており、膠原病を患ってからのさとこの苦しみが痛いほど伝わってくる。そして、薬膳がより良い生活を送るきっかけになるかもしれないと希望を見出した時のさとこの表情からは、病気になる前の明るいさとこの姿も見えてくる。桜井は、第1話からさとこというキャラクターの奥行きを丹念に表現して見せた。

『虎に翼』でも、涼子の持つ華族としての葛藤やお付きの玉(羽瀬川なぎ)との絆を真摯に演じて見せた桜井。『しあわせは食べて寝て待て』には、『虎に翼』で桜川と切磋琢磨した山田よね役を演じた土居志央梨も出演予定だ。涼子とよねでは軽口を叩き合う仲だった二人が、『しあわせは食べて寝て待て』ではどんな関係性を見せてくれるのか、楽しみだ。


ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』 毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202