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約2か月遅れ“公開延期”の事態に…!ようやく上映、“恐ろしい風貌”でリアルな着ぐるみが話題の新作映画

  • 2026.1.28

昨年、日本列島を相次いだ熊被害や目撃情報。熊の恐ろしさが日本中に知れ渡ることになったが、その影である映画が公開延期となっていた。
その映画とは、タイトルも直球の『ヒグマ‼︎』。内容は、闇バイトグループがヒグマに襲われるというもの。世間が熊被害に敏感になっている時期だったので、公開延期はやむなしだったかもしれない。

昨年、出された公開延期のリリースはむしろSNSを中心に話題となり、宣伝効果につながったかもしれない。
そして、熊の冬眠時期となりようやく本作は、2026年1月23日に公開された。その内容はどんなものだったのか、さっそくレビューしたい。

ヒグマがいけ好かない闇バイト業者に襲いかかる

ゲーム開発者を志す18歳の小山内(鈴木福)は、専門の大学への進学を夢見ていたが、父親が多額の借金を残して自死してしまう。このままでは母親との生活すらままならない状況となった彼は、なんとか進学の夢を自らかなえようとアルバイトを探していたら、高額な案件を見つける。

しかし、それは違法な闇バイトだった。しかも、一度足を踏み入れてしまえば逃がしてくれない。身分証明書のコピーをとられ脅された挙句、小山内はズルズルと違法な道へと引きずり込まれていってしまう。

そして、ある日、宝石のトルマリンを持ち逃げした女性・若林桜子(円井わん)からブツを奪還しろという指令が下る。あわや殺されるとなったその瞬間、小山内たちは森で巨大なヒグマに襲われる。あくどい闇バイトの組織連中が次々とヒグマに襲われる中、間一髪、小山内と若林は逃げ出すことに成功。しかし、深い森の中でヒグマのテリトリーから脱出するのは容易ではない。

しかも、トルマリンをヒグマに飲み込まれてしまったり、悪徳猟師に絡まれるなど災難続き。果たして2人はこの森から抜け出すことができるのか、というのが本作の内容だ。
ヒグマの犠牲になるのは、いけ好かない闇バイトの連中ばかり。そういう意味では、スカッとする作品だ。弱者を食い物にする闇バイトのリーダー格がヒグマに哀れにも襲われていき、そんな彼らにいいようにこき使われていた気弱な青年・小山内が最後にヒグマを倒すのは、強さの序列が変わったようで爽快だ。

令和の時代にあえて着ぐるみで勝負

肝心のヒグマは、3DCGではなく着ぐるみで表現されている。これがまたいい味を出している。低予算映画ならではのチープ感を逆手に取っているというよりも、役者と一緒にカメラの前に実物が存在しているということで役者の芝居にも実感がともなっている。

なにより、チープに見えないデザインの力が大きい。ヒグマのデザイン造形を担当したのは、『シン・ゴジラ』や『貞子VS伽椰子』など大作映画からホラー映画まで、数多くの作品に参加してきた、百武朋だ。隻眼で、全身に傷があり、デザインからこの熊の歴戦の強者ぶりが伝わってくる。

日本映画は、『ゴジラ』に代表される着ぐるみのモンスターパニック映画の伝統があるが、『シン・ゴジラ』に参加した造形アーティストの参加によって、本作はその伝統に位置付けられる作品になったと言えるだろう。

一見恐ろしいデザインなのだが、丸っこい手足など、よく見ると愛嬌も感じさせる秀逸なデザインである。

個性が光る鈴木福と円井わんのコンビ

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鈴木福 (C)SANKEI

本作の主演は、鈴木福。子役時代から築いてきたパブリックイメージを逆手にとって、優しそうな青年が闇バイトに手を染めていく現代社会の闇を体現してみせた。要領が悪くて、なにかと周囲の足を引っ張ってしまうのだが、そんな彼がヒグマとの戦いの末に成長していく様も本作の醍醐味となっている。

そして、共演の円井わんはひたすらカッコいい。元自衛官でクールな女性を魅力的に演じており戦闘力も高い。今回の映画のキーパーソンというべき存在だ。鈴木福との凸凹コンビぶりも良い味を出している。

また、宇梶剛士が扮する、猟師の神崎も映画を盛り上げる存在だ。日当8,500円で熊退治に命を懸けるなんて割に合わないと言い放ち、熊に襲われた被害者から金品を盗む強欲な男だが、彼の言うことも一理ある。確かに大きな熊を相手にするのに、8,500円は安すぎる。これでは現実の熊被害も減らないわけだと妙に納得させられる。

ヒグマに人が襲われる場面では、リアルな描写もあり、そういう描写が苦手な人は注意が必要な作品だ。しかし、映倫区分は“G”とされ、全年齢対象だが、襲撃描写が含まれるので注意喚起がある。普通の映画に飽きてきた、一風変わった刺激を求めている人におすすめな作品だ。


出典:@HigumaMovie 映画「ヒグマ!!」公式X

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi