“３０年前”にはなかったリメイク版だからこその面白さ　物足りなさを感じさせない“人気アニメの変化”

令和になった今、約30年前の作品をリメイクするという試みから生まれた『真・侍伝 YAIBA』。本作の醍醐味のひとつが、鉄 刃（くろがね やいば）たちが日本中を旅するなかで登場する“聖地”の数々だ。第6話では、名古屋人にとって馴染み深い味噌にまつわる名物や、名古屋の人気観光地を楽しむ刃たちが描かれた。

味噌串カツ、名古屋城、金シャチ横丁……名古屋を巡る刃たち

刃たちが八鬼最強・バットガイと壮絶な戦いを繰り広げたのが、名古屋だ。第6話の冒頭では、JRセントラルタワーズと名古屋駅が映し出され、刃たちは味噌串カツを食べ「うめえ！これが味噌串カツか！」と大喜びしている。峰さやかは、Instagramがモチーフであろう「インステ」に投稿するため、味噌串カツとともに自撮り写真を連写。

完全に観光ムードの刃たちだが、鬼丸につかえる八鬼最強の敵・バットガイが急襲する。「名古屋はおいしい物がたくさんで～す！」とバットガイも味噌串カツを一口で平らげており、サクサクの衣にじゅんわりと濃厚な味噌が染みこんだ味噌串カツは、『真・侍伝 YAIBA』の世界でも敵や味方関係なく愛されているようだ。

バットガイとの戦いで苦戦する刃に宮本武蔵が助けを出すシーンでは、背後に「中央市場」と書かれた看板が。ここは、名古屋駅から徒歩約5分ほどの距離にある柳橋中央市場だと思われる。約100年の歴史を持ち、市内の台所を担っている柳橋中央市場は、業者だけでなく多くの観光客やツアー客も訪れるスポットだ。

刃たちは、バットガイから一時撤退するため名古屋城に逃げ込む。すっかり暗くなり紫色にライトアップされた名古屋城は、不気味でおどろおどろしい雰囲気を醸し出しているのが印象的だ。刃は名古屋城のシンボルである金のしゃちほこに登り、バットガイと死闘を繰り広げる。

そんななか、朝日が弱点のバットガイを攻略するため、刃は名古屋城の上階部分を斬って落としてしまう。金のしゃちほこがそびえ立つ屋根を失った名古屋城はアニメでしか観られないと同時に、「そんな滅茶苦茶な……」と刃の大胆すぎる行動に唖然とした視聴者も多かったのではないだろうか。

バットガイとの戦いが終わった後、名古屋城下に広がる金シャチ横丁で、修行に励む刃を横目にグルメを楽しむさやかたち。金シャチ横丁は、建ち並ぶ老舗飲食店で名古屋メシを堪能できる人気観光スポットだ。バットガイ戦の合間に描かれた数々の名古屋名物に対してSNSでは「うおーちゃんとロケハンしてそうで嬉しい」「金シャチ横丁の風景とかがリアルで良かったな」「YAIBAは日本中旅するのがとにかく面白い」との声があがった。

原作との景色の違いは“リメイク版”だからこそ

第7話の冒頭では、鬼丸猛が東京スカイツリーに向かって風神剣を振るい、真っ二つにしていた。しかし、原作では鬼丸に斬られたのはスカイツリーではなく、東京タワーだった。原作漫画『YAIBA』が連載されていたのは、約30年前のこと。登場する建物の違いによって、リメイク版だからこその面白さが際立っている。

原作は、背景の描きこみよりも、キャラクターの動きや豊かな表情にスポットが当たっているように思う。そのため、現代を象徴するような背景を加える“余白”がたっぷりある。第1話でも、ジャングルから東京にやってきた刃たちのシーンの合間に、東京スカイツリーや高層ビル群、たくさんの人が集う東京駅といった原作にはない“現代”を感じる景色が映し出されていた。

アニメをリメイクするにあたって、原作や旧アニメ版をなぞるだけでは物足りないと感じる視聴者は少なくないだろう。その点、『真・侍伝 YAIBA』で追加・変更された風景の描写は、作品がアップデートされたことをよく物語っている。現代の街並みによって“令和感”を演出し、より多くの人が楽しめる作品に仕上がっているのが、『真・侍伝 YAIBA』なのだ。

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真･侍伝 YAIBA
ABEMAにて毎週土曜22:30より最新話を無料放送
［番組URL］https://abema.tv/video/title/2-29
【(C)青山剛昌／小学館／真･侍伝YAIBA製作委員会】

ライター：まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X（旧Twitter）：@kaku_magari