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「主人公じゃないのに」「代表作では」狂気的な姿で“緊張感をさらに引き立てた”実力派俳優にあつまる注目『信長協奏曲』

  • 2025.6.9

『信長協奏曲』は、小栗旬が主演を務める2016年公開のSF戦国時代映画である。フジテレビ開設55周年プロジェクトとして企画され、石井あゆみ原作の人気漫画のテレビアニメ、テレビドラマ放送の後、本作が公開となった。先日、9年越しに初めて地上波で放送され、再び注目が集まっている。

物語は、戦国時代にタイムスリップした高校生・サブローが、織田信長として生きることを余儀なくされるというユニークな設定で展開する。テレビドラマ版(2014年放送)の続編かつ完結編として制作され、ドラマのキャスト陣が再び集結しているのも見どころだ。

戦国時代という厳しい時代を生きる人々の姿と、未来から来た高校生の視点が融合し、笑いと涙が同居する感動的な物語を織りなしている。

現代高校生・サブローの戦国時代での奮闘

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(C)SANKEI

物語は、修学旅行中に突然戦国時代へタイムスリップした高校生・サブロー(小栗旬)から始まる。顔がそっくりな織田信長(小栗旬・二役)に出会い、「自分の代わりに信長として生きてくれ」と頼まれたサブローは、その申し出を受け入れる。現代的な感覚を持つサブローは、家臣や周囲の人々を戸惑わせながらも、時に自由奔放に、時に思いやり深く信長の代わりとして天下統一を目指していく。

SNSでは「人類は絶対この映画を見るべし」「日本映画の中でも一番好き」「こんな夢中になったの人生初めて」「別格すぎる」など今でも絶賛の声が多く上がっている作品だ。

サブロー、信長、光秀の三者の思いが交錯するドラマ

映画では、織田信長としてのサブロー(小栗旬)の物語がクライマックスを迎える。織田軍の家臣たち、特に明智光秀(小栗旬)や羽柴秀吉(山田孝之)らとの信頼や確執、また帰蝶(柴咲コウ)との夫婦の絆も深く描かれている。光秀は史実における「本能寺の変」の首謀者として知られているが、この物語ではサブローに対して複雑な思いを抱き、やがて運命の決断を下す。サブローが現代の感覚を持ち込むことで、家臣たちの心も少しずつ変化していく様子も見どころだ。

物語の鍵となるのは、サブローと本物の信長、そして光秀の三者の思いである。本物の信長はサブローを殺して天下の座を取り戻そうと画策していた。光秀は、サブローと入れ替わる前の信長から村を焼かれ、家族を失った過去があり深い恨みから暗殺を企てる。一方でサブローは、自分がいつかは信長として討たれる運命を悟りながらも、最後まで人々を守ろうと決意するのだ。その想いに心動かされた信長は「本能寺の変」で自分の死を選ぶが、炎が燃え盛る本能寺で秀吉に殺されてしまう…。

史実に基づいた物語であり、表面上は歴史の改変はないが、信長と光秀が同一人物であることや、サブローの現代的な考えが混じり合う物語が本作の最大の魅力と言える。

SNSでは「日本史を変えない程度にタイムスリップと信長二人説を盛り込んだのはすごい」「明智光秀の立ち回りが現実とは違う点が新鮮」「信長が二人いるという設定は面白かった。史学的にも謎のままの事件への新解釈」など、高く評価されている。

3人の武将が対峙した緊迫シーンの“こだわり演出”

戦国時代のダイナミックな合戦シーンや、現代人であるサブローのユーモアあふれる言動や家臣とのやりとりも本作の魅力の一つだ。映像美と音楽も高く評価されており、戦国絵巻の世界観を壮大に彩る。中でも、「炎のシーンがとんでもない迫力だった」と視聴者の声が上がっている本能寺内のシーンでは、本物の炎にこだわり、地元の消防隊が待機する中で撮影されたという。サブローと信長、秀吉がそれぞれ対峙する緊迫感がより引き立つ演出だ。

さらに、登場人物たちの思いが交錯する繊細な心理描写も見逃せない。中でも、タイムスリップの事実を知った帰蝶が、現実に戻ったサブローに向けて撮ったビデオレターは感動的だ。柴咲コウの好演に「夫婦関係たまらん」「何度見ても泣ける」「帰蝶はコウ様より相応しい人はいない」などSNSでは今でも根強いファンがついている。

秀吉演じる山田孝之の鬼気迫る演技

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(C)SANKEI

羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)を演じた山田孝之に触れずして、本作は語れない。本能寺の変の混乱に乗じて、信長に長年の恨みをぶつけ、刀で切り付ける秀吉。鬼の形相で、容赦なく刀を何度も振り下ろす狂気的な姿と、内から湧き上がってきた涙を流す、繊細な表情からは目が離せない。

視聴者からは「主人公じゃないのに存在感やばすぎた」「代表作では」「恐怖心を掻き立てる」など、多くの注目を集めている。緊張感をさらに引き立て、観る者を物語へ深く引き込む力を持つ、山田孝之の演技にも注目してほしい。

歴史の真実とフィクションが巧みに融合し、壮大な戦国ファンタジーとして描かれた『信長協奏曲』。登場人物たちの熱い思いと、山田孝之をはじめとする俳優陣の演技が、感動をもたらす一作。戦国時代を生き抜く彼らの姿から、自分自身の生き方や信念について、改めて考えさせられる作品だ。ぜひ一度、その世界観にどっぷりと浸り、心揺さぶられる体験をしてほしい。


映画『信長協奏曲』(2016年)

ライター:山田あゆみ
Web媒体を中心に映画コラム、インタビュー記事執筆やオフィシャルライターとして活動。X:@AyumiSand