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涙腺が崩壊、試写会で多くの嗚咽が響き渡った“名シーン” …松坂桃李たち豪華俳優陣の歌声が話題の新作

  • 2025.5.27

2025年5月23日から公開中の映画『父と僕の終わらない歌』は、アルツハイマー型認知症になりながらも80歳で歌手デビューを果たした、イギリスの親子の奇跡の実話の映画化作品。歌手としても有名な寺尾聰と、松坂桃李が主演を務める本作は、笑顔になれて、ラストには感動の涙が待っているハートフルな映画だ。 ※この記事にはネタバレが含まれています。

『父と僕の終わらない歌』

2016年、イギリスで投稿された1本の動画が世界中の視聴者を引き付け、その動画をきっかけに、80歳の男性が歌手デビューの夢を叶えたというニュースが注目を集めた。彼の名前はテッド・マクダーモット。アルツハイマー型認知症と診断された彼は、陽気な性格だったのに怒りっぽくなり、息子のことも忘れ始めていた。そんな折、父が歌う時は笑顔を取り戻すことを知った息子は、その様子を動画に撮って配信し始め、それが父の歌手デビューへとつながっていく。

映画『父と僕の終わらない歌』は、息子であるサイモン・マクダーモットのノンフィクション書籍を、日本の横須賀に舞台を移して映画化。寺尾が演じる父・間宮哲太は、楽器店を営みつつ、街の人たちの前で歌うことが大好きな陽気な男性。松坂慶子が演じる妻・律子も明るい女性で、夫婦は仲睦まじく暮らしていた。ところが、哲太がアルツハイマー型認知症を発症したことから、間宮家の生活は一変する。

父からどう思われているのか苦悩する息子

息子の雄太(松坂桃李)は吉祥寺でパートナーの亮一(ディーン・フジオカ)と暮らしながら、イラストレーターの仕事をしているが、父が母に当たり散らしたり、自動車免許を返納したことから、実家に戻って両親を支えることに。

哲太が突然怒りを爆発させ、豹変する様子を寺尾は秀逸に表現しており、笑顔で歌を歌う時とのギャップに胸が締め付けられる。律子に暴力を振るうこともあり、彼女は憔悴していくが、それでもずっと一緒にいて夫を支えたいという想いを捨てない姿を見ると、身につまされる。

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(C) 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

本作は、原案のサイモンに基づいて、雄太はゲイであり、10年ほど前に両親にはカミングアウトしているという設定。だが、哲太はそれを忘れており、アルツハイマーの症状が酷い時は怒りに任せてゲイであることを非難したり、別の日には認めていると優しく言ったりする。雄太は、父が本心では自分のことをどう思っているのか、父にとって自分はどのような息子なのか苦悩する。そんな雄太の細かい表情を、松坂は見事に演じていて、雄太に感情移入しながら非常に心を揺さぶられる。

音楽と優しさに溢れた映画

雄太の幼なじみの志賀聡美(佐藤栞里)や、映画の冒頭で彼女と結婚するダニエル(副島淳)、哲太の幼なじみの藤岡治(三宅裕司)や門松大介(石倉三郎)ら街の人たちは、みんな明るく朗らかで、間宮家に手を差し伸べてくれる。聡美たちは、哲太が歌手デビューできるように、雄太を励まして後押ししてくれるのだが、その辺りの描写はとても楽しくて笑顔をもらえるし、寺尾の歌唱シーンにも引き込まれる。

乃木坂46の元メンバーで、現在は俳優として活動中の齋藤飛鳥がレコード会社の社員・海野由梨を演じており、雄太は彼女に哲太の歌手デビューについて相談する。本作には音楽が盛りだくさんだが、SNSにも「歌が題材だから劇場で観る」「寺尾聰さんの魅力全開の映画なのでは」といったコメントが見られる。ディーン・フジオカ演じる亮一もミュージシャンという設定で、彼の歌唱シーンはなんとコミカルで、笑いを誘う場面となっている。

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(C) 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

哲太と雄太はドライブをしながら一緒に歌い、それを動画として配信する。松坂は、「ルビーの指環」で日本レコード大賞を受賞した偉大なミュージシャンである寺尾とのデュエットに備え、映画の中で披露する外国の歌を全曲覚えて撮影に臨んだという。完成披露試写会に登壇した際、寺尾はとても感心していたが、松坂は恐れ多いといった様子で、仲の良い雰囲気の2人がほほ笑ましかった。

寺尾聰と松坂桃李、ついに叶った共演

松坂は、2013年にWOWOWの「ドラマW」枠で放送された『チキンレース』で、主演の寺尾との共演を楽しみにしていたが、当時、肺炎を患ってしまい、医者の許可を得て1日だけの出演になったという。その後、2014年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』に2人とも出演したが、今回ガッツリ共演できるということで、それぞれ喜びをあらわにしているのが印象的だった。

しかも、父と息子の役を演じた寺尾と松坂。劇中、仲良く過ごしたり、ぶつかり合ったりする哲太と雄太を演じる2人は、本当の親子のように見える。また、松坂慶子と松坂桃李という、同じ名字の2人が親子を演じているのも感慨深い。

涙腺が崩壊する感動シーン

哲太は雄太を励ます時、息子の頬を両手で包み、「Smile, Son. Just Smile」と優しく言う。このセリフは、とても心に響く。この時の雄太は、ちょっと幼い子どものように見え、アルツハイマーによって自分を見失うことが多い哲太が、愛情深い父親の顔になるのも感動を誘う。

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(C) 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

映画の終盤、雄太が哲太に声を震わせながら「そうですか……」と言うセリフがある。筆者はここで涙腺が崩壊したが、試写会でも多くの人が嗚咽していた。

松坂は、番宣で出演したTV番組やインタビューなどで、本作について「他人事ではないと思いました」と語っている。結婚して父親になったからこそ、改めて家族の大切さについて考えたという。寺尾、そして松坂の歌声を聞きながら、大切なメッセージをかみしめつつ、感動が深く心に染み渡る『父と僕の終わらない歌』は、必見の1本だ。


映画『父と僕の終わらない歌』2025日5月23日(金)より大ヒット上映中
出演:寺尾聰、松坂桃李、松坂慶子、佐藤栞里、副島淳、大島美幸(森三中)、齋藤飛鳥、ディーン・フジオカ、三宅裕司、石倉三郎、佐藤浩市(友情出演) ほか
原案:サイモン・マクダーモット『父と僕の終わらない歌』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
監督:小泉徳宏 脚本:三嶋龍朗、小泉徳宏
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://chichiboku.jp/
(C) 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

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(C) 2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP