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松井玲奈(35)“波佐見焼”にハマる「シンプルなものばかりだった家の器が…」職人の絵付けは「指先からインクが出ているよう!」

  • 2026.11.6

10月26日よりスタートしたNHK夜ドラ『青の花 器の森』。小玉ユキさんによる人気コミックを原作とした本作は、“やきものの町”として知られる長崎県波佐見町を舞台に、器づくりを通して心を通わせていく大人のラブストーリーです。

主人公の波佐見焼絵付け職人・馬場青子を演じるのは松井玲奈さん。約1カ月半に及ぶ波佐見町での濃密なロケを経て感じた、ものづくりの魅力や撮影エピソードについてお話を伺いました。


深川栄洋監督の演出を何があっても信じよう

松井玲奈さん。

――主人公・青子を演じるにあたって、役に向き合う上で大切にされていたことを教えてください。

今回は「深川栄洋監督の演出を何があっても信じよう」と心に決めて現場に入りました。これまでは自分の中で「きっとこういう感情に違いない」と組み立てて演じることが多かったのですが、まったく違うアプローチから入ってみると、たどり着くゴールは同じでも、そこに至るまでの感情の揺れ幅が大きくなったり、思ってもいない感情が生まれたりしてすごく面白かったんです。そこに、真鍋龍生役を演じる一ノ瀬颯さんのお芝居が入ってくると、どんどん世界が広がっていく感覚がありました。人を信頼すること、その場の空気も信じて飛び込んでみることの大切さを今回の現場で強く感じたので、これからも心がけていきたいなと思っています。

――初共演となった一ノ瀬颯さんの印象は?

松井玲奈さん。

最初は“孤高の陶芸家・龍生のように少し硬さのある人なのかな”と思っていたのですが、役から抜けるとすごく柔らかくて優しくて、みんなと和気あいあいと過ごしている姿が印象的でした。作中で龍生がみんなのことを思い出すシーンがあるのですが、本当に一ノ瀬さんの目の中に波佐見での約1カ月半の記憶が映っているような感覚がして……。自分の経験と役の思いを合わせて表現できる素晴らしい俳優さんだなと感じました。私がバタバタしていてもどんな球でも受け止めて打ち返してくれるので、とても頼もしかったです。

――器を知るために陶芸を始められたそうですね。

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

青子は絵付け職人なのでろくろはしないのですが、自分の手元に器が届くまでにどんな工程を経ているのかを知りたくて始めました。実際やってみるとすごく難しくて、集中していないと絶対にできない作業だなと実感しました。波佐見で出会ったろくろ職人さんたちは普段とても温厚なのですが、いざろくろの前に立つとピシッとして空気感が変わるんです。だからこそ、龍生のキャラクター性や、筆を使って絵を付けていく青子の柔軟さにも納得がいきました。

――これまでにどんな器を作られましたか?

小鉢を4個と深めの丼1個、あとはフラットプレートを1枚作りました。まだまだ作りたいです。

――実際に波佐見焼の職人さんの「技」を目にしたときの印象は?

松井玲奈さん。

歴の長さや経験の差もありますが、とにかく手が早くて迷いがないので「すごいな」とずっと尊敬の眼差しで見つめていました。絵付けの先生たちが筆で線を引いていく姿も美しくて。まるで指先からインクが出ているように見えて、魔法みたいだなと思っていました。ご指導いただいた先生方にはべったり張り付いて手元を見せていただきましたし、撮影場所の近くの窯元さんたちも気軽に作業を見せてくださったのがすごく楽しかったです。

――絵付けのシーンは吹き替えなしで撮影されたそうですね。

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

「できれば手元は自分で挑戦したい」と監督にお願いして撮影していただいたのですが、実際は先生の手元が使われるかも……と試写を観るまではドキドキでした。絵付け自体が初めての経験だったので、筆の持ち方や顔料をつけて器のところに置く手さばき・筆さばきがリアルに見えるよう、先生の手元の動画を何度も見て研究しました。撮影の空き時間も共演者のみなさんと一緒に、素焼きの器に絵付けをしていたのですが、細かいスポイトを使って描く“いっちん”という技法は、先生方に「すごく上手だ」と褒めていただいたので、ぜひ注目していただきたいです。

波佐見弁は日々のトレーニングのおかげでニュアンスを出せるように

――青子と似ているところや共感できる部分はありましたか?

松井玲奈さん。

「好きなものを見るとテンションが上がってしまうところ」はそっくりだなと思いました。器を見て「わあ、かわいい!」と喜んでいる姿はほぼ素の自分です。私自身、昆虫や爬虫類が得意なので、撮影現場でもカブトムシやセミを捕まえたり、ヘビを見て「うわあ!」と大喜びしたりしていて……。スタッフさんに驚かれることもありましたが、そういう無邪気な反応や喜ぶ姿は青子とすごく通じるところがありました。

――劇中での方言(波佐見弁)があまりにも自然で印象的でした。

ありがとうございます。実は、波佐見弁には苦戦しましたが、窯のメンバーは基本みんな波佐見弁を話していたので、空き時間もとにかくそれらしいイントネーションや教わった言葉を駆使して会話をしていました。英語の勉強のように耳と口を使ってなじませる感覚です。劇中の掛け合いもほぼアドリブだったので、日々の“波佐見弁トレーニング”のおかげで自然とニュアンスが出てくるようになりました。

――分業制で1つの器を作る波佐見焼のように、現場でもキャスト同士のチームワークが自然と生まれていったのでしょうか?

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

キャストのみなさんとは本当に仲が良くて、まるで合宿生活のようでした。ちょうど夏に、同じ絵付け班だった安藤玉恵さんと藤間爽子ちゃん、そして私の3人が誕生日を迎えたのですが、男性キャスト陣が空き時間に「くらわん館」へ行って、絵付けとろくろの先生がそれぞれ作った一輪挿しを買ってプレゼントしてくれたんです。「どれが当たるかはお楽しみ」ということで、みんなでバースデーソングを歌いながらプレゼントを回したのはすごく良い思い出です。撮影中、毎日誰かが新しい器を買ってきては支度場で見せ合っていて、本当にここで生活しているような心地よさがありました。

――波佐見町での長期ロケを通して、特に印象に残っていることは?

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

約1カ月半、長崎県の波佐見町に滞在させていただきましたが、土地の空気感が映像にそのまま映し出されています。どこを切り取ってもきれいで気持ちが良かったのですが、一番のお気に入りスポットは、青子たちが働く窯のモデルとなった建物の「渡り廊下」です。すごく気持ちいい風が抜けて、下には小川が流れていて、小魚やカニが見えたりして……。そこでぼーっと景色を眺めている時間がとても好きでした。

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

ひと夏を過ごす中で、緑の濃さが変わっていく季節の移ろいも感じることができました。東京では味わえない緑のざわめく音や水の音、近くの窯から聞こえてくる作業の音が、自分を青子としてあの場所に繋ぎ止めてくれたように思います。スタッフのみなさんや町の人と一緒に作品を作っていけたので、「誰かと何かを一緒になって作るってすごく楽しいな」と実感させていただけた作品になりました。

無地ばかりだった食器が絵柄入りばかりに

――器との向き合い方や、食卓の風景に変化はありましたか?

NHK夜ドラ『青の花 器の森』より。

撮影中、家にある食器を一度すべて見直して整理しました。もともとは「シンプルなものが一番」と思って無地のものばかり選んでいたのですが、青子を演じて波佐見焼に触れる中で「自分は昔から柄物やポップなデザイン、植物柄が好きだったんだ」と思い出すことができたんです。結果的に買い集めた器は絵柄が入っているものばかりになりました。クランクアップ時に先生方がプレゼントしてくださった深めのお皿や、劇中に出てくる「雨粒皿」は、いまも日々の食卓で煮物やおかず、フルーツを盛ったりして大活躍しています。

――松井さんは料理を作るのもお好きだそうですね。

松井玲奈さん。

はい。ほとんど外食をしないので、家にいるときは自炊しています。せっかく素敵な器があるので、「美しく盛り付けたい」と思うのですが、盛り付けのセンスが全然なくて(笑)。フライパンから直接ドカンと盛っちゃうタイプなので、そのあたりの不器用さも青子っぽいなと思います。一方、一ノ瀬くんはすごくきれいに盛り付けるんです。同じ日に撮った二人の朝食写真を監督に見せたら「本当に青子ちゃんと龍生くんみたいだね」と笑われました。

――青子は“甘いもの好き”という一面がありますが、松井さんが好きな甘いものは?

ホワイトチョコレートが大好きなので、普段からよくもぐもぐ食べています(笑)。ホワイトチョコが入っているお菓子は最高です。

――最後に、ドラマを楽しみにしている全国のみなさんへメッセージをお願いします。

松井玲奈さん。

長崎・波佐見町の素晴らしい景色の中で、その土地の色彩や魅力をぎゅっと詰め込んだ作品になっています。青子と龍生のものづくりと関係性の積み重ねには少し不器用で騒がしい瞬間もありますが、きっと観た方が「明日もちょっと頑張ろうかな」と思えるような、温かい作品になっていると思います。波佐見町もとても素敵な場所なので、実際に訪れて窯元巡りを楽しんでいただけたら嬉しいです。

松井玲奈(まつい・れな)

1991年7月27日生まれ。愛知県出身。2008年にデビュー。主な出演作は、連続テレビ小説『まんぷく」『エール」『おむすび』、大河ドラマ『どうする家康」『チンギスーVIVANT THE ORIGIN STORY―』など。映画では『よだかの片想い』『緑のざわめき』などで主演を務めた。

文=田辺千菊 撮影=平松市聖

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