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「偏差値に振り回されない!」 科学的に教える正しい「成績の向き合い方」とは

  • 2026.10.31
cocreco写真:mapo/イメージマート

「また我が子をほかの子と比べてしまった……」そんな経験はありませんか? 塾のテストが返却されると、つい順位や偏差値に目が向いてしまうのが親心。

しかし、他人との比較を続けることは、受験という長期戦において子どもはもちろん、親のエネルギーも消耗させてしまいかねません。

中学受験について、大阪公立大学教授で理論物理学者の波場直之先生に、研究知見と物理学の視点から、「過去の自分」を基準にして成績と向き合う考え方を解説してもらいました。

波場 直之(はば・なおゆき)

大阪公立大学大学院理学研究科教授。大阪大学理学部卒業、名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了。専門は素粒子物理学、素粒子論的宇宙論。スタンフォード大学の研究チームが引用データに基づいて発表する「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」2025年版・2026年版に2年連続選出。

【親の悩み】他人と比べ続けるとエネルギーを消耗する理由

心理学では、自分と他人を比べることは「社会的比較」と呼ばれます。

例えば、「○○ちゃんのようになりたい」という目標が、頑張るきっかけになることもあります。ただ、中学受験のような長期戦で、「○○ちゃんより点数が低い」「自分だけ成績が上がらない」と比べ続ければ、それ自体がストレス源になりかねません。

他人との比較によって脳内物質が変化し、成績が下がる。そんな説明を目にすることもあります。ただ、そこまで単純な因果関係が実証されているわけではありません。

cocreco写真:yamasan/イメージマート

一方で、長期にわたるストレスが、注意や記憶などに影響を及ぼすことは研究でも報告されています。

受験期間中ずっと他人と比べて消耗するのは、いわばエネルギーの無駄遣いです。その分のエネルギーは、もっと別のところに使ったほうがよいのではないでしょうか。

物理学の視点! 「何を基準にするか」で成績の見え方が変わる

物理学では、物体の速さを考えるとき、必ず「何に対して」という基準を決めます。この、ものを見る基準となる枠組みを「座標系」と呼びます。

例えば、時速300キロで走る新幹線も、隣を同じ向きに同じ速度で走る新幹線を基準とする座標系から見れば、止まっているように見えます。どの座標系から見るかによって、見え方は変わるのです。

成績も少し似ています。テストで80点を取っても、それだけで「良い」「悪い」とは決まりません。平均点が50点なのか、90点なのかによって意味は変わります。

ただ、ここで注意したいのが「他人」という座標系です。ほかの子も日々変化しています。急に成績が伸びる子もいれば、調子を落とす子もいる。そんな動き続ける相手を基準にしていると、自分自身は成長しているのに、「置いていかれた」と感じることがあります。

cocreco写真:cake_and_steak/イメージマート

もう一度、新幹線で考えてみましょう。自分の乗っている新幹線が時速200キロで走り、隣の線路を同じ向きに時速300キロの新幹線が走っているとします。隣の新幹線から見ると、自分の新幹線は時速100キロで後ろに下がっているように見えます。地面から見れば、時速200キロで前に進んでいるのに、です。

あくまで物理学からのたとえですが、私には他人と比べたときに生まれる劣等感も、少しこれに似て見えます。自分は前に進んでいても、自分より速く進む「他人」という座標系から見ると、後ろに下がっているように見えてしまうことがあるからです。

【親の声かけ】「周囲との差」ではなく「過去の自分の変化」を見る

では、何を基準にすればよいのでしょうか。私は、「過去の自分」がもっともわかりやすいと思います。

昨日まで解けなかった問題が、今日は解けた。先月より計算ミスが減った。以前より長い文章を読めるようになった。そうした小さな変化に目を向けます。

親がかける言葉も難しくありません。「この問題、先週は解けなかったよね。解けるようになったね」それだけでよいと思います。

cocreco写真:graphica/イメージマート

また、「○○ちゃんと何点差があるか」ではなく、「先月から何点上がったか」「間違える問題の種類がどう変わったか」など、お子さん自身の推移を見るのも一つの方法です。

もちろん、受験では順位や偏差値も必要です。他人との比較は、今どの位置にいるのかを確認するためには役立ちます。ただ、その数字をそのまま「自分の価値」の評価にまで広げる必要はありません。

「立ち位置を知るためには、他人を見る」「成長を知るためには、過去の自分を見る」。この二つを分けて考えることが大切だと思います。

小さな前進に気づく! 親だからこそできるサポートとは

私自身、研究の世界にいると、とても優秀な人にたくさん出会います。研究だけでなく、執筆やメディアで活躍している友人もいます。

そうした人たちと自分をいちいち比べていたら、研究を続けてこられなかったと思います。

私が大切にしているのは、「昨日の自分には理解できなかったことが、今日、少しだけわかった」という感覚です。そのほんの少しの積み重ねが、研究を続ける力になってきました。

受験でも同じです。「昨日より1問多く解けた」「先週よりミスが一つ減った」。そうした変化は、順位表には大きく表れないかもしれません。

でも、それも確かな前進です。

他人と比べるのではなく、過去の自分と比べて、ほんの少しの成長を探してみる。その小さな変化に気づけるのは、一番近くでお子さんを見ている保護者なのだと思います。

───◆─────◆───受験期は、できなかったことに目が向きがちです。だからこそ、親が小さな前進に気づき、言葉にして伝えることが、お子さんの次の一歩につながるのではないでしょうか。

次回3回目は、「落ちたらどうしよう」と不安になったときに、「変えられるもの」と「変えられないもの」をどう見分ければよいのか。科学の視点から考えます。

文/波場直之

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