1. トップ
  2. マンガ
  3. 「私がどこか行けば、丸く収まるのかな」笑ってそう言った彼女より先に、俺が部長に異動を願い出た理由

「私がどこか行けば、丸く収まるのかな」笑ってそう言った彼女より先に、俺が部長に異動を願い出た理由

  • 2026.10.27
ハウコレ

本人には俺から話します。部長にそう言っておきながら、辞令が出るまで彼女には黙っていました。先に決めてしまいたかった理由は、彼女が笑いながら口にした一言にあります。

部長の席に向かうと、書類をめくっていた手が止まりました。まだ半分も人が来ていないフロアで、俺は異動の希望を伝えました。チームの誰かが出社してくる前に、済ませておきたかったのです。「本当にいいのか」と聞かれ、うなずきました。

噂が広まった日、会議室で言われたこと

彼女とは同じ販促チームで、付き合って1年になります。主任の俺は、彼女の企画書に最初に目を通す立場でした。

休日のスーパーで、かごを持っていたところを後輩に「あ、お疲れさまです」と声をかけられた翌日。話はもうチーム中に広まっていて、その日のうちに部長から会議室に呼ばれました。

「評価する側とされる側がそういう関係っていうのは、どうしてもな。どっちかに動いてもらうことになる」

部長の言うことはもっともでした。

「本人には俺から話します」

そう答えて会議室を出たものの、どう切り出すかは、席に戻っても決まりませんでした。

書き直しを見てきたから、止めたかった

その帰りに彼女の部屋へ寄ると、麦茶を注ぎながら彼女が言いました。

「企画が通ったのも、そういうことかって言われちゃった」

その企画書が20回近く書き直されたことを、俺は知っています。赤を入れて返すたびに、次の日には新しい版が机に置かれていました。テーブルの木目を見ながら返す言葉を探していると、彼女が笑いながら付け足しました。

「私がどこか行けば、丸く収まるのかな」

「そんなこと、しなくていいよ」

麦茶を一気に飲んで、その話を終わらせました。彼女なら、本当に自分から手を挙げる。企画を誰かに渡し、そういうことだったと言われたまま別の課へ移るのだろうと思いました。それだけは止めたかったのです。

非常階段で、説明を短くした理由

部長には、異動の希望と一緒に1つだけ頼みました。

「あいつの企画は、今のまま続けさせてください」

彼女に相談すれば、自分が行くと言い出すのは分かっていました。話し合えば、先に折れるのはたぶん俺のほうです。決まってから伝えればいい。そう考えて先延ばしにしているうちに、辞令が出てしまいました。

一斉メールの後、非常階段の踊り場で、異動は自分で出したのかと聞かれました。

「なんで一言も相談してくれなかったの」

「このほうがいいと思ったから」

理由を話せば、自分の一言がきっかけだったと、彼女は受け取るでしょう。それを避けたくて説明を削ったのに、返ってきたのは「2人のことなのに、勝手に決めないで」でした。「ごめん」と謝り、先に階段を下りていく彼女を見送りました。

そして...

最後の出勤日、私物を段ボール箱2つに詰め、マグカップを洗って戻ると、上の箱のふたに付箋が貼られていました。

「帰りに、ちゃんと話そう」

見慣れた彼女の字でした。あの一言がきっかけだったと話せば、彼女は自分を責めるかもしれません。それでも、話さないままでは同じことを繰り返す気がしました。どこまで話すかは決められないまま、付箋を社員証のケースに挟み、箱を台車に載せました。

(30代男性・販促チーム主任)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ