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恋人の異動の相談に一行で返した俺が、送れずに消した続きの言葉

  • 2026.10.18
ハウコレ

辞令の画像を拡大したまま、返信の文面を決められずにいました。彼女があの一行をどう受け取ったのか、考えるほど、3年前の自分の選択が頭から離れませんでした。

通知音に気づいてチャットを開くと、彼女から異動の話が届いていました。支社への異動という書き出しの少し後ろに、見覚えのある言い回しが並んでいました。既読をつけたまま、俺は返信欄に返事を打ち込み始めました。

3年前の俺が使った言葉

付き合い始めてすぐのころ、俺にも転勤の打診がありました。上司にも彼女にも、「キャリア的に、今は動かないほうがいい」と説明して断りました。

本当の理由は、始まったばかりの彼女との関係を、離れたまま続ける自信がなかったからです。そう言えば重いと思われる気がして、キャリアという言葉を盾にしました。一度口にしてしまうと、訂正するきっかけもないまま3年が過ぎていました。

だから彼女の文面にあった「キャリアのこと考えたら」という一文が、あのころの自分の言い訳と同じ形に見えたのです。

送信前に消した2行目

返信欄に打ち込んだのは2行の文でした。「キャリアとか言うな」の下に、「行きたいなら行きたいって言ってほしい」と続けた文面です。

2行目を読み返して、送信する前に消しました。彼女が行きたいと答えたら、俺は笑って送り出せるのか。その答えを先に聞く勇気がありませんでした。残った1行目だけを送信しました。

やがて届いたのは、1枚の画像です。発令日と彼女の名前、支社の名前が並んだ辞令でした。相談の形で届いた話は、もう決まっていたことになります。

打ち直した言葉

画像を拡大したまま、返信欄を開いては閉じるのを繰り返しました。彼女は、あの一行を自分の仕事への否定だと受け取ったのだろう。先に謝るべきか、祝うべきかも決められません。

部屋の中を何度か行き来して、ようやく送れたのは短い一文でした。

「もう決まってたんだね」

決まっていたことを確かめるだけの文面です。画像に既読をつけてから、40分ほどが経っていました。

続けて打ち直したのは、一度消したはずの言葉です。

「行きたいなら、行きたいって言ってほしかった」

送ってから、それが自分に向けた言葉でもあると気づきました。3年前、本当の理由を口にしなかったのは俺のほうです。

そして...

しばらくして、彼女から迷いのない短い返事が届きました。「おめでとう」とだけ返して、スマホを伏せました。

あの2行目を先に送れていたら、彼女は辞令の画像ではなく、言葉で答えてくれたのかもしれません。転勤を断った本当の理由は、まだ話せていません。今は、支社のある街までの乗り換えを調べて、週末に通える距離かどうかを確かめています。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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